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みんながほっこり!「ばんこの縁側」へいらっしゃい!

Community Nurse Company 株式会社の本社・拠点がある島根県雲南市。雲南市では「元気になるおせっかい」を広げたいとの思いから、既にコミュニティナース的存在として活動しているまちの人を巻き込み、一緒に成果を出していきましょうとチームで動き出しています。医療職にこだわらず、お互いの強みを出し合いながら全力で議論する「地域おせっかい会議」から生まれるアクションとまちの人とのストーリーを「思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー」として連載を始めます。

雲南市にある「みんなのお家」。ここはCommunity Nurse Company (株) の活動拠点でもあり、老若男女問わず町の協働実践を行う場所です。そこのメンバーには、来訪する方をおもてなしする「ばんこさん」がいます。「ばんこの縁側」は、ばんこさんからの『来た人が気軽にお茶を飲むことができて、ほっこりできる場を作りたい』という企画の提案から始まりました。企画の名前の「ばんこの縁側」という名前からはどこか親しみやすい雰囲気も感じ取ることができます。
そんなばんこの縁側は地域の方に少しずつ広まっていき、時としては20人以上の方が集まってくれることもありました。そこでは、皆さんお茶やお菓子を片手に笑顔でお話をされています。
今回は、そんなばんこの縁側で利用者にコーヒーの提供をしていたおせっかい会議のメンバーの妹尾さんに、実際にやってみてよかったことや得たもの、来られた利用者の方の様子などのお話を伺いました。

妹尾真衣(せのお・まい)
カフェ店員

妹尾さん(右)

——実際にばんこの縁側では、どのようなことをされていましたか?

ばんこの縁側に来られた方に参加費を頂き、参加費にお茶とお菓子がついてくるという内容でおこないました。コーヒーは実際に目の前でドリップをして目でもコーヒーを楽しんでいただけるようにし、そこへ簡単なお菓子などを添えてお出ししていました。今回私はコーヒーの提供のみで、お菓子の用意や場のセッティングはばんこさん達がして下さっていました。

——ばんこさんと協力して、一緒にされていたのですね。今回参加者としてではなく、案件を実行する側として携わられたのはどういった経緯からでしたか?

実は私、島根には家族とIターンで来ていました。以前、カフェで働いていたこともあり、島根に来てからもコーヒーに携わる仕事に就きたいなと考えていました。ただ、引っ越してばかりで周りには一人も知り合いのいない状況だったので、まずは知り合いを作ろう!と、地域の集まりへ足を運んでみました。今回のばんこの縁側に携わることになったきっかけは、その集まりで知り合った方に「おせっかい会議の人が、コーヒーを淹れることのできる人を探していたよ。」という話を聞いたことからでした。
そのあとおせっかい会議のメンバーさんに会ってお話を伺い、まずはおせっかい会議の場で投げ銭という形でコーヒーを淹れることに。その後、ばんこの縁側の話が私のもとに届き、そこでもコーヒーを淹れさせてもらうことになりました。

ばんこさん(左)によるお茶出し

——では、妹尾さんの今までの経験も活かした活動が出来たということでしょうか?

はい。もともとコーヒーが好きで、淹れ方などの勉強をしていました。今回はいろいろな方にコーヒーを楽しんでいただく良いきっかけとなりました。

最初、コーヒーは奥のキッチンで淹れて提供をしていました。ですが、ドリップをしている姿が見えるのも素敵、という風にばんこさんに言っていただき、来てくれた方にも見えるところで淹れようということになりました。
お部屋でコーヒーを淹れるようにみんなでセッティングをし、いざ淹れてみると「いい香りだねぇ」とばんこの縁側に来られる方が楽しんでくださっている様子が伺えました。コーヒーはコーヒーメーカーを使って簡単に入れることもできます。ですが、今回はドリップで丁寧に目の前でコーヒーを淹れ、実際に飲んでくださっている方の喜ばれている様子を私自身も見ることができ、嬉しかったです。一度にたくさんの方が来られた時は少し大変でしたが、ばんこさんと協力して取り組むことが出来ました。

実際のカウンターの様子

——ばんこの縁側に来られる方に楽しんでいただくために、色々な工夫をされていたのですね。

そうですね、特にばんこさん達は来られる方のためにたくさんの工夫を考えておられました。例えばドリンクと一緒に出していたお菓子。来ていただいた方に満足して頂けて且つ、用意する側の負担になりすぎないもの。そして、予算内に収まるもので毎回違うものを用意するようにされていました。又、参加される際にいただいていた参加費も、金額が大きすぎると利用される方も来づらくなってしまうので、慎重に決めておられました。その時に、おせっかい会議の中でも意見を求め、色々な提案を頂いているようでした。ドリンクでも、コーヒーが苦手な方用にお茶を用意したり、自家製のレモネードや、ばんこさんの作られたシソジュースを用意したりもしました。色々なものをその時に合わせて用意していたので、利用者さんも楽しみにしておられました。

みんなのお家で採れた柿ジャムをつけた栗きんとん

中でも面白かったのが、おせっかい会議のメンバーさんで、ガス火で淹れるエスプレッソの機械を持っておられる方が居て、夏にそれを使ってアイスカフェラテを淹れたときです。ラテを淹れるときに、より楽しんでいただけるように、グラスの中で牛乳とコーヒーがきれいな2層になるように注いで、見た目にもこだわって提供しました。その時「わぁきれい!」とか「すてきー!」と嬉しそうに飲んでくださっていました。来てくれた方の様子がとても楽しそうで、こちらも嬉しい気持ちになりました。

——実際にばんこの縁側に来られた方はどんな様子でしたか?

ばんこの縁側は、地元のおじいさんおばあさんの利用がメインでした。コロナ禍では、ご友人と会われる機会が減ったという方も多く、ばんこの縁側はそういった方たちが、人に会う良いきっかけの場になっていました。最初はばんこさんがご友人やお知り合い、地域の交流センターの集まりなどでお誘いの声掛けをされていました。誘われる時、「良かったら私もおるけん、お茶しに来んかねぇ。」といったように、気軽に感じるように誘っておられました。最初からたくさんの利用者さんがいらっしゃったわけではありませんが、利用された方が「次は○○さんも誘ってみるか!」と、さらにご友人を誘ってくださるようになり、参加者が増えていきました。時には、みんなで車を乗り合わせて数人で来てくださることも。そういった方の中には、しばらくお会い出来ていなかった方もおられたようで、「久しぶりに会おう」とばんこの縁側を、ご友人を誘うきっかけにされていました。久しぶりの再会に、「元気しとったかねぇ。」と気をかけて声をかけられた方もおられました。気軽にお茶をしていろんな方との会話を楽しむ場としてのばんこの縁側でしたが、ただお茶を楽しむのではなく、人と過ごす時間を楽しむ空間にもなっていたと思います。

——ばんこの縁側をやってみて、何か大変なことはありませんでしたか?

ばんこさんは、毎回違うお菓子を考えて用意されるのは大変だったと思います。私自身としては、単純に大人数の方が来てくださったときはバタバタして忙しいことがありましたが、皆さんの協力もあり、大変だったという印象はあまりありませんでした。自分の子どもも連れてばんこの縁側に取り組んでいたので少し心配もありましたが、コーヒーを淹れている間、利用者さんが子どもと遊んでくださって、私も落ち着いて集中して大好きなコーヒーを淹れることが出来ました。子どもも普段遊ぶことの無い年齢の方や、利用者さんのお子さんとお友達になったりして楽しく時間を過ごせていたと思います。おかげで、子どもも人見知りをあまりしない子になりました。ばんこの縁側を通してマイナスに思うことはまったくなくて、本当に私にとってプラスになったことばかりでした。

妹尾さんの息子のたいらくん

——難しいこともあったかと思いますが、やりたいことができるって素敵!利用者の方も楽しくて、お互いに楽しい時間を過ごせるいい関係性の築けた空間ですね。

きっかけは声をかけていただいたことだったのですが、そこからいろんなことにチャレンジし、たくさん考えながらやりたいことに取り組めた事は楽しかったです。どうしても、子どもを産んでからはやりたい事であきらめてしまうことが多く、「いまはできない」「難しい」と何かしら理由をつけてあきらめてしまうことが、小さなことから大きなことまで沢山ありました。そんな中で自分のやりたいことを、させてもらえることが出来ました。社会と触れられ、自分の子どもも一緒に、子どもから大人まで色んな方と接することが出来て本当に良かったです。「お母さん」ではなく「妹尾さん」という、一人の大人として接してもらえる場として、活動ができた事も嬉しかったです。
今では、スーパーを歩いていても声をかけてくださる方がいたり、「あなた、コーヒーを淹れる人?」と、お会いしたことの無い方に声をかけて頂いたりと、名前が独り歩きしているようなこともありました。島根に来た頃は知り合いが一人もいませんでしたが、おせっかい会議を通してばんこの縁側に携わり、やりたいことを通してたくさんの方と知り合うことも出来ました。

——ばんこの縁側を通じて、どんなことを感じましたか?

ばんこの縁側は、本当にここでしかできない貴重な体験だったと思います。仕事として雇われてではなく、自分たちの力で何かをするということが出来ました。そして今回特に感じたのは、何かにチャレンジするという事に対して、皆さんとても応援して下さっているという事です。やりたいことをやるってなんだか難しいことだと思います。でもその題材をおせっかい会議のメンバーさんの誰か1人にお話をするだけで、ぶわぁー!と話が広がっていきます。私もそうでした。そこで、色々な意見を聞き、自分にはどのように活かせるか考えてやっていく。そういった事をしていくにあたって、踏み出せないこともやってみることが出来ました。だから、そういう方たちにはスタートのいいきっかけとしてどんどんおせっかい会議を利用してみるのは良いと思いました。



 インタビューをさせて頂いている間、妹尾さんは終始笑顔で答えてくださり、その様子から本当に楽しかったのだなという事が伝わりました。最初は「来てくださる方の為に」という思いやりの気持ちから始まった今回の案件。気が付けば、携わった方も来られた方も、誰もが誰かを笑顔にして、みんなで元気になっている。そんな"笑顔の循環"を感じることができました。

ライター 河田知佳


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