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2025年レイズ、アスレチックスを待ち受ける「未経験の猛暑」
(注)
見出し画像は以下の記事からの引用です。
City reverses $23M decision to fix Tropicana Field for Rays
https://www.espn.com/mlb/story/_/id/42530207/st-petersburg-approves-23m-repair-tropicana-field-roof
2025年のMLBは、いわば「仮住まい」の形で本拠地が移転するチームが2つある。そのチームは以下の2つだ。
・タンパベイ・レイズ
・アスレチックス
セントピーターズバーグのトロピカーナフィールドを本拠地としてきたレイズは、同球場が昨年10月の大型ハリケーン「ミルトン」で屋根の破損などの大きな損害を受けたため、2025年はタンパにあるジョージ・M・スタインブレナー・フィールドを本拠地とする。同球場はヤンキースのスプリング・トレーニング開催地、ヤンキース1Aの本拠地である。一方、昨年までオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムを本拠地としてきたアスレチックスは、2028年のラスベガスへの移転に先立ち、2025年から3年間は、サクラメントのサター・ヘルス・パークを本拠地とする。なお、同球場は、元来はジャイアンツ3Aの本拠地である。移転に伴い、チーム名の頭についていた従来の本拠地所在地の「オークランド」がチーム名から消えた。
両チームの共通点を1つあげると、夏の暑い環境に本拠地が移転することだ。レイズはドーム球場から屋外球場に、アスレチックスは沿岸部から内陸部の屋外球場に移転する。両チームとも昨年まで体験していない環境で夏のホームゲームを行うことになる。
昨今の地球温暖化や猛暑の危機が叫ばれる中、両チームが移転により受ける夏の暑さの影響はどのくらいになるのだろうか?今回のテーマはここだ。
なお、以降では、屋外の気象条件のデータは、Extreme Weather Watchサイト(リンクは下記)記載のものによった。ただし、元数字は華氏で記載されているため、本文ではこのデータを摂氏に換算して記載する。
https://www.extremeweatherwatch.com/
レイズ(屋内→タンパ)のケース
まず、ドーム球場をハリケーンにより失い、タンパの屋外球場に一時移転するレイズのケースだ。
2024年3月27日~9月30日のタンパにおける最低気温と最高気温の推移を以下に示す。3月27日は、今年2025年にアメリカでMLBが本格開幕する日付に相当する。グラフ内の横の直線は、Baseball Referenceサイト記載の、昨年の本拠地トロピカーナフィールド内の気温である。7月12~14日のガーディアンズ戦の記録に準拠した。その数値は華氏72度、摂氏換算で22.2℃になる。
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(単位:℃ 屋外気象データはExtreme Weather Watchサイトによる)
5月以降は、ほとんどの日で、最高気温だけでなく最低気温もトロピカーナフィールド内の気温を上回っていた。7月~8月は76%の日で日本の基準で「熱帯夜」とされる最低気温25℃以上を記録している。対象となる158日間中約84%の158日で、日本の基準上では「真夏日」とされる最高気温30℃以上を記録している。最高気温35℃以上の日は9日間だった。
MLBの場合、長距離移動を伴うことから、暑い真夏でも週末を中心にデーゲームが開催される。レイズの場合、現時点で、6~8月は9試合のデーゲーム(うち7~8月は4試合)が現時点で予定されている。そのうちの1つが、8月3日のドジャース戦だ。この8月3日における過去の最高気温の推移は以下のようになっている。
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(単位:℃ データはExtreme Weather Watchサイトによる)
過去の統計通りなら、100年あたり1℃のペースで上昇する中、昨年までにはなかった約33℃の炎天下でホームでのドジャース戦を戦うことになる。
アスレチックス(オークランド→サクラメント)のケース
次に、内陸部のサクラメントに移転するアスレチックスのケースだ。2024年3月27日~9月30日の最高気温、最低気温それぞれにつき、従来本拠地のあったオークランドと今季本拠地を置くサクラメントの推移を比較した。前記のとおり、3月27日はアメリカでMLBが本格的に開幕する日である。
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(単位:℃ 屋外気象データはExtreme Weather Watchサイトによる)
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(単位:℃ 屋外気象データはExtreme Weather Watchサイトによる)
6月~8月を中心に、サクラメントの方が高温になっている。特に最高気温の変化幅が大きい。換言すれば内陸部にあるサクラメントの方が1日の気温の変化幅が大きいこととなる。具体的な数字を挙げると以下のようになる。
(最高気温)
・6月平均-オークランド22.1℃、サクラメント33.2℃(差11.1℃)
・7月平均-オークランド24.6℃、サクラメント37.0℃(差12.4℃)
・8月平均-オークランド23.9℃、サクラメント33.2℃(差9.3℃)
(最低気温)
・6月平均-12.6℃、サクラメント14.8℃(差2.2℃)
・7月平均-14.9℃、サクラメント17.5℃(差2.6℃)
・8月平均-14.8℃、サクラメント15.4℃(差0.6℃)
アスレチックスの場合、現時点で、6~8月は7試合のデーゲーム(6月3試合、7月1試合、8月3試合)が現時点で予定されている。7月唯一のデーゲームが、オールスターゲーム直前に行われる7月13日のブルージェイズ戦だ。この7月13日における過去の最高気温の推移は以下のようになっている。
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(単位:℃ データはExtreme Weather Watchサイトによる)
1972年7月13日には、なんと45.6℃(華氏114度)の気温を記録している。そして、直近20年間のうち11年で最高気温35℃以上、日本の基準での「猛暑日」を記録している。気温上昇のペースは100年間で2.5℃と、前記のタンパを上回り、世界の地球温暖化の平均的なペースを上回っている。そして、統計データ通りなら、アスレチックスは、最高気温約35℃と、昨年まで経験していない猛暑下のホームのデーゲームを戦わなければいけないこととなる。
まとめ
それぞれの事情で昨年まで経験していないホームでの猛暑にさらされるレイズとアスレチックス。両チームが新たに立ち向かわなければならない試練であることには間違いないとともに、未来の野球を守るためにも気候変動対策は大切であると感じさせられる。
なお、詳細には、気温だけでなく、湿度や風速、さらに日照を加味した「暑さ指数」(WBGT)での比較が求められる。
もう1つ、昨年のトロピカーナフィールドの設定温度例(7月12~14日で22.2℃)は、冷やしすぎにも思える。消費電力やCO2排出量削減のためにも、夏季は26~27℃でもいいかもしれない。レイズ、アスレチックスとも、現時点で2028年に新ドーム球場のオープンが予定されているが、選手にとって快適な反面、外部環境への負荷も大きい。未来の野球、スポーツ、地球を守るためにも、持続可能でカーボンニュートラルなスタジアムになってほしいものだ。温度設定も実はその1つの要素になるかもしれない。