「チームSasaDGs(ササディージーズ)!」①| 思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー
「放置された竹・笹を使って、
楽しい多世代交流イベントを開催したい!」
みんなのおうちには、毎日色々な人が出入りしています。その中には、コミュニティナースに興味のある大学生もいました。そんな彼らが、自分たちも地域の中で、誰かの元気を楽しく応援できる方法はないだろうかと考えたところ、雲南には笹や竹が多く存在し、その管理に困っている人がいる一方で、笹巻きをはじめとする笹や竹にまつわる文化が色濃く残っていることに気づきます。
これを活用し、子どもからご年配の方までがつながり、笑顔になれるような多世代交流の場を作れないだろうか、と活動を始めたのが「SasaDGs(ササディージーズ)」というプロジェクトです。今回はその活動のメンバーである戸来莉子さんにお話を聴きました。
−−まずはこの「SasaDGs」というプロジェクトの名前の由来について教えてください。
これは、SASA(笹)とSDGs(持続可能でよりよい世界を目指す国際的な開発目標のこと。)を掛け合わせた造語なんです(笑)。
雲南市民にとって身近な笹や竹を使ってイベントを開催することで、楽しく多世代交流の場を作ることが第一目的ではあるのですが、その先で、子どもにとって笹や竹が身近なものとなり、「この笹や竹は誰が管理しているんだろう」と地域に思いをはせ、「おじいちゃんおばあちゃんが居なくなったら誰が管理するんだろう」と地域の”持続性”に目を向けるきっかけになったらいいなという思いが込められています。
−−どういった活動をされていますか?
このプロジェクトは、近隣の住民さんの「裏山の笹をきれいにしたいけど、自分たちは足腰が弱くなってできなくて…」というお困りの声を聞いたことで始まりました。
竹や笹を楽しく使う多世代交流のイベントをすることで、子どもたちには放置竹林などの地域課題について知ってもらい、高齢者世代には地域のつながりに触れる機会になればと思い企画しています。
現在は大学生7人とおせっかいメンバーでもある地域の方1人を顧問に迎え、8人のメンバーで週に一回ミーティングを重ねながら、2020年6月以降毎月一回のペースでイベントを開催してきました。
6月 笹巻きをつくろう
7月 バンブークーヘンをつくろう
8月 竹水鉄砲をつくろう
9月 森の水族館をつくろう
10月 ハロウィンパーティー
11月 昔の遊び運動会
12月 まちかどあそび
−−戸来さんはどうして「SasaDGs」の活動に加わろうと思ったのですか?
私は大学でコミュニティナースを知ったのをきっかけに、2020年3月に実習で雲南に来て以降、月に一回はイベント参加のために雲南に通っていました。そこでコミュニティナースの活動がだんだんわかってきたので、自分でも何かしたいなと思っていた時に總山さん(地域おせっかい会議事務局・大学生インターン)に誘われて、活動に加わることにしたんです。
いいな、と思ったのは「地域の人を名人としてお招きしてイベントをする」ということ。地域の人が輝く場所をセッティングしている、というお話を聞いて、加わりたいと思いました。
私、おじいちゃんやおばあちゃんと、ゆるくお話するのが好きなんです。なので今後医療者として医療行動を行う中でも、お話するのは大事にしたい。おしゃべりしながら仕事ができる人になりたいと思ったので、その実践としてもやっていきたいと思って加わりました。
−−ちなみに10月に開催された「ハロウィンパーティー」でも竹が活躍したのですか?
はい。このイベントは雲南市木次町の駅前を中心に、毎年行われていた親子参加型のハロウィンイベントが新型コロナ対策のため今年は中止になったことを受けて、「みんなのお家(コミュニティナース雲南拠点)」で小さく開催できないかと企画しました。
イベントでは、みんなのおうちに来てもらった子どもたちに飾り付けをしてもらい、ハロウィン仕様になった会場に地域の方に来てもらってお茶会をしました。
(仮装をしながらお抹茶を立ててくださっている地域住民の方)
それとイベントに参加したくても足が痛いなどの理由で会場に来ることができない方向けに、前日までに準備した竹灯篭とお菓子を子ども達と一緒に訪問してプレゼントしました。
通常のハロウィンイベントは、「大人が、子どもに、お菓子をあげる」という構図ですが、私たちは「子どもが、大人に、お菓子を渡しに行く」という逆転の発想で、この訪問プレゼントをやってみようと考えました。
(いっぱいのお菓子とキャンドルを竹いっぱいに入れてお届け!)
−−それは喜ばれたでしょうね。ところで竹灯篭の材料の竹はどのように入手されたのですか?
今回使った竹は雲南市斐伊地区に生えていたものです。斐伊交流センターの方にどこに竹が生えているかご相談させてもらったところ、地域のそば打ち名人の方が竹にも詳しいと紹介していただき、その名人に教えていただきながら竹を調達することができました。交流センターの方には、竹取名人だけでなく、参加してくれる子どもたち、訪問したら喜んでもらえそうなご年配の方々、そしておばけカボチャを育てていそうな方など、たくさんの地域の方とのご縁もいただきました。
(竹の調達のため、地域の竹林へ同行。60代には思えないたくましさ!)
−−お話を聞いて、SasaDGsの活動はすごく人に恵まれているように思えますが、困ったことはありましたか?
たくさんあります(笑)。メンバーの多くは雲南市に住んでいないので、実は人を探すのも大変です。雲南でたまたま出会う人の人脈などの引き出しの多さに驚くことはありますが、ピンポイントで「この道具・この技術を持っている人」などに出会うことが難しかったです。
けどそんなときでも「あの人が持ってるかもしれないから会いに行こう」と言ってくれる人がいて、最近は頼ってもいいんだなということが分かり、「こういう時はこの人に聞こう」と思えるようになってきました。
−−地域おせっかい会議はどのように活用できましたか?
会議に案件として出したことはないのですが、毎回のイベントのお知らせは「おせっかい会議オープンチャット(「LINE」アプリの機能を使用した、地域おせっかい会議の参加者などが相互にやりとりが行えるグループ)」でお知らせすることで、お子さんの参加に繋がっています。
その他にもオープンチャットでは、ハロウィンの飾り付け用のカボチャについてたずねたら「あのスーパーに売れてたよ!」などと情報をくださることもありました。そうしたことから、地域おせっかい会議には「助けを求めたら絶対誰かが助けてくれる、だから色々考えるよりもまずはやってみよう!」と、一歩踏み出せるイメージを持っています。
チームとか仲間みたいな感じで、私たちの竹・笹以外にも梅や柚子などの地域の資源を活用した取り組みも動いているのが見えたことで、「他のところでもおせっかい頑張っている人がいるから、私たちもあんな風にやりたい!」と励まされています。
−−戸来さん自身、おせっかいをしてみて何を感じましたか?
関わった中で印象的なのが「竹水鉄砲をつくろう」イベントの準備で、竹水鉄砲の名人としてお招きした地域の人と試作品づくりをした時のことです。最初は淡々とお話ししていた名人が、帰り際には自分から昔話や雑談をしてくださったのがすごく嬉しくて。最初の静かな印象から、最終的にニコニコ話している笑顔が予想外だったのと、それと関わりの中でだんだん心を開いてもらえた経験がありました。
その経験から、活動に加わる時に思い描いていた「生活者としての対象者さんと関わるという実践」はまさにこういうことなんだと、実体験で感じることができました。
また最近では、10月のハロウィンイベントに来てくださった地域の方と道でばったり出会って「あの時の子だね」と気づいてくださりお話しする機会もあって、「SasaDGs」の活動を通じて人と知り合えることの楽しさを感じています。
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「自分が理想とするケアの実践」を始めたいと、多世代交流を企画する「SasaDGs」の活動に加わった戸来さん。お話からは、地域で放置された竹・笹を、楽しく使おうとすることでたくさんの人とつながる面白さや、人を便り頼られることの大切さを感じている様子が伺えました。
竹・笹を楽しく使った多世代交流として、後半は「森の水族館をつくろう」プロジェクトに焦点を当ててお話を伺います。
ライター 平井ゆか