「すべてが最悪!」と思える時に読んでください(第1話)
CCAの小林隆哉です。
前回のコラム「謝罪の流儀」では謝罪にフォーカスして書きました。今回のコラムでは実際の職場で「最悪な状態」に遭遇した際に、読んでいただけるようにまとめてみました。3回シリーズでお届けします。
1. 顧客に監禁される
以前にこんなトラブルを経験したことがあります。
ある日、当社受注のA社のネットワークシステムの設計において、当社の設計が顧客の仕様と違う方式で設計している、と幹部からクレームがあり呼び出されました。
当然、当社は独断で設計をおらず、A社の担当チームと、内容を共有し、代替策を検討していました。
しかしその情報がA社幹部に上がっていなかったのです。
土曜日でした・・・
観光客で混んでいる新幹線に乗って、A社に行きました。
A社では会議室に幹部3名が待ち構えていました。
その際、A社幹部から「仕様の通り設計を変更すると、この場で約束しなければ、この会議室から1歩たりともでてはならない」と言われ、監禁されたのです。
さあ私はこのことをリーダー(上司)にどのように伝えればよいのでしょうか?
上司はこの「最悪な状況報告」をどのように受け止めてくれるのでしょうか?
2. 感情的に反応しがち?
会社の仕事は楽しいこと、ばかりではありません。
ましてやリーダーともなれば、耳当たり良い報告より、うんざりする報告、知りたくない不都合な真実のほうが多いのではないでしょうか?
特に顧客や社内でのトラブルが起きた時は、心穏やかにはいられません。
休日のひととき、家族団らんの場で、リーダーが最悪な報告を聞いたとき、現場にいる部下たちのことを思いやって、「顔で笑って心で泣く」ときもあるでしょう。
そのような「うんざりするような報告・・・ネガティブな報告」に対して、私たちは感情的な反応をしがちです。
それは「自分の身を守ろうとする」本能であり、ヒトとして普通の反応だと思います。
3. リーダーはつらいよ
とはいえ、リーダーは、チームのメンバーからは一挙手一投足を見られています。それゆえ、部下が報告することを後悔させるような態度を、リーダーはとってはなりません。
リーダーが感情的な反応をすることによって、部下はリーダーに真実を伝えなくなってしまいます。
そのことによってチームのメンバーはリーダーを頼れず「なんでわたしだけが」という被害者意識が蔓延し、責任の押し付け合いになりかねません。
それが高じるとリーダーはますます孤立を深めていくことになります。
令和のリーダーシップは「部下の力を乞う力」と言われています。
今の時代は、メンバーの力を結集し、ワンチームになって「最悪な事態」に対峙することが重要となってきています。
4. ポイントは「逆境指数」と「関係の質向上」の2つ
そんな時にお伝えしたいポイントが2つあります。
1つ目は「逆境指数」です。
「逆境指数」とは、最悪の状況に立ち向かう態度を整えることです。
下図1をご覧ください。
逆境に耐えるためのあり方の指数として逆境指数(AQ)という指標があります。
その指数を高く保つことによってネガティブな報告の衝撃にブレず、逆境に耐えられる力を持つことができます。
5つあるのですが特に重要なのは、「この状況は、自分の力でなんとかなるものだ」と思うことです。自分で「コントロールできるもの」ということですね。
そして、もう一つ。「このことはじきにおわる、ずっと続かない」と思うことです。「持続性」の観点ですね。この2つの要素を常に意識すると、衝撃に耐えること、そしてぶれない軸ができるはずです。
次に、ポイント2つ目の「関係の質向上のグッドサイクル」については下図2をご覧ください。
ダニエルキムの「成功循環モデル」です。
左側が被害者意識蔓延、責任の押し付け合いで内輪もめをしている状態です。
チームとして目指していくのは、右側。関係の質を上げていくと思考の質があがり、行動の質も高まり、結果の質が上がっていく、というモデルです。
時間が限られているからこそ、まずは右側の循環モデルのように、関係の質を上げ、チームになることが重要なのです。
5. YesAndのコミュニケーション
関係の質を上げ、チームになるためのコミュニケーションは、どのようなコミュニケーションをすればいいでしょうか。
私たちは、「YesAnd」のコミュニケーションをお勧めします。
私たちはともすれば、報告されたことに対して、一旦は受け取りながらも「しかし、でも」というButの接続詞を使い反論することにより、ネガティブな空気になり、関係性が悪くなってしまうことがあります。
そんな時、Andの接続詞を使うことによって、意識は未来に拓け、お互いに課題解決志向に向かいます。
まず、「報告してくれたことを感謝」し、「受容」し「傾聴」する。
そのうえでAndの接続詞「じゃあ、だとすると」を、発声して、課題解決志向に向かうことで関係の質を高めていくコミュニケーションです。
「すべてが最悪!」と思った時には、
「逆境指数」、「関係の質向上のグッドサイクル」、そして「YesAndコミュニケーション」を意識して活用してみてください。