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そしてまた、あのfuzzのロゴの入ったシャツに。【執筆者:橋本るみ】

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2024年9月6日は、fuzzカップ関西ベスト64の放送対局の日でした。

普段ならお仕事の日ですが、半休を取り、スタジオに向かう前に心斎橋のヘアサロンへ。いつもお世話になっている美容師さんにヘアセットをお願いします。顔を抜かれた時にカメラに映りやすいよう、編み込みは左側に入れて、ヘアアイロンでふんわりと全体を巻いてもらいます。

9月といえどもまだまだ暑いので、今日ぐらいは少し贅沢してもいいかなと、御堂筋に出てタクシーを拾います。行き先は難波にある「雀サクッ!」のスタジオ。後部座席に座り、ハンドバッグからコンパクトを出して、お気に入りのリップを塗り直します。大丈夫、私、緊張なんかしてない。良かった、いつもの私だ。

スタジオに入り、まずは対局者の皆さんと実況解説のお2人にご挨拶。そしてfuzzのロゴの入ったシャツを羽織り、飲み物はもちろんピンクイオン。さあ、対局室の椅子に座って、意気込み動画の撮影です。カメラには、にっこり笑顔の私が映っています。勝つたびに更新されていく、今年1番の笑顔です。

「22期後期の橋本るみです。初めてのfuzzカップへの挑戦で、ついにベスト64まで勝ち進むことができました…」



残念ながら、ここまでに書いたことは全て、実現しなかったお話です。

ベスト64の卓には、私のネームプレートはありませんでした。

ベスト128の放送対局で敗退したからです。

リアルワールドの2024年9月6日の私は、朝から夜まで仕事をしていました。
残業もあり、ようやく仕事を終わらせる頃にはくたくたで、夕食のメニューを考える元気も夕食を作る気力もありませんでした。仕方なく、帰り道でお弁当を買いました。
自宅の最寄駅で地下鉄を降りたときから、やたらとパンプスの靴擦れが気になります。マンションに辿り着き、重い身体でエレベーターに乗り込みます。
ふと、エレベーターの中の鏡を見ると、そこには仕事用のトートバッグとお弁当の入った白いビニール袋を提げた、「いつもの」私が映っていました。

「ああ…私、fuzzカップ負けたんだな…」


仕事のスケジュールなど、色々な事情があり、私の出ることのできる公式戦は限られています。
その中でも特に楽しみにしていたfuzzカップ。赤アリのルールも好きですし、勝ち上がるたびに放送対局に出ることができます。
私にとって、これは経験を積むことのできるまたとないチャンスでした。

私は今年、初めてのfuzzカップへの挑戦で、関西一次予選、二次予選を勝ち抜くことができました。
赤牌が自分の手元に来るたびに、牌を横に曲げてリーチ棒を出すたびに、少しずつチャンスが私のところに近づいてきてくれている。
そう感じながら麻雀を打っていました。

でも、やっとの思いで掴んだチャンスを、貴重な放送対局のチャンスを、私はわずか2半荘で手離してしまったのです。
自分の下手な選択のせいで。
押しきれなかった弱さのせいで。


私が出場した、関西fuzzカップベスト128 B卓。


1半荘目の南2局。私は西家で17000点持ちのラス目。
東をポンして、筒子の混一色の一向聴。
ただし、赤5pこそ手の中にありますが、テンパイする時の入り目や選択によっては、ドラ8pを切って3900になってしまう仕掛けです。

そこに持ってきたのが3m。
親番のつばきプロは8mをポンして萬子の染め手模様。3mは親の河にある6mの筋です。しかし今から思えば親の仕掛けに対して、果たして私の手にどこまで価値があるのか。
「今日、私まだ1回も和了できていない…」そんな焦りもありました。

後から動画を見返しても目を覆いたくなるような速さで私は3mを切り、12000の放銃になりました。

こうして1半荘目は3着だった私。2半荘目はなんとしてもトップが欲しいところ。

東4局、私は親番。31700点のトップ目に立ってはいますが、他家との差はまだまだ小さい状態。
ここでつばきプロからリーチが入ります。

自分の手にリーチ者の現物は7pのみ。
ここで降りを選択すれば自分の手が崩れてしまうだけでなく、次巡以降に安全牌がなくなる可能性があります。
現物の7pを切り、放銃はしませんでしたが、結局4000・8000の親被りになってしまいました。
ただ、せっかくの親番。和了りを得られたかはわかりませんが、真っ直ぐ手を進める選択肢もあったかと思っています。
そして、その方が後悔が無かったとも。


少し冷たくなったお弁当を食べながら、fuzzカップベスト64を観戦しました。
花火が爆発するかのように和了りを連発したサヴェ松田プロ。そして少し照れたような笑顔のHISA加藤プロ。
激戦を勝ち抜いた2人のプロを祝福しつつも、
「あの場で打ちたかった」
「もっと戦いたかった」
そういう気持ちが心の中に湧き上がってきました。

私の今年のfuzzカップは、あっという間に終わってしまいました。
今回のチャンスは途絶えてしまっても、自分の歩みは止めたくありません。

私が思っていた以上に、多くの方が私の対局を見てくださっていました。中には、助言をくださった先輩方もいらっしゃいます。
そういった先輩方のおかげもあり、自分がまだ出来ていないところや、自分の不十分なところを改めて見つめることができました。
負けたからこそ、得られたものもあったのです。

今度こそ、一歩でも先に進めるように、日々の頑張りを積み重ねていきたいです。
そしてまた、あのfuzzのロゴの入ったシャツに袖を通したいです。



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