「+1.5℃」を超えた…2023年9月の世界の異常な高温
今年の日本の夏が例年にない酷暑だったことは、改めて説明するまでもないだろう。この高温傾向は世界的なとなっている。さらに、例年になく暑かったのは、一般に「秋」のカテゴリーに入れられやすい9月も同じだ。実は、今年の9月は過去の9月と比較して高温ぶりが突出しており、「産業革命前+1.5℃」というCOP27の目標を上回る水準になっていたのだ。
以下が、1991年~2020年の9月の平均気温と比較した、1941年~2023年の9月の平均気温の高低幅の推移である。
21世紀に入ってから上記30年の平均を上回り始めて以降、2000年代後半には平均を上回る傾向が定着した。そして、上記30年の平均と比較したプラス幅は、年による上下はあるとはいえ緩やかな拡大傾向を示していた。この傾向に「異変」が生じたのは2023年だ。9月の平均気温は2023年に入って大きく跳ね上がり、上記期間の平均に比べ0.93℃のプラス幅を示している。このプラス幅は、過去最大だった2020年より0.5℃分大きい。なお、ヨーロッパでは、上昇幅が「+2.51℃」になったとのことだ。
各年の平均気温の年間推移をグラフにしたものが以下だ。破線が、「1850年~1900年の平均気温+1.5℃」の推移のラインである。
3月上旬、6月上旬に一旦この破線を上回った2023年の平均気温は、7月に入ってから、8月の一時期を除きて過去にない高い推移を示すようになった。そして、9月に入ってから、平均気温はこの破線を大きく上回る傾向が続いている。
「1850年~1900年の平均気温と比較した上下幅の推移」に絞って着目したグラフが以下である。2023年における7月以降、特に9月の突出ぶりが目立っている。9月の平均気温は、産業革命前(1850年~1900年)のそれと比べて+1.75℃になったとのことだ。
9月だけを見れば、「このまま産業革命前から+1.5℃を突破」と悲観的になりそうだ。ただし、2023年全体でみれば、世界の平均気温は「産業革命前から+1.4℃」になる見込みだ。2023年に関しては、エルニーニョ現象といった一時的要因も平均気温の押し上げに寄与している。
とはいえ、油断はできない危機的な数字であるのは言うまでもない。2024年は、2023年を上回る過去最高の気温水準になる可能性が高い。
海洋の高温も依然続いている。正確には、上昇幅が加速し、「過去のどの年も寄せ付けない水準」にまでなってしまった。2023年3月中旬になり過去最高となった世界の海洋面の平均温度は、過去最高の状態を続けるばかりか、過去の推移と比較したプラス幅をさらに広げているのだ。この海表面の温度上昇が気温の上昇にも当然関与してくる。
これからすべきことはこれまでも挙げているのできりがない。ただ、昨今の世界情勢に鑑みて一言だけあえて取り上げると、以下の通りだろう。
「侵略戦争などやっている場合ではない」
戦争は最悪の環境破壊、気候破壊でもある。
そして、今年2023年のCOP28は11月30日に始まる。
(参考:以下のBBCの2記事)
Warmest September on record as 'gobsmacking' data shocks scientists
Published 5 October
https://www.bbc.com/news/science-environment-67017021
World breaches key 1.5C warming mark for record number of days
Published 7 October
https://www.bbc.com/news/science-environment-66857354