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#バナナ・フィッシュにうってつけの日

私は漫画狂いだ。
「今まで読んだ中で一番良かった漫画」、と聞かれても1日は頭を抱えてしまう。結論を出せたことはまだない。漫画大好き人間になったのは、母の影響が大きい。幼い頃から、母には良質なエンタメを与えてもらったと思っている。

年末年始、実家に帰省をした際、そんな母と漫画の話で盛り上がった。
話している中で、
「『BANANA FISH』が忘れられない」
と些か予想外の作品名が出てきた。
というのも、ちょうど2年前頃、リメイクされたアニメが放映され、私がひっそりとハマっていた作品だったのだ(ただアニメのペースが歯痒く、漫画で読み完全燃焼してしまった為アニメは3話程度しか見ていなかった)。内容がストリートギャングモノで、かなり治安が悪い作品なので、良い作品に出会うと大体母に報告する私だが、話していなかった。

お互いがこの名作を知っていることに驚きあい、(特に母はアニメ化されたいたことを知らず、35年前の作品を娘が知っていることに驚愕していた)盛り上がり、せっかくだからリメイクされているアニメを一緒に観ようとなった。

24話あるアニメを二日間で観た。正気の沙汰ではない。精神的にも体力的にも非常に悪かった。しかし、全くの後悔はなかった。二人で泣きじゃくり、見終わった後は、身体の不純物が取り除かれたような、清々しい気持ちになった。


簡単にあらすじを説明するなら、
類い稀な美貌とIQをもつ最強美少年、アッシュ(強過ぎ)とストリートギャングの取材をしにきた真面目で心優しい日本人、英二との友情を中心に、「バナナ・フィッシュ」という謎のキーワードを巡ってストリートギャングとマフィアの抗争(この描写もめちゃくちゃリアルで厳つい)が繰り広げられるという話だ。


この漫画のすごいところ、
①小説のような精神描写の上手さ
②キャラクターの人間味の深さ

について話させてほしい。

精神描写の巧みさ
バナナ・フィッシュという言葉が、
J.D.サリンジャーの"Nine Stories”の一編、”A Perfect Day for BananaFish"からきているのは有名な話だ。作中でも文学作品が引用されることが多いが、小説のような精神描写の隠喩や、心の動きを表現するのが上手過ぎる。アッシュ本人からは自分の気持ちを説明することは少なく、あるとしても英二の前で漏らすぐらい。英二や周囲の大人、ギャング達から見たアッシュが多く描かれ、他者の目を通して、アッシュの過酷な生い立ちまた類まれな才能故の”孤独さ”、”怪物性”また”心の不安定さ”が浮き出されている。大事なことは敢えて言葉にしない、漫画じゃ難しい小説のような手法が捉えている。これは相当高等技術だと思う。

物語の中で頻繁に繰り返される

「俺が怖いか?」
「まさか!」

というアッシュと英二の会話。
アッシュは英二という自分と対極の存在に出会うことで自分の”怪物性”を自覚し、それに対して怯えるようになる。それを打ち消すような明るい英二の返答にアッシュは救われていたのだろう。

バナナフィッシュは
孤独だった少年が心の拠り所を見つけ、自分の在り方を見直す物語”だと思っている。

アッシュの心の動き方、それを察知する英二その二人が相互を支え合う友情が美し過ぎて物語の後半は涙と嗚咽が止まらなかった。


②魅力的なキャラクター
バナナフィッシュの登場人物は全員は人間臭い。個人差はあれど皆んな弱い。
ジャンプの主人公のような揺るぎない精神力などは持ち合わせいない。
故にリアルで複雑。
悪役にもしっかりと弱みと信念と野望があるから憎めない。
そこが物語に深みを出している。

そもそも設定が人種の坩堝ニューヨークでの、ストリートギャングとマフィアの抗争なので、登場人物殆どが”ワル”であることが前提。
白人だけではなく、黒人や中国人系のギャング達、イタリア系のマフィアなど様々人種、境遇のキャラクターが登場する。
そんな中、日本から来た平和ボケした弱い日本人の英二は異質中の異質。
(兎に角弱い)(戦闘でバリ足引っ張る)(でも愛されとる)(愛嬌の塊なので)


この作品を読んで、とんでもなく狭い世界に住んでいるなと思った。
高校・大学と似たような境遇、偏差値、考え方、将来展望の人間達に囲まれて、
本気で人と衝突することがなくなった。

自分の信念を持って、色んな人と関わり、文字通り死ぬ気で闘っているキャラクター達を見て、もっと広い視野で世界を見て、関わっていきたいと思った。


バナナフィッシュの素晴らしさを私の語彙力では上手く説明できないのが本当に悔しい。まだ読んだことが無い人は是非読んでみてほしい。アニメもアマゾンプライムで視聴可能なので是非。


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アニメは現代風にアレンジされていたが、原作に忠実で分かりやすく、映像が本当に綺麗だった。

間違いなく、私が読んだ漫画、見たアニメ作品で
上位に食い込む非の打ち所がない傑作だ。

ただ、冒頭で書いた「今まで読んだ中で一番良かった漫画」については、人生をかけて悩ませてほしい。この議題は生涯を捧げる価値がある、と私は思う。





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