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しつこさについて
10年間のサラリーマン経験がある。そのミシン会社へ就職すると同時に作ったのがオルタナティブ=デザイン部という部署で、それが25年前のこと。そのときから一緒に働いているのが忍者ハットリさん。かなり長い付き合いになる。
忍者ハットリさんが当初、一度だけ『Webブラウザ』を『Webプラウザ』と言い間違えたことがある。いまではプロダクトやライブや展示など多分野にわたる全てのサーバサイドの開発を司る彼女が、そんな初歩的な間違いをしていたのが微笑ましい。たまに「パソコンとスマホと、あとはWebプラウザにも対応しておいて」わざと業務伝達口調でそのことに触れる。彼女は、ムスッとした態度で「川田さんは本当にしつこいですよね」と言い返す。そう、僕は本当にしつこいのである。
ブラウザとプラウザ。濁点と半濁点の違いなんて、本当はどうでもいい。その人のその人らしいエピソードが好きなのと同じように、あのアイデアにはあのアイデアを受容するのに最適な固有の解(形象)があるはず。それを忘れたくないし、諦めたくない。ぐにゃぐにゃと過去と現在を行き来しながら、しぶとく考え続けている。自ずと粘性を帯びてくる。やがてまた姿を変えて、はじめましての顔で目の前にやってくる。その人らしいエピソードは彫刻のように、1mmも形を変えずに堂々と記憶の中でそびえ立つ。