やはり大きかった2022年ヤンキース打線の波:4チーム間の得点分布の比較より
ワールドシリーズ終了からもう2か月経とうとしている中、ずいぶん久々のMLB関連のNote記事になってしまった。
今回のテーマは、打線の安定性。これが課題だったチームの1つが、ニューヨーク・ヤンキースであろう。ヤンキースは、前半戦首位を独走していたものの7月中旬~8月に大失速。この状態の波に合わせ、打線にも大きな波があった感じだ。大量点を獲った試合がたまにあったかと思えば点が取れない試合がいくつも続く。地区優勝を果たしALDSは勝ち抜けたが、ALCSではアストロズに力負けしてしまった。
打線の安定性を示す指標は何か?私が思いついたものは、1試合あたりの得点数の分布である。平均近くに集まっていれば打線の波は小さい一方、ばらつきが大きければ打線の波は大きいと言える。
では、ヤンキースをはじめ、他の主要チームの打線の波はどのようになっているのか?チーム間を比較するとどうなるのか?今回は、以下の4チームに関して、2022年における1試合あたりの得点数の分布の観点から、「打線の波」についてみる。
ヤンキース(NYY)
アストロズ(HOU)
ドジャース(LAD)
ガーディアンズ(CLE)
対象はレギュラーシーズンの162試合で、ポストシーズンは含めない。
チーム別にみた得点数分布は以下のようになる。いずれも、縦軸は試合数、横軸は得点になる。
分布を割合別にみると、以下のようになる。
「2点以下」「3点以下」「6点以上」のくくりにした割合は以下のようになる。
取り上げたチームの平均及び標準偏差は以下になる。
予想通り、ヤンキースの得点のばらつきが一番大きかった。標準偏差は3.79と、4チームの中で最も大きいばかりか、他の3チームとの差も大きくなっている。2番目に大きいアストロズとヤンキースの差は0.50だが、アストロズと一番小さいガーディアンズの差は0.22しかない。
平均得点は、ドジャース>ヤンキース>アストロズ>ガーディアンズの順になっている。ドジャースは標準偏差も小さいことから、ヤンキースに比べ平均得点ばかりか得点の安定性も圧倒的に上回っていたことになる。「2点以下」「3点以下」「6点以上」の割合を比較しても、ドジャースの安定性が際立っている。
2点以下の試合数の割合が最も高かったのはヤンキース(32.1%)で、それに次いで小さいのは平均得点が最小のガーディアンズである。そのヤンキースは、6点以上の割合(37.0%)がドジャースに次いで高い。
最も頻度の高い得点数は、以下の通り。
ヤンキース:2点
アストロズ:3点
ドジャース:5点
ガーディアンズ:5点
平均で2番目のヤンキースにおいて一番頻度が高いのは、なんと2点だ。平均が一番小さいガーディアンズで一番頻度が高いのは、ドジャースと同じく5点だ。さらに、「2点」の頻度が最も高いヤンキースと「3点」の頻度が最も高いアストロズの差が、まさに1点の重みに感じられ、チーム成績の差にもつながったような気がしてならない。この背景には、アストロズの投手陣の強力さも見逃すことができない。
4チームに絞って得点数の分布を比較すると、2022年ヤンキースの打線の波の大きさが、数字上も改めて浮き彫りになった。チームを広げるとどうなるか、時期を絞り込むとどうなるかは、時間があればまた続編で検証してみたい。