コンピュータクラブハウス加賀 サポーターインタビュー#01 及川卓也さん編
コンピュータクラブハウス加賀をサポートしてくださる方に、その想いをみんなのコード代表の利根川裕太がインタビュー。第一弾は、MicrosoftやGoogleでエンジニアやプロダクトマネージャーを歴任し、現在はTably株式会社 代表取締役 Technology Enablerの及川卓也さんにお話を伺いました。
及川卓也さん 略歴
大学を卒業後、外資系コンピューターメーカーに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、その後、別の外資系企業にてOSの開発に携わる。その後、3社目となる外資系企業にてプロダクトマネージャーとエンジニアリングマネージャーとして勤務後、スタートアップを経て、独立。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。2011年の東日本大震災後に、災害復興支援や防災・減災にITを活用する活動を開始。Hack For JapanおよびIT×災害コミュニティ、一般社団法人情報支援レスキュー隊の共同発起人。
思う存分テクノロジーに没頭できる施設、コンピュータクラブハウス加賀
利根川 今、私たちは、石川県加賀市で「コンピュータクラブハウス加賀(以下クラブハウス加賀)」という、子ども向けのテクノロジー施設を運営しています。ここでは、学校でのプログラミング教育だけでは物足りない子から、既存の学校教育にはなじめないような子まで、さまざまな子どもたちがテクノロジー活動に思う存分没頭できます。
及川さん 具体的に、クラブハウス加賀を訪れる子どもたちはどんな子たちなのでしょか?
利根川 ユニークな例でいうと、小学生にもかかわらずオブジェクト指向を理解している子や、クロマキー合成など大人顔負けの技術を使って動画編集している子、ディスレクシア(識字障害)であることから、学校では自信を失っていた子がパソコンの改造やレゴマインドストームEV3でのロボット作りなどを通じて、自信を取り戻し始めたりと、運営を開始して約半年で手応えが出始めています。
及川さん それは素晴らしい!
▲ネット会議でインタビューにご協力いただいた及川さん(写真左)と代表の利根川(写真右)
今の画一的な教育ではない、一人ひとりの個性を大切にする点に共感
利根川 及川さんには、クラブハウス加賀のオープン前からサポートいただき、今年も「ふるさと納税というカタチで、クラブハウス加賀をサポートしていただけないか」とお声がけしたところ、すぐにご快諾いただきました。それだけではなく、このインタビューも二つ返事で引き受けていただきました。私たちの活動のどういう点に共感していただけたのか、教えていただけますか。
及川さん 以前より、みんなのコードの活動は知っていましたし、プログラミング教育や、子どもたちのクリエイティビティを伸ばす教育の必要性も感じていました。来年度から小学校で始まる「ブログラミング的思考」だけの授業では足りないと感じていたし、不安もありました。そんな中、みんなのコードがプログラミング教育の普及やクラブハウス加賀の企画・運営を行っているという話を伺って、継続的に支援していきたいと思っていました。ふるさと納税についても、今年も躊躇することなくご協力することにしました。
利根川 ありがとうございます!
▲及川さんには、昨年のコンピュータサイエンス教育普及活動「What will you create ?(あなたは何を創る?)」にもご協力いただき、子どもたちに素敵な動画メッセージをいただきました。
及川さん クラブハウス加賀の活動を改めて伺うと、非常に重要なことに取り組まれているなと感じています。例えば、学校に馴染めない子、学校では環境がなくて没頭できない子。これらの子に手を差し伸べるのは、本来はすべての教育のあるべき姿です。興味のある分野、掘り下げたい分野は、人それぞれ違うはずで、その理解能力も人ぞれぞれ違います。
私は、プログラミング教育やSTEAM教育を本当に推進しようと思うと、今の画一的な教育では無理がでてくるのではと思っています。そのような中で、クラブハウス加賀が、一人ひとりの個性を大切にしてプログラムを設計されている点は、素晴らしいと思います。
実は問題児だった?小学校での現体験が及川さんの個性を伸ばすきっかけに
利根川 ありがとうございます。及川さんが、画一的な教育には限界があると思われたのには、何か現体験でもあったんでしょうか?
及川さん 私自身が幼稚園の頃から問題児だったんです(笑)。小学校時代も、少しませていて「学校の授業が簡単で授業がつまらない」なんて、ほとんど聞いていなかったんです。
当時のエピソードで、ある日、口笛が吹きたくて家で練習していたんです。できるようになったら、どんどん吹きたくなって、授業中も吹いていたんです。そうしたら、さすがに先生に怒られて、廊下に立たされてしまった。そのうち、廊下に立っていても先生がなかなか見にこないので、飽きて家に帰ってしまったんです。
家に帰ったら、当然学校からも電話がかかってきて、母親から「何やってるの」と怒られて、そのまま学校に戻されたという。そのあと、小学校4年の時に、よい先生とめぐり会うことができて更生できました(笑)
そんな中でも、私の母親が幼児教育の専門家であったことも影響してると思うのですが、私に対して「この子は異常じゃない、これはこの子の個性だ」といってくれて、学校とも戦って守ってくれたんです。
利根川 その時の、及川さんのお母さんは素晴らしいですね。私も子どもをもつ親ですが、なかなかそこまではできません。
及川さん 小学校の時って、ホントはみんな強い個性をもっていると思うんです。それをつぶすか、伸ばすかによって、その後の人生が大きく変わるんじゃないかと思います。今だと、私みたいな子がいると、親も学校も心配したり、周りからもいろいろといわれて、病院に連れて行ったりするんじゃないかな、と。
今の時代、何が正常かなんてわからないと思うんです。昭和の時代から、個性をつぶして平均化する教育がずっと続いていて、それがますますひどくなってきている。けれども、世界を見渡せば、それぞれの個性が融合して素晴らしいものが創りあげられている。そう考えると、今クラブハウス加賀でやっている、個々を大切した教育って、非常に重要なのではないかと思っています。
未来の及川さんを目指す子どもたちへのメッセージ
利根川 なるほど!もし当時の及川少年が、クラブハウス加賀にきたら、どんなことをやりたいと考えたと思いますか?
及川さん 私は、小さい頃、すごく工作が好きだったんです。小学校のころは、ラジオを作ったりと電子工作にはまっていて、電子工作キットを買ってきてよく組み立てていました。また、父親が技術者だったこともあって、既成品のおもちゃを買い与えるんじゃなくて、オリジナルなものをつくって与えてくれてたんです。
その影響もあったから、パソコンやソフトウェアなんて当時は一般的ではなかったけれど、もしあったならば、ソフトウェアを組み込んだ電子工作をやってたんだろうな、と思います。
利根川 なるほど。当時から今を彷彿とさせるクリエイティビティを発揮していたんですね。今、クラブハウス加賀には、未来の及川さんを目指す子どもたちが大勢きています。そんな子どもたちに、アドバイスがあれば、お願いします。
及川さん あんまり大人のいうことをきかなくていいと思います(笑)。あれやれ、これやれという具体的な指示をいちいち聞かなくてよい、という意味です。私が子どもの頃って、まだコンピュータってあちこちにあるものではなかった。実は、私の父親は、私が電子工作をやるのをあまり賛成していなくて「男の子は外で元気よく遊んでこい」とか、「それであれば勉強しろ」と言うような人だったんです。
今考えると、彼には、その後に訪れるコンピュータの未来なんて見えていなかったと思うんです。大人に見えている世界と、今の子どもたちが大人になった時の未来って、絶対に違う。大人がいう、これは役に立つ、役に立たないは、今は気にしなくていい。
むしろ大事なのは、いろいろなことに興味を持ち、興味をもったことを自分自身で学んでいくほうが重要なんです。大人に、こんなことをやってていいのとか、こんなことは社会に役立たない、といわれても気にせずに、自分が興味のあることを勉強していく、深堀していくといいと思います。
なぜいいかというと、今やっていることや派生形のものがそのまま将来に役立つ可能性があるのと、興味あることに対して自分でしっかり勉強してそのスキルを磨いていける自信のようなものを身につけられるからです。自分自身が興味をもてば、勉強して身につけられることを知っているのは強い。だから、興味のあることにどんどん取り組んでみるのが一番だと思います。
教えあうことが学びにつながる。そんなコミュニティに育ってほしい!
利根川 自分自身の心の赴くままにどんどんチャレンジしてみる、ということですね。クラブハウス加賀も子どもたちのそういうことを応援する場にしたいと思っています。
その他、もっとクラブハウス加賀への期待や、こんな可能性があるんじゃないかという提案があれば教えてもらえませんか?
及川さん 子どもたち同士が教えあう場にもなるといいなと思いました。私たち大人は経験していることかもしれませんが、人に教えることが学びにつながることってあると思うんです。人に教えようと思ったら、自分の知識が中途半端だということに気が付いたり、考えることで学びが深まったりする。ぜひ、クラブハウス加賀もそういう子どもたちが教えあう場であってほしい。
もう一つは、ぜひ、コミュニティとして育つといいと思います。例えば、クラブハウス加賀の卒業生が継続的にプログラムに携わるとか。5年後、10年度、クラブハウス加賀の卒業生であることが、すごく名誉なことになったり、いい意味で他の人から見る目が違う、という風になると嬉しいですね。
利根川 そうですね。今、現地には、コミュニティマネージャーがいますが、今度はそのポジションにクラブハウス加賀の卒業生がなる、なんていうのもいいですね。
及川さん それはいい!ぜひ、これからも頑張ってください。私も引き続き応援していきます!
利根川 今日は、お忙しい中ありがとうございました!
***
コンピュータクラブハウス加賀からのお知らせ
石川県加賀市とみんなのコードでは、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングを実施中です。このふるさと納税の返礼品は、お肉や蟹のような物ではなく「子どもたちの笑顔と未来」です。及川さんと同じく、この取り組みに共感していただける方からのふるさと納税を、ぜひお待ちしています(締め切り:~2020年3月30日)。詳細・応援はこちらから。