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舞台『たぶんこれ銀河鉄道の夜』愛知公演初日 ネタバレ感想

情報解禁からめちゃくちゃ楽しみにしていた『たぶんこれ銀河鉄道の夜』の愛知公演初日を見に行ってきた。

この舞台は、大好きなヨーロッパ企画とかもめんたるがガッツリ交わることに加え、『続・時をかける少女』以来ヨーロッパ企画とも親交がある戸塚純貴さんが、またヨロ企のプロデュース公演に出演されるということで、もうとんでもなく楽しみにしていた。
(しかも戸塚さんは、宮沢賢治と同郷の岩手県出身!)

上田:もちろん読んでいない方も楽しめるように、劇中で作品説明のフォローも入れます。だけど、もし可能なら事前に原作を読んでもらえるとより楽しめるかもしれないです。青空文庫で無料でも読めるので。『銀河鉄道の夜』に向き合うのは、やっぱりいいことですよ。

「だんだん闘争心が芽生えてきた」
~久保田紗友×上田 誠『たぶんこれ銀河鉄道の夜』インタビュー

学生時代、国語の教科書で『銀河鉄道の夜』の一部分を読み、「は〜〜〜わけわらん〜〜!」と感じて以来、私は『銀河鉄道の夜』に苦手意識を抱き、今作品を通しで読んだことはなかった。
ただ、上田さんがインタビューで上記のようなことをおっしゃっていたので、「上田さんが言うならしょうがねぇな〜〜」(何様)と、広島の自宅からウインクあいちまで移動時間で通読した。


基本情報

あらすじ

アナウンス「銀河ステーション、銀河ステーション」。
ナオは気がつくと列車の中にいた。桔梗色の空、銀河の岸。
あー、たぶんこれ銀河鉄道の夜。
まえに劇でやったから知ってる。
けどなんで私が。
いや、心当たりはある。
裏山に登ったのだ。
なんで私ばっかり、みたいな心持ちで。
ナオは地方住みの美容師。
日々を生きているが、なかなかつらい職場ではあり、練習会でライブへも行けず、そしてツイッターがプチ炎上。
そうしてジョバンニよろしく裏山へ。
同じ車両には、ライブに行ったはずのレナも乗ってる。
っていうかあれ、職場の先輩。
なんで? っていうか、思ったより人、多いな。
こんなんだったっけ。
窓の外は、宮沢賢治が描いたあの風景。
幻想的ってこういうことか。
えっまだ乗ってくる? 全員座れなくない?
ここで車掌が出てきてアナウンス。
なんか乗車率のおわびと、ゲームの説明みたいのが始まった。
えっと、これは銀河鉄道の夜、と思うんだけど、たぶん。

たぶんこれ銀河鉄道の夜 HP

キャスト

  • 久保田紗友

  • 田村真佑(乃木坂46)

  • 鈴木仁

  • 戸塚純貴

  • 藤谷理子(ヨーロッパ企画)

  • 石田剛太(ヨーロッパ企画)

  • 土佐和成(ヨーロッパ企画)

  • 中川晴樹(ヨーロッパ企画)

  • 後藤剛範

  • 加藤啓

  • 槙尾ユウスケ(かもめんたる)

  • 岩崎う大(かもめんたる)

影ナレ

車掌役の槙尾さんが、影ナレを担当。
名古屋なのにマキオカリーの宣伝をしていて(東京に行かれる際はぜひ的な)、ちゃんとプロジェクターにもマキオカリーが映されており、一人で爆笑してしまった。
乃木坂ファンが多いのか、マジで周りはあんま笑ってなかったし、多分あの時ウインクあいちで私が一番大きな声を出していた気がする……。

舞台装置

真ん中にスクリーンがあり、序盤はスクリーンの背景がころころ変わる。
そしてスクリーンが上がると、銀河鉄道の車内が現れるという舞台装置には感動した。
スクリーンが上がった後も、銀河を移動している映像をプロジェクションマッピング的に下手から上手へと流していくことによって、列車が進んでいることを表現する演出も、大変良かった。

OPの演出

キャストが変わる変わる歌を歌い、都度後ろに役者名が映し出され、最後には全員銀河鉄道に乗車しているという演出には、とてもテンションが上がった。
ただ「ナイロン100℃やんけ」とは、若干思った。すみません。
まあ、ナイロンは歌ってないから……歌っているタイミングで名前が表示されるのが大きな魅力だから……。

う大さんのセンス

稽古初期にはエチュードを多用したそうで、上田は脚本・演出家としても活動する岩崎と「アイデアを出し合いながら、二馬力で臨みました」と話す。すると岩崎は「上田メソッドを盗んでやろうという気持ちで参加しました。セリフなども変えたのですが、よく考えてみたらすべて俺の責任になるなと思い、全部元に戻したい」と告白し、笑いを誘った。

「たぶんこれ銀河鉄道の夜」本日スタート、たくさんのアイデアを出した岩崎う大「全部元に戻したい」

今回の公演は、ヨーロッパ企画の本公演と同じく、エチュードで台本を作り上げている。
舞台を見て特に感じたのは、上田さんが「二馬力」とおっしゃっていたように、「ここは絶対エチュードでう大さんが開拓したんだろうなあ……!」というセリフが顕著だったこと。

舞台の冒頭も冒頭で、髪をブロウされながら銀河について語っているシーンからう大節が炸裂していて、今後の期待感が高まった。
(ここは、う大さんのアドリブシーンらしい。)
また文化祭のシーンでは、「劇をやれ。模擬店は逃げ。模擬店を選んだら、今後も模擬店のような逃げの人生しか送れない」というようなパンチラインを繰り出していて、大笑いしてしまった。マジで大好き。
そして、雁を食べるシーンが内臓の血がうんぬん……とおっしゃっていたところも、多分う大さんのエチュード由来なんだろうなあ……と感じた。

もし上記3つのセリフ群の中に、上田さんがガッツリ書いたセリフがあったとするならば、それ上田さんの当て書きセンスがすさまじいと思う。

キャストについて

う大さん

またまたう大さんから。
名前が「ヤザワ」な時点でなんとなく察してはいたが、途中で「宮沢賢治」であることが明かされる役。
宮沢賢治役めちゃくちゃ似合っていたし、ハマり役だった。
どっどど どどうど どどうど どどう。……信じられないだろ、これ風の音なんだぜ」という、セリフには笑ってしまった。
これは上田さんとう大さん、どっちが案を出したのか気になる……。
(※千秋楽の配信で、う大さん発案だと上田さんがおっしゃっていました。)

槙尾さん

上田さんが作詞のみならず作曲も行なった劇中のポエトリーラップ。
観劇中は1回しか聴けないので、どうしてもどんな歌詞だったか、どんな曲調だったかについては、残念ながら大部分が記憶から薄れてしまっている。
しかし、OPで車掌が「銀河ステーション!銀河ステーション!」と言った部分については、リズム含め槙尾さんの声でいまだに脳内再現できる
これなにげにすごいのではないか???
車窓以外の役については、兼ね役のブロックで後述。

理子ちゃん

元々上田さんか音楽劇を書き始めたきっかけは、歌える理子ちゃんが劇団に入ったからだという。
今作で実際に理子ちゃんの歌を聴いて、「さすが上田さんにそれだけ言わせるほどあるな!!!」と、歌のうまさに感嘆してしまった。
『夜は短し歩けよ乙女』はコロナの影響で泣く泣くチケットを手放し、配信で鑑賞したので、やっと理子ちゃんの生歌を聴けてうれしかった。

後藤さん

先々月に『宝飾時計』でお姿を拝見したばかりだったんだけど、稽古のスケジュールマジでどうなってんの!!!!?
『宝飾時計』で初めてお芝居を見て、すごく気になっていた俳優さんだったので、またすぐに出演作品を見ることができてうれしかった。
短期間でお芝居を2回見て、すごく素朴な役が似合う役者さんだなあと感じた。

兼ね役について

槙子ちゃん♡

槙尾さんは車掌役での出演がアナウンスされていたので、今回の舞台では女装が見られるとは思っていなかった。
しかし、まずは主人公ナオのお母さん役として登場!
中年女性の槙尾さんも見られるとは……!

戸塚さん

兼ね役が多いことを逆手に取り、モブだと思われた弁当屋の店員が、実はシゲフミと同一人物だったと分かる演出が良かった
久保田さんも出演されていたVAMP SHOWを見に行かなかったことを、今本当に後悔している……。

ヨロ企メンバー

一瞬だったが、理子ちゃん、石田さん、土佐さんの制服姿が見られてうれしかった。

脚本

銀河鉄道に乗った瞬間に、「たぶんこれ銀河鉄道」というワードが頻繁し、「たぶんこれ銀河鉄道」という単語自体が面白ワードと化していく
これぞ上田誠脚本!!!

戸塚さんも出演されている(というか、続・時かけタッグ)大好きな短編ドラマ『リマインド』の「SF、お好きですか?」を個人的に思い出すなどした。

また、途中石田さん演じるコスガが「俺が生まれた家の景色は、退屈なみかん畑だった」というセリフを言う場面がある。
パンフレットによると、本読みの際このセリフを聴いて、ヨロ企メンバーだけ笑っていたらしい笑笑。(※石田さんは、愛媛県出身。)
私も一人爆笑しそうになったが、客席の雰囲気がそんな感じではなかったので、なんとかこらえた。
多分これがヨロ企の本公演だったら、笑いが起こっていたのではないかと思う。

そして、あらすじや登場人物の紹介を事前に読む限り、原作からはかなりアレンジが加えられた脚本になるのではないかと、勝手に予想していた。
しかし、登場人物は全く異なるものの、話の流れや一つ一つのセリフはかなり原作に忠実で驚かされた。

ヨーロッパ企画はコメディーを上映する劇団なので、劇中で人が死ぬことはあまりないし、観劇後に悲しみで胸が締め付けられたり、切なくなったりすることは基本的にない。
しかし今作は原作に準じて、主人公の親友が亡くなるという結末。
観劇後は、当然ながら胸が苦しくなった。
しかし、これは原作を読んだ際にも感じたが、人が亡くなったというラストなのに、なぜかナオと一緒に観客も希望を抱くことができるのはなぜだろうか。
これについては、「宮沢賢治恐るべし」と思うと同時に、この感情をうまく言語化することができない自分の至らなさに悔しさを感じてしまう
これからもっと人生経験を積んで、「本当の幸」について考えていきたいと思った。

最後に

こんな機会がなければ、私は生涯『銀河鉄道の夜』を読むことはなかったと思う。
小難しい作品ではあったけれども、なんだか人生を生きる上で大事なものを教えてもらった気がするし、なんか人生に深みが出た気がするし(語彙力)、本当に読んで良かったと思う。
このような機会を与えてくれたニッポン放送および、上田さんには感謝を申し上げたい。

大阪千穐楽の配信は、後日副音声付きで鑑賞する予定である。
こんな素晴らしいお芝居をもう一度鑑賞できることが、今からとても楽しみである。

公演グッズ一覧
中川さんと石田さんのアクリル栞だけ売り切れていたのマジで笑う

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