見出し画像

2024年MLBサイヤング賞投票結果からわかること

 MLBでは、現地時間2024年11月20日(日本時間同21日)に同年のサイヤング賞が発表された。結果、アメリカン・リーグ(AL)ではデトロイト・タイガースのタリク・スカバル投手が、ナショナル・リーグ(NL)ではアトランタ・ブレーブスのクリス・セール投手がそれぞれ受賞した。

 全米野球記者協会(BBWAA)所属の30都市60記者(1都市あたり2記者)の投票により行われるサイヤング賞は、各記者は5人に対して1位票~5位票を投じなければならない。1位票は7ポイント、2位票は4ポイント、3位票は3ポイント、4位票は2ポイント、5位票は1ポイントが与えられ、ポイント数の最も多い投手が受賞する。このシステムの面白いところは、受賞選手に限らない様々な選手の得票傾向がわかり、この結果が各投手の評価のバロメーターとなることだ。なお、ポイント数や投票選手数は異なるが、MVPもほぼ同様のシステムとなっている。

 今回は、2024年サイヤング賞投票結果から、得票選手の分布、実際の成績、チーム・地区別の傾向について分析を行っていく。

 まず、リーグ別の得票結果を以下に示す。

 10人に得票があったALでは、タイガースのスカバル投手が1位票を独占し、満票でのサイヤング賞選出となった。2位票はロイヤルズのルーゴ投手ら5人が分け合っている。全体の3位に、得票が伸びにくい傾向にあるクローザーのクレース投手が入っているのは特筆すべき点だ。日本人投手では、アストロズの菊池雄星投手に1票、1ポイントが入っていた。


 13人に得票があったNLでは、ブレーブスのセール投手が30のうち26の1位票を獲得した、全体2位であるフィリーズのウィーラー投手と合わせた2人が1位、2位票のほとんどを独占しているが、新人王を獲得したスキーンズ投手(パイレーツ)にも2位票は1つ入った。このスキーンズ投手は13の3位票を獲得した。日本人投手では、カブスの今永昇太投手が半分以上の記者から票を獲得し、5位に入った。

 チーム別の獲得ポイント数をみると、ALでは中地区のチームが1~3位を独占、NLでは東地区のチームが1~2位を独占している。

 チーム別の受賞選手数を比較すると、両リーグ合わせ計6チームで複数の選手が票を獲得した。その中で、フィリーズだけが3人の得票選手を有している。

 得票者がいたチームはAL7、NL9の計16チームである。半分以上のチームに得票選手がいたが、ワールドシリーズを戦ったドジャースとヤンキースには得票選手がなかった。

 地区別に得票状況と防御率を比較した。NLでは、防御率が最も高い西地区で得票選手数、ポイント数、チーム数とも最も低位になっている。これは、打者有利と言われるクアーズフィールド(ロッキーズの本拠地)での試合が多い影響もあるかもしれない。ただし、これを除けば、得票状況と防御率にはっきりとした相関は認められない。例えばALでは得票選手が1人しかいない東地区の防御率が、5人を擁する中地区よりも低い数字にある。

 リーグ別のチーム防御率上位5位チームに対する得票状況は以下のようになっている。複数の得票者がいた6チームのうち5チームがチーム防御率でもリーグ5位以内に入っているが、ALではヤンキースが、NLではブリューワーズが、チーム防御率が上位でありながら得票選手がいない。両チームとも規定投球回数に達した先発投手が2人だけで、どの投手の防御率も3点台後半ないしは4点台となっている。ヤンキースではエースのコール投手が故障のため出遅れた影響もあった。計17人の投手がいずれかの試合で先発を務めたブリューワーズではウッドラフ投手が投げられなかった影響があった。

 このように、サイヤング賞得票状況を地区別・チーム別の投手成績と合わせて分析したが、今年活躍した投手を振り返る貴重な機会になる一方で、チーム別、地区別の投手成績とは完全に相関があるといえない。この点もまた面白いところだ。そして、2人の日本人選手が票を得て、特に今永投手は「ナショナルリーグ5位」の評価を得たのは素晴らしい。

まもなくMVPに関しても同様の振り返りを行いたい。

いいなと思ったら応援しよう!