社会で働き、学ぶなかで生まれた喪失感と閉塞感。CMCで学んだ自分との付き合い方とゆるやかな変化。〜CMC7期生振り返りレポートvol.2〜
毎日働いて、生活は安定しているけどなんだか苦しい。
大学で学んでいて、嫌なことはあまりないけど、なんか物足りない。
そう思うことは贅沢なのでしょうか?
CMCでは、いろんな背景の人が集まります。休学している大学生もいれば、仕事を辞めて人生を見つめ直したくて来る人もいる。高校卒業直後に参加してくれる人もいます。
共通点は、みんななんだかモヤモヤしている。それだけ。
最初はそれは漠然としていても、CMCの舞台である広田町で暮らしているうちに、モヤモヤが問いとなり、自分の大切なものを見つけるヒントにもなります。
今回はCMC7期生振り返りレポート第2弾として、りょうとしえいなをゲストに迎えました。2人はCMCに来る前、漠然とした喪失感や閉塞感を持っていて、環境を変えたいとCMCにやってきたそうです。
2人はCMCに来たから劇的に人生が変わったわけではないと話します。しかし、CMCでの小さな挑戦や対話を通し、自分の執着や経験と少し距離を取ることで見えてきたこともあるそう。
2人が今感じている、自分のゆるやかな変化を話してくれました。
働く中で感じた喪失感。大学院で学ぶ中で感じた閉塞感。
ー今日はよろしくお願いします!まずは2人がなぜCMCに来たのか教えてもらえますか?
りょう:僕はCMCに来る前、栃木県那須塩原市で乳牛のお世話をする会社で働いていました。そこはとても肉体的にも精神的にも大変でした。給料はいいけど、時間をたくさん売って自分は満たされない感覚で。失っているものは多いなと感じました。
学生時代にCMSPで広田町に来ていたこともあり、広田町のことやSETのこと、CMCのことは知っていました。環境を変えたいなと思っていた時、たまたまCMCのことを思い出しました。CMCの卒業生や運営者の岡ちゃんに悩みを話しているうちに、CMCの参加を決めたという感じです。
ーCMCに参加する動機とか目的とかはあった?
明確に何かを得ようという目的はありませんでした。でも、広田町には学生時代にお世話になった人もたくさん移住していたんです。自分にとって安心する環境だったことは、参加する上で大きかったと思います。
だから参加動機というよりは、もう一回広田に戻ってみようかという感覚でしたね。せっかく帰るなら、CMCで新しい人との出会いや繋がりも生まれるのではと思い、参加した感じです。
ーなるほど。しえいなちゃんはなんで参加したのかな?
きっかけは移住スカウトサービス「SMOUT(スマウト)」でメッセージをもらったことでした。当時はずっと家で大学院の授業を受ける毎日で、閉塞感や無気力感から、徐々に息の根を止められていくような感覚がありました。
生きているようで生きていない。そんな環境を変えたくて、SMOUTで求人などをみていたなかで、最終的に声をかけてくれたのがCMCでした。
このタイミングで声をかけてくれるということは、何かご縁があるのかな。ご縁くらいは信じられる人でいたいなと思い、参加を決めました。
ー参加を決めるまでは、基本的にオンラインでのやりとりだったと思います。オンラインだけで信用できるなってなぜ思えたんだろう?
参加を決めるまでに、3回くらい運営スタッフのこうへいと話しました。その都度勧誘をされるというよりは、新しい友達と話している感覚だったんです。
自分が話したいことがあっても、自分から声をかけないと人との関わりが持てなかった時に、自分の話を丁寧に聞いてくれる人がいると思えたことが大きかったかもしれないですね。
気軽にチャレンジし、経験をちゃんと相対化して考えられた。
ーCMCの4ヶ月間、2人にとってはどんな時間だった?
りょう:自分がやってみようと思ったことを割と自由にできる期間だったと思います。普段はちょっとやってみたいと思ってもできないことって多いじゃないですか。
でも、広田だったらイベントでもなんでも、割とできるんじゃないかなと思えたんです。家の周りの畑をつくってみたり、料理をしてみたりと、チャレンジのハードルが下がっていたと思います。
ーりょうくんは今個人事業主として料理をつくっていると聞きました。もともと料理は好きだったの?
料理は大学時代にプロジェクトで広田町に来ていた時から、割と他の人に料理を振舞っていました。CMC期間中は7期のメンバーに料理をつくったり、SETメンバー主体の自治会が開催しているコミュニティランチを週1回任せてもらったりもしていました。
作り続けていると、町の人からリクエストをもらったり、岡ちゃんから飲み会用の料理を作ってもらえないか声をかけてくれることもありました。CMC期間中は忙しくないので、そういう機会に乗っかりながら、いろんな挑戦ができたかなと思います。
ー小さなチャレンジかもしれないけど、周りの人の声かけてもらえるのは嬉しいよね。しえいなちゃんはどんな時間だった?
しえいな:私はCMC期間中、いろんなところに行きました。町の人のお家にお邪魔したり、知らない人に会ってみたり、行きたかった喫茶店でお茶したりしてました。
そういう経験を一旦全部並べて、それは一体どういう経験だったのかを持ち帰って話せる場所がCMCにあったと思います。この経験はなんだったのかとか、この経験とあの経験はつながるなとか、そんな話。
それ以外にも、自分の人生でこういう経験は心地よいか心地よくないかについてルームメイトとよく話しましたね。
経験を全部並べ、俯瞰してみることで、経験を相対化して考えることができました。そして、他者は自分と同じ経験をしても、全然違うことを感じている。
それを踏まえて話すことができたので、自分のことも客観的に考えることができました。おかげで、CMC期間中はずっと調子が良くて、おもしろいと思えることばかりでした。
ー経験を相対化することで、自分が感じていることと違う側面があることを知る。それだけでも気持ち的に楽になることは多いよね。2人とも手を動かしながら、対話をして経験を深める時間だったんだろうな。
CMCでの経験から感じる、ゆるやかな変化
ーCMCを卒業してから半年以上たっていますが、2人がCMCにくる前の心持ちや考え方に変化はありましたか?
りょう:そうですね……。正直、CMCに来て人生が一気に変わりました!みたいな劇的な変化は今のところ感じていません。でもそれは悪い意味ではなくて、確実に変化はしています。
CMCに来る前は、正規雇用に対する執着がありました。フリーターでも生きていけるけど漠然と怖かった。社会的な肩書きに執着する自分もいて、失うことへの危機感を持っていました。
でも執着を1回手放して、CMCで同じようなことを考えている人と話し、自分の人生を考え、何か形にしようと日々を過ごしました。CMCで試した料理がつながって、卒業後は個人事業主として開業しました。
会社員時代に比べると収入は少ないですけど、自分の料理にお金を出してくれる人は確実にいる。働かされている感覚は全然ないし、自分で考えて仕事をデザインしていると感じます。
今はフリーターでも、アルバイトでも全然いいと思っています。社会的な肩書きとかに囚われない自分を許せるようになったのは変化だと思います。
ー自分の執着を見つめ直して、自分に本当に必要なものを見つけられたのかもしれないね。しえいなちゃんはどうでしょう?
しえいな:CMCにいたときの調子のよさを忘れずにいたいと思っています。でも、時々息苦しくなる時もある。でも、今は息苦しいと感じてしまう状態すらも客観視して相対的に考えられるようになったことは変わったなと思います。
心持ちはいつでも揺らぐもの。そう理解したうえで、どう変わっていけばいいのかと発展して考えることもできる。それは今も試行錯誤している最中ですが、今はそのプロセスも楽しみたいなと思っています。
ー自分の持っているものを手放して、揺らぐことを受け止める。2人の変化は確かに目に見えにくいかもしれないけど、とても優しくしなやかなものだと感じました。2人がこれからまたどんな経験をして学びを得ていくのかとても楽しみです!今日はありがとうございました。
今回インタビューに答えてくれたりょうが経営する「なりわいきっちんRYO」。今後もいろんなところでお料理を振る舞う予定だそうです☺️
詳細を知りたい方はこちらの画像をタップして専用ページをチェックしてみてください!
執筆/編集 外村祐理子(Yuri)