ペンタトニックスケールの実戦(ベース)での使い方の考察

1. 初めに

前回はダイアトニックコード(4和音)のベース指板での位置関係を音楽理論を交えて整理した。そこでも述べた通り、基本的にベースはコードのルートを軸にコード構成音を使って曲を支えるのが役割だと思っているが、たまにベースが主張して光る瞬間がある。主張の仕方にも色々あるが今回はコード構成音でない音を使って演奏することを考える。この時、よく利用されるのがペンタトニックスケールである。ペンタトニックスケールは本当によく紹介されているので自分もとりあえず覚えていた時期があったが、例のごとく実戦でどう使うのかが全く分からなかった。音楽理論を整理したおかげか、ペンタトニックスケールの実戦での使い方について考えるようになった。訳もわからんもんは考えるモチベが出ないからね、音楽理論ってもしかして意味あるか?

2. ペンタトニックスケールの実戦(ベース)での使い方

2-1.  マイナーペンタトニックスケールの基本

ペンタトニックスケールはメジャースケールやマイナースケールから半音間隔のものを除外し、アドリブやソロを弾く際に扱いやすくしたものと考えるとわかりやすい。もっと言うとこの除外した音はダイアトニックコードによってはアボイドノート(短9度の関係、避けるべき音)になり、これを除外することによりダイアトニックコード上であればペンタトニックスケール無双できるというわけ。Gマイナーペンタトニックスケールを例にとると、図1のようになり、Gマイナースケールから半音間隔(1フレット間隔)が無くなっていることがわかる。構成音はG,A#,C,D,Fの5音(ペンタ)になる。形も覚えやすいので赤枠の形でよく紹介される。1オクターブ内で完結させるならこれだけでよいのだが、ソロを弾くような場合は下の指盤を動き回ることが必要である。

図1. Gマイナーペンタトニックスケール

2-2.  マイナーペンタトニックスケールの実戦での使い方

図1の形にFのオクターブ下、A#の異弦同音、ブルーノート(減5度)を加えた形がマイナーペンタにおいてよく使われる。また、オクターブ上の同じ形を図2に赤枠で示す。このように認識すれば覚えやすく、次の島のルートの位置や島と島の間隔を意識するとよい。オクターブ間を行き来するときは下図の位置関係を斜め方向に下降or上昇したり、スライドで隣の島に一気に移るのも有効である。+αで1弦A#,C,D(3弦A#,C,Dのオクターブ上)や4弦C,D(2弦C,Dのオクターブ下)も使えるとよいと思う。

図2. Gマイナーペンタトニックスケール(1~15フレット)

さらに、ソロの場合等は高フレットの領域もよく使われる。13フレット以降はオクターブ上なので先程と同様の形になる(図3)。ここでは1弦A#,C,D(3弦A#,C,Dのオクターブ上)は必須レベルで使いたい。先程とは異なり隣の島とは異弦同音関係であるため、隣の島は低音4弦C,Dへ展開するために利用するとよいと思われる(隣の島の1弦2弦の丸を外している)。

図3. Gマイナーペンタトニックスケール(8~19フレット)

このキー以外の場合も平行移動するだけで位置関係は変わらない。位置関係を一般化すると以下図4のようになる(ルートをRで、ブルーノートを白丸で表す)。

図4. マイナーペンタトニックスケールの一般化

2-3.  メジャーペンタトニックスケールの基本

次にメジャーペンタトニックスケールを考える。G#メジャーペンタトニックスケールを例にとると、図5のようになり、Gメジャースケールから半音間隔(1フレット間隔)が無くなっていることがわかる。構成音はG#,A#,C,D#,Fの5音(ペンタ)になる。形も覚えやすいので赤枠の形でよく紹介される。

図5. G#メジャーペンタトニックスケール

2-4.  メジャーペンタトニックスケールの実戦での使い方

図5の形にオクターブ関係、異弦同音関係、ブルーノート(短3度)を加えた形を一つの島として考えるのがいいかも?また、オクターブ上の同じ形を図6に赤枠で示す。このように認識すれば覚えやすく、次の島のルートの位置や島と島の間隔を意識するとよい。マイナー同様、オクターブ間を行き来するときは下図の位置関係を斜め方向に下降or上昇したり、スライドで隣の島に一気に移るのも有効である。6~8フレットが扱いやすそうなのでここを軸に構成したり、ここを経由して隣の島に移動したりがよさそうか。+αで1弦A#,C,D#(3弦A#,C,D#のオクターブ上)や4弦D#,F(2弦D#,Fのオクターブ下)も使えるとよいと思う。

図6. G#メジャーペンタトニックスケール(1~15フレット)

先ほど同様、高フレット側も確認する。13フレット以降はオクターブ上なので先程と同様の形になる(図7)。ここでは1弦C,D#(3弦C,D#のオクターブ上)は必須レベルで使いたい。先程とは異なり隣の島とは異弦同音関係であるため、隣の島は低音4弦D#,Fへ展開するために利用するとよいと思われる(隣の島の1弦2弦の丸を外している)。

図7. G#メジャーペンタトニックスケール(10~20フレット)

このキー以外の場合も平行移動するだけで位置関係は変わらない。位置関係を一般化すると以下図4のようになる(ルートをRで、ブルーノートを白丸で表す)。マイナーと同様、異弦同音関係の島は重なりがあり、オクターブ関係は1フレット隙間があることがわかる。

図8. メジャーペンタトニックスケールの一般化

2-5.  各コードに応じたペンタトニックスケールの使い方

基本的には、そのキーのペンタトニックスケールであれば、各コード上で弾いても変なことにはならない(各コードに対するアボイドノートを有していないため)。ここでは幅を広げるため別のキーのペンタトニックスケールを使うことを考える。

2-5-1.  メジャースケールの場合

例えばG#メジャースケールのダイアトニックコードにおけるマイナー系を確認すると、Ⅱ,Ⅲ,Ⅵ,ⅦのA#m7,Cm7,Fm7,Gm7-5であるので、ここでそれぞれのルートをキーとしたマイナーペンタを使用できるか調査してみる。A#のマイナーペンタをG#メジャースケールに重ねると以下のようになり、G#メジャースケール内の音を使えていることがわかる。

図9. A#マイナーペンタトニックスケール on G#メジャースケール

これを他のマイナー系およびメジャー系ダイアトニックコードでも調べてみると以下表になる。それぞれのペンタトニックスケール構成音のうち、G#メジャーペンタトニックスケール構成音と異なる音を赤字で示し、G#メジャースケール構成音にないものを青字にしている。


表1. G#メジャースケールにおけるメジャー/マイナー系ダイアトニックコードに対するメジャー/マイナーペンタトニックスケール構成音

これを見るとメジャー系ダイアトニックコードにはそのルートをキーとしたメジャーペンタトニックスケールを使用し、マイナー系ダイアトニックコードにはそのルートをキーとしたマイナーペンタトニックスケールを使用すれば、Gm7-5以外は全てG#メジャースケール内の音を使えていることがわかる(Gm7-5でのDがスケール外の音かつ、アボイドノート(短9度の関係)になっている)。
また、各ペンタトニックスケール構成音のうちG#メジャーペンタトニックスケールと異なる音(赤字)に注目すると、各ペンタトニックスケールに対し1つずつ違う音が含まれており、これらの音により元のメジャーペンタトニックスケール1発に比べて広がりが生まれる(ⅥのFm7のみ、構成音が全て同じであるがこれは平行調であるため)。

2-5-2.  マイナースケールの場合

例えばGマイナースケールのダイアトニックコードにおけるメジャー系を確認すると、Ⅲ,Ⅵ,Ⅶの,A#M7,D#M7,F7であるので、ここでそれぞれのルートをキーとしたメジャーペンタを使用できるか調査してみる。A#メジャーペンタをGマイナースケールに重ねると以下のようになり、Gマイナースケール内の音を使えていることがわかる。

図10. A#メジャーペンタトニックスケール on Gマイナースケール

これを他のメジャー系およびマイナー系ダイアトニックコードでも調べてみると以下表になる。それぞれのペンタトニックスケール構成音のうち、Gマイナーペンタトニックスケール構成音と異なる音を赤字で示し、Gマイナースケール構成音にないものを青字にしている。

表2. Gマイナースケールにおけるマイナー/メジャー系ダイアトニックコードに対するマイナー/メジャーペンタトニックスケール構成音

これを見ると先ほど同様、メジャー系ダイアトニックコードにはそのルートをキーとしたメジャーペンタトニックスケールを使用し、マイナー系ダイアトニックコードにはそのルートをキーとしたマイナーペンタトニックスケールを使用すれば、Am7-5以外は全てGマイナースケール内の音を使えていることがわかる(Am7-5でのEのみスケール外の音かつ、アボイドノート(短9度の関係)になっている)。
また、各ペンタトニックスケール構成音のうちGマイナーペンタトニックスケールと異なる音(赤字)に注目すると、各ペンタトニックスケールに対し1つずつ違う音が含まれており、これらの音により元のマイナーペンタトニックスケール1発に比べて広がりが生まれる(ⅢのA#M7のみ、構成音が全て同じであるがこれは平行調であるため)。

3. まとめ

マイナー・メジャーペンタトニックスケールをベース指板上での位置関係を図示し、認識の仕方とこれを利用する際の意識の仕方について考察した。また、ダイアトニックコードに応じた他のキーのペンタトニックスケールも使用可能(メジャーマイナーともにフラットファイブ以外)であることを確認した。このことにより使える音が増え、広がりを生むことが出来る。考察してみて理解も深まったので、実戦投下してみて更に学びがあれば追記しようと思う。

リファレンス

・図1~図3、図5~図10の元図
ギターを学ぶ【放課後トミータイム】 – ギター初心者の放課後 (masatomy.com)

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