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はじめての個展・振り返り(その2/テーマ決め編)

こんにちは。
今回は個展準備が本格的に始まってからの内容になります。

余談ですが、個展準備に力を入れ始める前の時期に、緊急事態宣言が解除され、飲み会解禁ムードですっかり楽しくなってしまい絵描きモードへの切り替えが難しかったことを思い出しました。今はまた自粛ムードですが、今後復活したときの自分のモチベをもっと飼いならせるようにしていきたいです。ああ難しい。


テーマ・タイトル決め

さて、いきなり大前提の部分から苦労しました。
これまで何度か展示を行っていましたが、グループ展なこともあり特にテーマらしきテーマもなかったり、すでに決まっていたりしたので一から自分で考えることが初めてでした。

初の個展なので、ある方向に特化した尖った展示というよりも、自己紹介も兼ねた、自分の作風を幅広くカバーできるテーマ・タイトルを名づけたいとは思っていました。それでいてせっかく親しみのある地での開催なので地域性もあるような、絵と自分が目で見てきた身近な東京での情景がリンクするようなものにしたいという気持ちがありました。
…というなんとなくの構想はあったものの、これをはっきり言語化しようとなると思いつかずなかなか一筋縄では行きません。

言語化するために、自分の絵の特徴や描きたいものを書き出してみることにしました。

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Where:どういうシチュエーションか
When:どういう日・時間・タイミングか
What:どういう対象物か
Who:どのような人物か
Why:なぜそれを描きたいか
How:どう暮らしている/どういうメンタリティか

ちょっと恥ずかしいですが当時のメモを載せます。(Whyのくだりはあまりにポエミーなのでカットしました)5W1Hに当てはめて思いつく限りの表現したいことを並べてみました。作風をフレームワークにあてはめるってなんだか可笑しいなとも思いましたが、書き出してみると自分の描きたいものへの解像度が上がるし意外と楽しかったです。普通に脈絡もなく書き出すだけでも良いと思いますが、軸が規定されていると観点を変えて考えられるのでおすすめできます。
書き終えた後ざっと眺めてみて、特にヒットしたワードに下線を引いています。個展のテーマ決め用に書きましたが、今後の作品作りにも活かせそうなのと、今見ても確かにそれだと思えるので、展示に関わらずやってみるのもアリだと思いました。

結果、下線を引いた「あなたの見たことある景色」「なんでもないけど覚えている日」「希薄で広い繋がり」「陰鬱でないメンタリティ」あたりのワードを共通のテーマととらえました。抽象度が高いですが、タイトル決めにあたってこのくらいのニュアンスが適当ではないかと思いました。

で、ここからタイトル決めなのですが、上記を書き出したところでガッチリテーマを体現するタイトルはすぐ決まらず、いくつも書き出してはダサッとかこれはくどい、とか伝わらんな…などともやもや・うろうろしていました。ちなみにこの下りを11月あたりにやっていましたが、あまりにも決まらなくて1か月ほど要したように思います。決まらなさ過ぎでは?
結果、以下の5つくらいに絞り込まれて、文字列で見た時の格好良さや、DMや告知画像にした時の見栄え的に英文のほうがいいかな?という判断でIDENTITYとしました。また、すべて大文字だとやや堅苦しい印象を受けたのと、自分の活動名がAiLeeNとi・eのみ小文字にしているところとリンクさせて『iDeNTiTY』と決まりました。

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じつは『iDeNTiTY』は最初の頃に思い浮かんだワードなのですが、色々考えた挙句ここに戻ってきた結果になったので、何事も名づける際は最初のインスピレーションを大事にするのが手っ取り早いのかもしれません。個展だ!と気張りすぎて多少遠回りした感はあります。あと、他の作家さんが個展のテーマをどう決めているかとても気になるのでいつか聞いてみたいところです。

ふぅ、ここでようやく個展準備の前提が整いました。途方に暮れますね。

メインビジュアル制作

タイトルは決まりましたが、それにハマるメインビジュアルを描かねば!ということでまた壮大な旅が始まりました。
これがもう描いても描いてもしっくりこない。12月の前半はメインビジュアル用の絵を描いてはボツにしての繰り返しでした。ちなみに告知は1か月前の12/19ごろには出す目安なので本当にギリギリです。

DM(告知用ハガキ)や画像に使うのだから、バッキバキに目を引くCOOLな絵にしなくちゃという気持ちと、タイトルの裏にあるテーマがどうもマッチしなくて、というのもテーマ群の「あなたの見たことある景色」「なんでもないけど覚えている日」~が大人しめの日常を想起させるものだったので、キャッチーにしづらく悩みました。

本当は後から描いたEAST TOKYO(隅田川の橋の絵)のような、蔵前にちなんだ絵を使いたかったのですが自分のメインビジュアルに求める派手さが出ず、どうしようかと考えました。
そんな時、もう時間もないし新しく描けない気がするし…と、試しにもともと直近で描いていたオンラインショッピングの絵にロゴを乗せてみたら「おや?!」といった感じにばっちりハマったのです。

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ONline Shopping - 迷ったら全部カートに入れる

個人的な話、12月にボーナスが出るしとZ●Z●T●WNでひたすら靴や服をポチポチ、物欲が爆発していたころに描いた絵です。

結果として、これを使うことに決めました。なんだ、最初からこうすればよかったじゃんの再来です。
この絵は個展向けの向けに出すものの一つとして、また別件での一部グッズに使う予定に描いたのでメインビジュアルにする想定はありませんでしたが、後から思うとテーマに沿っているように思えるし、自分の好きなものを自分で選んでいる様子がiDeNTiTYというタイトルにマッチするなと後付けで納得しました。最終的には、狙って描いたものより良いものになったのでは?と思います。

作品の制作・選定

ここから肝心の作品作りについてです。何より、新作をどれくらい生み出すか?を決めて実行していくことの難しさがありました。少しネガティブ寄りの話になるかもしれません。

ここでいう新作の定義は、SNSなどで未公開の描き下ろしイラストのことを指します。その上で自分は個展を開く以上、新作をより多く描きたい・描くべきだと当初考えていました。そのため、個展準備に全力で入る前からネタ帳だけはいくつも書き溜めて、その中から順番に作品にしていこうと意気込んでいました。(これだけは数か月前からひそかに取り組んでいた)
が、結果的に描けた完全な新作は2点でした。

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Copy-Pasted Boys

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EAST TOKYO

個展前に部分的に見せていた準新作の絵も含むと計5点になります。
これが少ないかどうかは人によって基準が変わるかもしれませんが、自分が当初期待する量には到底及びませんでした。
以下、新作がなかなか描けなかった要因と思われること2点です。

①”個展向け”に描くことの難しさ

個展に向けて作品を作っていく際、クライアントワークではなく自分の作品作りであるはずなのにスケジュールやクオリティを意識しないといけない矛盾に苦しんだように思います。クオリティについて言うと、過去の自信のある作品に引けを取らないものを描こう、と思えば思うほど手が竦みました。また、これをきちんと印刷し額装し、値段をつけるという点についても、意識することで勝手にハードルが上がりました。
スケジュールは当然、印刷所の納期などがあるのでそれを意識し、逆算してどれくらい描きたいものを描いて消化して行けるかといったノルマのような形となります。

普段自分の作品を描くときは、日常での気持ちの高ぶりのようなものがアイデアとして湧いてきて、それがいくつもある中の一部が脳内できちんと発酵し、構図やアイテムまである程度決まってから手を動かし始めるという亀の歩みのような制作スタイルなのですが、こういったやり方を取っているとスケジュールに沿った制作が全く進まないというデメリットがあります。
そのためクライアントワークのようにテーマをある程度最初に決めきってしまい、そこからぶれないように制作を進めていくのが効率性という意味ではいいのでしょう。お客さんがいればその人が最初に設定した要件と基準をクリアしていればよいのに近いイメージです。が、自分の展示である以上、私の描きたいもの・100%納得したものを出す場なので自分で決めたことがすぐ覆ったりするし、持っていけるものがすぐにサクサク生まれるはずがありません。そうでない筆の早い作家さんも多くいると思いますが、自分はそのタイプではありませんでした。

今後の対策としては、自分の制作スタイルをよく理解した上で、それに見合ったスケジュールをきちんと確保するということ…くらいしか思いつきませんね。

②SNSとの両立することの難しさ

制作作業そのものではありませんが、準備中のSNSとの付き合い方が難しかったです。
個展準備やクライアントワークの最中の人あるあるかもしれませんが、制作中はSNSでなかなか進捗がないように見え、成果物もアップできないのでもどかしいという気持ちがあり、また準備が長期に及ぶほどその焦燥感は出てくると思います。
自分はSNSの反応や数字はあまり気にしないようにしているものの、絵描きの活動を継続するうえでやはり重要なツールなのと、自分と絵をつなぎとめるための媒介でもあると思っているのでTwitterは何が何でも1日1更新しないとという日課を勝手に課しています。が、準備の間や進捗が出ていない日は本当に何を書いたらいいか困ります。絵を描くうえでは本質的な要素ではないかもしれませんが、こういった雑念も入ってきて純粋な作品制作への集中力を阻害したりすることがあります。こういった観念から解脱している先人たちの知恵が欲しい。

ちなみにできていたこととしては、他のイベントで使うイラストや、ちょうど年始だったので年賀状のイラストなども描いてアップしていました。これらは個展向けも意識していたので、完全な新作にはなっていませんが一石二鳥といった形で描けたと思います。

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Tiger's eye 商売繫盛・千客万来

と、ここまで書きましたが個展において新作と既存作品の適切な割合というものに正解はないと思います。べつに1点も新作がなくて全然いいと思いますし、新作がより多いほうが良いとか、過去作品ばかり取り上げていると進歩がないとか思ってしまうのは、描く側固有の思考なのかもしれません。

以前友人とこの点に関して会話したことがありますが、観る側の視点に立つと以下のようなものでした。

・個展に来てくれる人は必ずしも新作が見たくて来ているのではない。
・ちらっと見たSNSの絵を気に入ってくれて、それを肉眼でちゃんと見たいという気持ちで来ることもある。
・それぞれの人にすでに思い入れのある「好きな絵」があって、改めて見てもらうことに意味がある。
・そもそも作品を一番見慣れているのは作者なので他の人はそんなにしっかりと見ていない。

そんな訳で既存の作品はしっかり大事にし、テーマに沿った形で選定することも大切だと思います。結果、タイトル『iDeNTiTY』に沿う作品を過去からざっと並べて選んだ結果、あっさり約25点ほど集まったのと(このくらいあれば十分ギャラリーの壁が埋まります)、そこに入りきらなかった作品たちはイラスト集でも取り扱ったので、意外と自分作品描いてるじゃんということが認識できました。

ただ、また新しい個展をやることがあれば、少なくともその時のテーマに沿った新作の数と自分の力量をしっかり見極めたうえで制作に入りたいと思いました。今回は初めてなので色々素人の悩みが発生するのは当然と思うことにします。

…ここまでが制作に関する振り返りでした。

個展準備についてはグッズ制作、営業/PR活動などとまだまだ書きたいことが残っているのですが、普通にボリュームが多くなってきたので今回はここまでとします。

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