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2024年MLBのMVP投票結果からわかること

 MLBでは、現地時間2024年11月21日(日本時間同22日)に同年のMVPが発表された。結果は、もう日本でもすでに報じられている通り、アメリカン・リーグ(AL)ではニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が、ナショナル・リーグ(NL)ではロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手がそれぞれ受賞した。
 全米野球記者協会(BBWAA)所属の30都市60記者(リーグ別に、本拠地のある1都市あたり2記者。1リーグあたり30記者)の投票により行われるMVP選出に際し、各記者は10人に対して1位票~10位票を投じなければならない。1位票は14ポイント、2位票は9ポイントが与えられる。3位票以降は順位が下がるごとに1ポイントずつ下がり、3位票は8ポイント、10位票は1ポイントになる。ポイント数の最も多い選手が受賞する。サイヤング賞投票でも取られているこのシステムの面白いところは、受賞選手に限らない様々な選手の得票傾向がわかり、この結果が各投手の評価のバロメーターとなることだ。
 今回は、2024年MVP投票結果から、得票選手の分布、実際の成績、チーム・地区別の傾向について分析を行っていく。
 まず、リーグ別の得票結果を以下に示す。

 19人に得票があったALでは、ヤンキースのジャッジ選手が1位票を独占し、満票でのMVP選出となった。2位となったロイヤルズのウィットJr選手は、2位票のすべてを独占した。3位票の7割はヤンキースのソト選手が占めた。換言すれば、7割の記者が「1位ジャッジ、2位ウィットJr、3位ソト」の組み合わせで3位までを選んでいたこととなる。3位~5位票のほとんどは、ソト選手のほか4位ヘンダーソン選手(オリオールズ)、5位ラミレス選手(ガーディアンズ)が占めている。票が割れだすのは6位票以降になってからである。得票選手のうち投手は4人だった。

 ALより4人多い23人に得票があったNLでは、ドジャースの大谷選手がすべての1位票を獲得し満票での選出となった。2位のリンドーア選手は、2位票のうちの7割以上を獲得している。ブレーブスのセール投手にも2位票が入っているのが特徴だ。ALに比べて全体に票のばらつきが大きい。得票選手のうち投手は4人だった。

 チーム別の獲得ポイント数をみると、ヤンキース、ドジャースといったMVP選手を輩出しかつワールドシリーズを戦ったチームが両リーグの1位となっている。また両リーグともベスト5のうち4チームがポストシーズン出場チームである。

 チーム別の投票獲得者数を比較すると、5人のパドレスが最も多く、4人のドジャースがこれに次ぐ。3人の得票獲得者がいるのは、ブリューワーズ、フィリーズのほか、ALでは唯一のアストロズとなっている。両リーグとも、投票獲得者がいるのは11チームで、すべてのポストシーズン進出チームが該当する。

 サイヤング賞投票での得票獲得状況と照らし合わせると、両リーグともMVP投票の得票を獲得しながらサイヤング賞投票の得票がなかったチームが4チーム存在する。その中には、ワールドシリーズを戦ってMVPを輩出したヤンキースとドジャースが含まれる。サイヤング賞投票の得票がありながらMVP投票の得票がなかったチームは、カブス、カージナルスといったNLの2チームである。そして、NLのパイレーツは、いずれかに得票のあった選手は、サイヤング賞・MVPのいずれの票も獲得したスキーンズ投手1人だった。同チームにはMVP投票の得票を獲得した野手はいない。
 MVP、サイヤング賞とも得票獲得者がいなかったチームは以下の通りになる(略称で表記)。
AL東:レイズ  AL中:ツインズ、ホワイトソックス AL西:エンゼルス
NL東:ナショナルズ、マーリンズ NL中、NL西:なし

 地区別に得票状況(全体、投手除く)と打率、OPSを比較した。ALでは、得票選手数、ポイント数(得票獲得者は全員野手)とも最も多い東地区が、打率、OPSとも最も高くなった。NLでは、投手を除いた得票選手数、ポイント数、チーム数が最も多い西地区の両指標の数値が最も高かった半面、投手を除いた得票選手数、チーム数が最も少ない中地区の数値が最低だった。NLでは投手を除く得票状況と打率やOPSの数値にある程度の相関が認められた。

 リーグ別のチームOPS上位5位チームに対する得票状況(投手を除く)は以下のようになっている。

ALでは5チーム中4チームに複数の投票獲得者がいるが、5位のツインズは誰もMVP投票を獲得しなかった。NLでは4人の得票者(投手を除く)がいるドジャース、パドレスがベスト5にランクインしている。そして、MVPを輩出し、ポイント数も最も多いヤンキースとドジャースが、両リーグのチームOPS1位ともなっている。

 ここまで、MVP得票状況を地区別・チーム別の打撃成績と合わせて分析した。すべての得票獲得選手を振り返ることは、今年活躍した選手を振り返る貴重な機会になって面白い。MVPの得票とチーム・地区打撃成績の相関は、サイヤング賞の得票とチーム・地区投手成績の相関に比べて若干高いようにみえる。この原因としては、野手に比べて投手の方が通年での活躍が難しくなっている点があるのかもしれない。
 2025年はどの選手、チームがさらに得票を増やしていくのだろうか。そして、大谷対ジャッジの「対決」は?大谷選手のサイヤング賞との「両取り」は?アクーニャJr.選手ら故障に泣いた選手の巻き返しは?CINデラクルーズ選手はいよいよトップ3に入るのか???いろいろ楽しみがある。

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