なぜ「鷹の祭典」が「鷹の災典」になったのか?まず得失点データからの分析
知る人ぞ知る通り、最近、NPBホークスはいわゆる「鷹の祭典」開催試合に非常に弱い。SNS上などでは「鷹の災典」と揶揄され、「縁起悪いからやめてしまえ」という声も上がるくらいだ。2023年の「鷹の祭典」最終戦となった7月30日のマーリンズ戦でようやく勝ったが、これが2023年の「鷹の祭典」初勝利になったくらいだ。
「鷹の祭典」がいつから「鷹の災典」になったのか。ターニングポイントは2021年7月13日のイーグルス戦。これ以降、2023年まで、鷹の祭典の勝敗は何と2勝19敗だ。
同日以降の「鷹の祭典」各試合のスコア及び勝敗は以下の通り。
【2021年】7月13日以降は3連敗
7月13日 ●2-6E
7月14日 ●2-4E
8月29日 ●3-6E
【2022年】1勝8敗
6月27日 ●1-8M
7月8日 ●2-4 F
7月9日 ●2-7 F
7月10日 ●0-2F
7月12日 ●2-4B
7月13日 ○4-2B
7月14日 ●2-3B
7月20日 ●3-17E
8月29日 ●2-3M
【2023年】1勝8敗
6月26日 ●1-3E
7月10日 ●1-2L
7月12日 ●2-4L
7月15日 ●2-3B
7月16日 ●1-2B
7月17日 ●0-3B
7月28日 ●5-8M
7月29日 ●1-4M
7月30日 ○6-5M
上記期間中の勝敗:2勝19敗 勝率.095
では、ホークスは、「鷹の祭典」でなぜ勝てなくなったのか??得失点のデータから取り急ぎみていこう。
上記「鷹の祭典」の21試合の得失点は以下の通り。
・合計 得点44(2.10/試合)、失点100(4.76/試合)
・うち2021 得点7(2.33/試合)、失点16(5.33/試合)
・うち2022 得点18(2.00/試合)、失点50(5.56/試合)
・うち2023 得点19(2.11/試合)、失点16(3.78/試合)
2021年~2023年のレギュラーシーズンの得失点は以下の通り。な、2023年は7月30日終了時点(90試合)である。
・合計 得点1,447(3.85/試合)、失点1,274(3.39/試合)
・うち2021 得点564(3.94/試合)、失点493(3.45/試合)
・うち2022 得点555(3.88/試合)、失点471(3.29/試合)
・うち2023 得点328(3.73/試合)、失点310(3.52/試合)
「鷹の祭典」21試合に関しては、得点、失点いずれもレギュラーシーズンより悪くなっている。一方、1試合当たり得点の減少幅は1.75、失点の増加幅は1.37である。対象21試合全体に関しては、「鷹の祭典」期間中のパフォーマンスの低下幅は打線の方が大きい。
年別に詳細にみると、2021年、2022年に関しては、投手の方がパフォーマンスの低下幅が大きくなっているの。これに対し、2023年は打線のパフォーマンス低下幅が大きくなっており、投手のパフォーマンスの低下幅は0.26点にとどまっている。そして、2023年は、前年に比べ鷹の祭典中の得失点差は改善傾向にある。
得失点の増減は以下の通り。
・合計 得点△1.75 失点+1.37
・2021年 得点△1.61 失点+1.88
・2022年 得点△1.88 失点+2.27
・2023年 得点△1.62 失点+0.26
ちなみに、対象21試合の得失点をもとに、理論上の「ピタゴラス勝率」を求めると.162。実際の勝率(.095)はピタゴラス勝率を下回っていることから、采配・戦略力も「鷹の祭典」期間中は低下していた可能性がある。
この原因の分析には、投打のスタッツ、個別のスタッフを詳細にみる必要があるが、取り急ぎ、2023年の鷹の祭典期間中の打撃スタッツに着目しよう。2023年の「鷹の祭典」期間中の打撃成績は296打数60安打、打率.203。7月30日時点のチーム打率.246を.043下回っている。打てなくなっていることは明らかだ。
私に言わせれば、今年の「鷹の祭典」のホークスの試合をみると、今年のヤンキース打線とどうもダブって見えるのだ。何か重圧がかかったような感じで主力打者のパフォーマンスが軒並み低下し、打線から重苦しい雰囲気が漂ってくる。あえていうと、違いは、ヤンキースタジアムにみられるスタンドから打者個人へのブーイングが、Paypayドームにはないくらいか。
「鷹の祭典」の重い空気の正体、言い換えれば「鷹の災典」の正体は、科学的には何だろうか…??2023年に関しては「打てない」「打線のプレッシャー」が原因に見えるが、詳細はこれからの検証が必要だろう。