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降級がちらつく【執筆者:須田良規】
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さてさて。
楽しい話ではない。
協会noteの一発目。
何かわくわくするような、心を踊らせるような素晴らしいアガリでも取り上げるべきなのかもしれないけれど。
しかし、今これを書かねばならないのだ。
その理由はこれである。
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2024年9月14日時点のA1リーグ。全10節の戦いである。6節消化組と7節消化組がいるが、私は7節終わっていてあと12半荘。
今期より下位3名が降級となり、私自身が△317.0ptの15位だ。
こうなった経緯はともかく、今の心境というものは今しか持ちようがないし、書け残せない。
リーグ戦は、毎年降級する者がいる。
それはどこの団体だって、どこのリーグだってそうだ。
しかし、例えば最終節に大きく沈んで、ふいにその日に降級が決まった者は、そこまでの日の過ごし方にそう心的ストレスはない。
では、今自分がどう思って日々を過ごしているか。
降級がはっきりと目に見えてちらつく日常を。
それはきっと書いておいていいと思う。
9月9日(月)に第7節があって、私は2・4・4・4の成績。
開始時点では△202.3のポイントで、もう負けられない、しかし100勝てば、せめて50勝てば・・・と思いながら望んでいた。
いや、降級するときはこういうものなのだ。
毎回、100勝てば、50勝てば、景色は変わると思いながら対局に入る。
そしてそれがずっと叶わなければご覧の泥沼になるわけだ。
もちろん、自分にとって巡り合わせの悪い偶然は多く起こってはいるようには見える。
もう少し良い偶然が起きないかな、と身勝手に願ったりはする。
その日の2回戦オーラス、私はラス親でこの配牌。
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無残なる9種10牌。やってもいいかわからぬ、しかし成就すれば世界の逆転する、後戻りの利かない道を選ぶ。
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そしてやっとの思いで親国士をテンパイするも──、
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この局は供託が2本になっての真田槐の1000点アガリ。なんと私は23400点持ちのラスに落ちてしまう。
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これでも、ダメだったかと──、またラスかと。
49歳のバカみたいな中年が、泣けてきてしまう。
ポイントのない状況で、さらにラス。
出口が彼方にある暗がりで、その光がさらに遠ざかるこの絶望感を、どう表せばいいものか。
ただ。
不遇を憂えたところで、選手に成長も未来もない。
しっかりと、選択の拙さだって間違いなくあるものだ。
たとえばこのシーン。
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3回戦の南1局、西家でドラ1m。チートイツドラドラのイーシャンテンで、打8pとしたところ。
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対面真田の親リーチ一発目でテンパイ。
2pも3sも通ってないしどっちも待ちいいわけじゃないしどうすんだよこれ・・・などと考えている。
両方通していい単騎待つか──?いやそんな牌だいたいあるのか?
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3s単騎でリーチ。
いっそ曲げた方がマシかと、
真田の宣言牌が6pなので真裏で通しやすい2pを切っての3s単騎。
6sは切り飛ばしているし、6sが真田にも通ればアガリもあるか。
6400が拾えてもトップは遠いのだ。
しかしこれは結局流局。
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希望通り6sを真田がすぐツモ切ってくれたが、トップ目の堀慎吾も人を食ったように3s単騎でテンパイ。全員テンパイに終わる。
このときの解説が矢島亨で──。
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矢島は、対局後私に、
「4巡目に8pを切ったのがダメだった」
と歯に衣も着せず言った。
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ここ。ここなのか。
「1pと9pが他家に切られていて、チートイツの候補としては2pも8pも捨てがたい。ソーズに関してはわからない。
1mが1枚すでに出ているし、マンズのイーペーコー目も難しいので、
そういった中途半端なメンツ手の天秤を引っ張るよりは、
もうチートイツに決めて3sあたりを切る。
そうすると──」
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「この8pでツモアガってたろうね」
そう、確かに中途半端なメンツ手の形を残して、私は8pを切っている。
しかし、それにしても──。
ストイックで、厳しい視点だなと思った。
これは、とても小さなことかもしれない。
実際このとき残っている枚数など明確にわかるものでもない。
しかし、9pを第1打に切っている堀の手に、確かに8pはなかった。
3sは4巡目の段階では山に2枚。8pは3枚丸生きではあった。
麻雀は、こんな小さな差の積み重ねであることは間違いない。
人によっては見過ごされがちな選択に思える4巡目を、はっきりとダメだと言える矢島は、素晴らしい慧眼の選手だと思う。
この半荘はラス。
そして続く4回戦目。
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南2局、全員団子で私は南家。下家の田幸浩が早々に1mポン南ポン。
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私は自身2巡目、田幸の上家で少考。
田幸はマンズ染めかトイトイか──。
9mはどちらにしても下ろしにくいし、ツモ7m8mなどはまだ受け入れたい。
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とりあえずは形を保っての打9p。
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下家の田幸は、すぐツモ4mでイーシャンテン。
1枚切れの打中だ。
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次巡、私はツモ8s。ソーズのイッツー目が出来る。
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1mポン南ポンの田幸には鳴かれにくそうな打1m。
9mはまあ・・・トイトイでポンされるのは嫌だな。
ホンイツならそうネックになる牌でもないし、
まだ7m8mを使えるようにしよう。
自身3巡目だし──。
などと呑気に思っている。
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すると田幸はドラの3mを埋めてテンパイ。河に今中・西と切ったところ。
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すぐの自分。田幸がションパイの西を切ってきたか──、と見ている。
自身4巡目。
8sが重なったところで、急ぎ気味に9mを切った。
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「ロン──」
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──!
ぬるいか。
ダメか。ダメだったのかと。
はっきりと今テンパったのがわかるマンガン。
拮抗した点棒状況での、完全にラスに抜け落ちる放銃。
「9m持ちすぎ。4巡目だろうが中・西と手が進んでいるからね」
これも後に矢島がはっきりと諭す。
早い放銃に対する慰めなどしない。
1巡でも先に切るべきだったと。
自分ならそうしたと。
言ってくれる選手がいるからこそ、
相手のアガリを羨んだり、自身の境遇を嘆いたり、
そんなつまらない精神にならないでいられるのだ。
この日はこれで3連続のラス。
完全に降級が見えてくる。
しかし、自分の不甲斐なさと向き合うことも、矢島のストイックさに感心することも、
それは競技麻雀人生の彩りなのだ。
この日以降、毎日気持ちは重い。
正直なところは無論そうだ。
一般の方からすれば、奇妙なものかもしれない。
A1にいるからといって、何がいいというものではない。
特に私などは、例えばMリーガーのような華々しい舞台を目指しているわけでもない。
誰だって、降級はする。鈴木たろうだってした。
こんな風に、日々の心を蝕んでいくほどに、何を背負っているのか。
なんだろうね。自分でもわかりはしない。
私は13期に1回A1から降級している。
A2に3年いて、A1に戻って来た経験がある。が、楽に達成できるものでもない。
23年目、積み上げたものが崩れることに喪失感があるのだろう。
客観的に分析すれば、感情はそんなところだ。
ただ─、今期の状況そのものを、語弊はあるが、楽しんでいることも間違いはない。
降級は濃いが、とりあえず残り3節の目標としては200ばかり勝ってマイナスを100程度までにし、
誰か二人近辺に落ちてくるのを祈るのが現実的だとは思う。
やることがないわけではない。
その目標も、
負けの内容を振り返ることも、
現在の沈む感情も、
そしてそれを押し殺して努めて明るく振る舞うことも。
全てが、降級の瀬戸際にしかない貴重な経験で。
楽しくはない話ではあるが、楽しんだっていいのだろう。
(ここまで読んでくださってありがとうございます。
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まだ協会でも始めたばかりで、会からの原稿料はありませんので、
「面白かったよ」「次がんばれよ」
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