放送対局初体験【執筆者:今田孝志】
決してそれだけが目的なわけではない。
勝てば自然な形でついてくるものだと思うが、それが先にくるわけではない。
でも周囲がどんどん卒業していくと、焦る気持ちは禁じ得ない。
だっていざという時、メチャクチャ緊張して大失敗しちゃうかもしれないじゃない?
そうならないためにも、できれば早めに済ませておきたい。
プロ歴2年になると、同期もほとんど経験済(のように感じてしまう)で、自分だけ取り残されたような気になってくる。
後輩だってどんどん経験していく。
ずっとできなかったらどうしよう。
放送対局未経験の人の気持ちってこんな感じかと思うがどうだろう。
私はこうだった。
下世話な比喩が思い浮かぶが、自己規制。
振り返ってみればプロ入りして半年後の入会後研修のとき、採譜の研修でたまたま一番最初に打つ役をやった。
2巡、3巡普通に打ったが、ふと同期のプロたちが後ろにズラッと並んで私の麻雀を見ていると思うと緊張してきた。
よりによってストレートに進行するか手役を狙いにいくか判断が難しい手で、みんなが私の判断を見ていると思うと、怖くなった。
「それポン」
私の緊張は講師として私の後ろに立っていた黄河のんさんの声で破られた。
(え? それ、タンピン三色イーシャンテンの雀頭なんですけど)
(というか卓外からポン?)
「普段の雀風は別として、採譜の練習だから鳴いていかないと。ほらポン!」
「・・・ポン」
しぶしぶポン。
緊張の中、なんとか三色にしたのに。
はじめはこの程度でも緊張していてとても放送に耐えられそうになかったが、たった2年だが多少は場数も踏み、(合っているかは別として)これが自分の麻雀だと、お見せできるかなと思えるようになってきた。
そして冒頭の気持ちになってきた。
早く卒業したい。
新人王戦もfuzzカップも駄目で、もう放送対局だけを目的にしたガツガツした気持ちでスリアロチャンピオンシップ9月度に申し込んだ。仕事は有給を取った。
40人中8人が準決勝進出。
準決勝は奇数順位が放送卓。1・3・5・7位だ。
決勝はもちろん放送卓。
放送卓率は6/40で合ってるかな? 悪くない確率。
1回戦3万点超の3着。
2回戦2着。
3回戦は安全圏の抜けたトップだと思っていたら、リーチ棒が出ての三倍満ツモ条件をクリアされて2着(リーチ・ツモ・嶺上開花・ホンイツ・發・西・ドラ5)。
どうもいまいちな展開で、ギリギリ4回戦に残れたくらいだったが、もちろん決して諦めない。
優勝じゃなくていい。8位、いや7位でいい。
なんとか放送対局の舞台に!
溢れ出る情熱をなんとか抑え込んで臨んだ4回戦で大トップを取り、結果を確認したら総合3位。
3位!
3は2で割り切れない!
ミッションクリアである。
オープニングはメチャクチャ緊張した。
新人研修の時に同期には話したが、私には吃音がある。
吃音はいろいろな出方があるが、私の場合は突然ある単語が発声できなくなってしまうタイプ。
つっかかるのではなく(つっかかりもするが)、とにかく単純に言葉が出ない。
普段の会話では、日常的に言い換えを多用している。だからそんなに支障はないが、とにかく苦手なのが名前を言わなきゃいけないシチュエーション(決められた言葉を言うのが苦手)。
名前を聞かれて黙り込むのは明らかに変な空気になるので避けたいが、どうしようもない場合がある。そういう時全身に嫌な汗をかく。
あと点数申告も緊張している。
「1600」の「セ」が出なかったことがある。
符ハネがわからないわけじゃない、と心で叫んでいた。
という事情もあり、しゃべるのが苦手だ。
スリアロチャンピオンシップの実況は、松田麻矢さんかようへいさんが務めることが多いのだが、この日は松田麻矢さんだった。
これは私にとってかなりラッキーだった。
お2人は選手の呼び込み方が異なっている。
松田麻矢さんver.
「第3位は+78.9ポイント。日本プロ麻雀協会所属、今田孝志さんです!」
ようへいさんver.
「では第3位の方、自己紹介をどうぞ!」
松田麻矢さんver.だと名前を言わなくていいので、格段に気が楽だ。
控室に入ってきた松田麻矢さんを見たときにはものすごくホッとした。
なおようへいさんが選手に名前を言わせるのは、緊張の中しゃべらないといけない選手を気遣って、最も簡単な「自分の名前」をまずしゃべってもらって緊張をほぐす、という意味があるとおっしゃっていた。単に私に当てはまらないだけで素晴らしい配慮とプロ意識だと思っているので、念のため。
というわけでツイてはいたが、メチャクチャ緊張はしていた。
どれくらいかというと、松田麻矢さんが質問を少なめにする程度にはあからさまに緊張していた。
ご配慮ありがとうございました。
さて肝心の放送対局初体験だが、こっちは全然緊張しなかった。
普段も対局中に指が震えることがたまにあるがそうしたこともなく、手順も押し引きもいつも通り、条件もちゃんと追えていた。
リーチ判断だけ「これをダマは弱気とか言われちゃうかな?」という邪念がよぎったが、まあそれくらい。
結果はラスで残念だったが、放送じゃなくてもラスだったはずだ。
(他の人だったらラスじゃない可能性はある)
供託5本になった南1局2本場の6-9s待ちは山にたくさんいたのにアガれず、そこが勝負所だった。
他は見返すと待ちが山にいないパターンが多く、オーラスの魂の見逃しも、山にいなけりゃツモれない。
リーチ後のツモ切り牌が見えていなかったことは反省。位置が上過ぎて映ってなかった。
というわけで私の放送対局初体験は終わった。
感想は、
気持ちよかったぁ。
是非また、今度は決勝の大きな舞台で体験したい。
【ポン太からの一言】
やあ!ボクは日本プロ麻雀協会note公式キャラクターのポン太だワン!🐶✨最初の緊張感や焦る気持ち、すごくリアルだったワン!でも最後には「気持ちよかったぁ」って言えるの、本当にカッコいいワン👏💪
吃音の話も感動したし、それでも堂々と放送対局をクリアした今田さん、本当に尊敬するワン!次も応援してるよ~📣
有料記事の収益は70%が執筆者さんに還元されるんだワン!面白かったら、ぜひサポートしてね!🐾
ここから先は
¥ 200
サポートは執筆者に直接還元されます! 記事のタイトルかサポートしたい執筆者名を書いてサポートいただければ幸いです!