拡張後のMLB新球団はどこに?各候補都市のプラスとマイナス
MLBのチーム数が現在の30から32に増加する可能性、すなわちMLBのエクスパンションの可能性がささやかれている。マンフレッドコミッショナーとしては、任期が切れる2029年までに行いたい意向のようだ。
増加する2チームの立地は、ナッシュビル(テネシー州)とソルトレイクシティ(ユタ州)が有力とされている一方、他にも多くの候補地がある。
各候補都市のメリットとデメリットは何か。ESPNにこれをまとめた記事が出ていた。見出し写真はこの記事からの引用で、下記シャーロットの現在のマイナーリーグの球場のものある。
MLB expansion: Potential cities, top locations to land teams
ESPN
Feb 21, 2024, 07:00 AM ET
以下、この記事の内容をもとに、各候補都市の有利な点と不利な点についてまとめてみた。
オースティン/サンアントニオ(テキサス州)
●都市人口2,396,480/都市圏人口5,076,457(いずれも2都市の計)
●考えられる名称:Bats
●有利な点
・NFL、NBA、MLBのチームがない成長中の都市圏。
・アップル、アマゾンなどのテック企業や大企業のコミュニティが大きくなっている・
・2021年創設のMLSチーム、オースティンFCの人気。
・2都市は90分以内。立地次第では球場へのアクセスがさらに近くなる可能性も。
●不利な点
・強力な著名人のサポーターがいない。
(両都市のゆかりのある俳優Matthew McConaugheyが、テキサス大バスケットボールチームのアリーナ建設に尽力したが、MLBに関してこうした人はいない)
・3時間ちょっとの距離にすでにヒューストン・アストロズがあり、ファンベースを作り上げている。
シャーロット(ノースカロライナ州)
●都市人口874,579/都市圏人口21,804,515
●考えられる名称:Aviators
●有利な点
・シンシナティ、ピッツバーグ、クリーブランドといったMLBチームが既にある都市よりも人口が多い。
・NFL、NBA、MLSのチームが既にあり、複数のチームをサポートできる力がある。
・周辺にはNHLカロライナ・ハリケーンズのほか、CWS傘下の3Aのチームで、集客数がマイナー10位を誇るナイツもある。
●不利な点
・立地。MLBは同じ地域に拡張する2チームを置くことを避けたい反面、現状では同一エリアのナッシュビルが優位と言われる。
メキシコシティ(メキシコ)
●都市人口9,209,944/都市圏人口2,756,069
●考えられる名称:Red Devils
●有利な点
・ブラジル・サンパウロと並ぶ西半球最大の都市。
・活気や多様性のある都市で、特に2023年WBCのメキシコ代表の活躍後は野球熱が高い。
・昨年開催されたMLBのゲームSF-SD戦が大いに盛り上がった実績がある。1時間以内にチケットが売り切れた。
・昨年開幕時でMLBロスターの30%がヒスパニック系である。
・野球人気の高いラテンアメリカにチームを置くのは理にかなっている。その候補地として、キューバ、ドミニカ、ベネズエラに比べ合理的だ。
●不利な点
・不安定なメキシコの通貨
・アメリカやカナダに比べ収入が低い。
・高い犯罪率との評判が、FA選手に敬遠される可能性がある。
・アメリカ各都市から600マイル以上離れている。
・標高が7,349フィートで、クアーズフィールドより2,000フィート以上高い。
・雨が多いのにスタジアムに屋根がない。
モントリオール(カナダ)
●都市人口1,762,949/都市圏人口4,291,732
●考えられる名称:Expos
●有利な点
・過去にチームが去った歴史があることから、次の拡張に向けたチーム誘致に向けて誘致運動や準備を進めてきた。球場予定地、新たなオーナー、ファンベースも含め調査が行われ、レポートもある。
・依然として市場規模からは高い候補地の1つである。
●不利な点
・誘致運動や準備を進めるタイミングが悪かった。モントリオールが動いたのはMLBがチーム拡張を真剣に考える前だった。
・一旦この誘致活動は、レイズがタンパベイとモントリオールの2都市を本拠地とする案で半ば成功したかに見えた。しかし、この案は2022年にMLB機構に否定された。
・チームが去って四半世紀経った今、モントリオールにチーム誘致の熱意がどこまで残っているかが問題。
ナッシュビル(テネシー州)
●都市人口689,447/都市圏人口2,046,715
●考えられる名称:Stars
●有利な点
・(記者による)MLBエグゼクティブとの話では、2都市のうちの1つがナッシュビルになる可能性が高いということだった。
・既にNFLのタイタンズやNHLのプレデターズがある上に、人口も大きく伸びている。
・スポーツに熱い土地柄。タイタンズの新スタジアム建設費用21億ドルを地元のリーダーが出資したばかり。
●不利な点
・シンシナティ、セントルイス、アトランタにとっては自都市のチームのファンを奪われる恐れを感じるかもしれない。
オーランド(フロリダ州)
●都市人口307,573/都市圏人口2,764,182
●考えられる名称:Dreamersないしはディズニーに関連した名称
●有利な点
・1989年以降NBAマジックが本拠地を置いている。
・クリーブランドやシンシナティといった既にMLBチームのある都市よりも人口が多い。
・同じ州のマーリンズやレイズの経験からの学びが生きる。スタジアムに屋根をつける、家族でのドライブの最終目的地に活用するといった使い方だ。
●不利な点
・同じ州のマーリンズやレイズが集客に苦戦している歴史がある。そのため、フロリダ州に3番目のチームを置くことを不快に思うエグゼクティブもいるかもしれない。
ポートランド(オレゴン州)
●都市人口652,503/都市圏人口2,509,140
●考えられる名称:?(地元はとりあえずペンディングすることに決定)
●有利な点
・MLBが西海岸にチームを置きたいと考えるなら最有力。
・4大スポーツのうち1つしかチームのないアメリカ最大のマーケット。
・サッカーチームTrail Blazers(MLS(男子)、NWSL(男子))はチケットが売り切れるほどの人気。
・MLBが8ディビジョン、4チーム/ディビジョンで再編成するなら、マリナーズと同じディビジョンにしてライバルチームとして盛り上げることができる。MLBはライバル関係の対戦を作りたがっている。
・顧客データ。既に75,000人のメーリングリストを持ち、うち3分の2以上がシーズンチケットを買う意思がある。
●不利な点
・誰がオーナーとなるかがわからない。何百万ドルを持つ投資家もいて、不動産契約が確定した時点で初めて公表する予定とのことである。
ラレー(ノースカロライナ州)
●都市人口467,665/都市圏人口1,484,338
●考えられる名称:?
●有利な点
・誘致運動は地元コミュニティが始めたものである。
・州知事が支持を公言。
・オーナー候補が既にいる。
・エリアの人口が急増中。DurhamやChapel Hillを含む三角形状の都市圏人口は210万人。またこのエリアは、MLBチームのない都市圏では最大の人口を擁する。
・州にはトップ50に入るTVマーケットが2つあり、州の人口はテネシー州やユタ州よりも多い。
●不利な点
・アメリカ東部ではすでにナッシュビルが有力候補。
サンノゼ(カリフォルニア州)
●都市人口971,265/都市圏人口1,938,524
●考えられる名称:Spirit、Bees、Sol、Innovatorsなど。ただしまだブレーンストーミングの段階でしかない。
●有利な点
・ベイエリアは2つの野球チームをサポートできる力がある
・サンノゼはオークランドの4倍の人口があるベイエリア最大の都市。世界最大のテック企業が立地し、年間4,000億ドルのGDPを生み出すシリコンバレー内に位置する。
・サンノゼへのBART(高速鉄道)の延伸計画もある。
・言い換えれば、大きな収益機会のある都市だ。
●不利な点
・サンフランシスコ・ジャイアンツの保護区域にあり、新たなMLBチーム立地の障壁になっている。10年前アスレティックスの移転がささやかれたときにこれを除外しようとサンノゼ市は訴訟を起こしたが、敗訴した。
ソルトレイクシティ(ユタ州)
●都市人口199,723/都市圏人口1,266,191
●考えられる名称:Bees、Buzz、Gulls、Stingers、Pioneers、Bison、Outlaws、Saints、Cutthroats
●有利な点
・冬季オリンピック開催の実績。また立候補を検討している。
・官民連携による大規模なコミュニティ活性化プロジェクト実施の実績がある。
・Big League Utahの創設による活発な誘致活動。地元企業のCEOによれば、「急成長中の最も若い州で、コミュニティの力でいつでも新球場の建設にとりかかれる。経験や実績のあるオーナーシップがあり、野球に熱い」とのこと。
●不利な点
・マーケットの小ささ。スポーツコミュニティの熱心さがこれを克服できるかが鍵。
・議論が進めば、意思決定者に「ただ成長しているだけではない」と確信させる必要がある。