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すべてを包む温かさとコミカルなシリアスさ―ドラマ「新宿野戦病院」個人的感想

 お久しぶりです!
 暑い日が続いていますが,皆様いかがお過ごしですか?
 今回は僕が2024年7月期クールのドラマで唯一見ていた「新宿野戦病院」(フジテレビ)についての記事です。それでは参ります!

※ 以下,物語のネタバレを含む記述があります。ご注意ください。

 新宿・歌舞伎町にある「聖まごころ病院」。かつては“新宿の赤ひげ先生”こと高峰啓介院長(柄本明)のもと,不法滞在の外国人やホームレス等も受け入れ,地域からも愛される病院でしたが,高峰院長は酒に溺れ,優秀な医者もおらず荒廃し,今ではそんな有り様から“新宿野戦病院”と揶揄されるように。
 そこに酔っ払って搬送されてきたのがアメリカ国籍の元軍医のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)。母国語は英語,日本語では岡山弁。そんなひと癖もふた癖もあるヨウコ先生を啓介は“とある秘密”を隠して病院に新たなドクターとして招き入れる。ヨウコ先生がやって来た病院は徐々に当時の活気を取り戻していく一方で,高峰家の問題もどんどん判明していき…というのが基本的なストーリー。脚本を宮藤官九郎さんが手掛ける「救急医療エンターテインメント」です。
 このドラマの魅力のひとつは「ホームレス」や「不法滞在の外国人」「トー横キッズ」「ネグレクト」「オーバードーズ」といった歌舞伎町や現代社会の問題を描きながらも物語が重い雰囲気になりすぎていないところです。このドラマではオープニングのナレーションにもある通り,さまざまな人種が集い,あらゆる言語が飛び交う東洋一の歓楽街である歌舞伎町を毎回登場するゲストを通して“社会の縮図”として描いており,普通のドラマだとドキュメンタリー調になりそうなところをクドカンのスパイスの効いた笑いで一気にコメディへと昇華させているところは彼の脚本の妙であり,このドラマを見てて飽きない理由のひとつだと思います。
 もうひとつの魅力として個性豊かなまごころ病院のメンバー達があります。誰一人欠けてもいけない絶妙なバランスと掛け合いは毎回くすりと笑えるものばかりでした。
 まずはこの冒頭でも少し紹介したこの物語の主人公であるヨウコ先生。アメリカ帰りのため,日本語は少し苦手。ただ,日本語を話すとコテコテの岡山弁という癖強めのキャラ。性格はサバサバしていて,縫合や開頭に少し雑なところはある一方で,人命救助の腕は確かで愚直に誰よりも“人を救う”熱さも持ち合わせています。個人的にはコンカフェで爆破事件があり,多数の傷病者が運び込まれてきた回の「加害者じゃろうが被害者じゃろうがぜってぇ死なせねぇ」と熱く語ったところはグッと来ました。また,そんなヨウコ先生の性格が小池さん本人ともリンクしているようにも感じました。
 続いてはそんなヨウコ先生と共にもうひとりの主人公となる啓介院長の弟・啓三(生瀬勝久)の息子で美容皮膚科医の高峰亨(仲野太賀)。チャラくて金儲け主義で愛車はポルシェといういかにも成金のようなイメージでしたが,ヨウコ先生や周りの人と出会ううちに命と向き合うことの大切さと医師としての決意が出来,外科医を目指すという役どころ。密かに思いを寄せているNPO法人の代表・南舞(橋本愛)との関係性も物語が進むにつれて進展したりしなかったりで翻弄されていくのも見所のひとつ。根はヨウコ先生に似た熱さを持っており,情熱的な面があるのも印象的です。
 物語はこの2人を軸に,妻がいるのにパパ活に現を抜かす横山(岡部たかし),なにげにイケメンと好評の性病科医・田島(馬場徹),ヨウコ先生に全く名前を覚えてもらえずイジられている経理の白木(高畑淳子)の豪華キャストのほか,自分の性別に違和感を持ち,性別不詳としてまごころ病院で働くも,のちにその生い立ちが明らかとなる看護師長の堀井しのぶ(塚地武雅),啓介の子供でのちにヨウコ先生と腹違いの姉妹だったことが判明する高峰はずき(平岩紙),そんな啓介と以前不倫関係にあったヨウコの母親・リツコ・ニシ・フリーマン(余貴美子),さらには歌舞伎町の交番の巡査でまごころ病院に入り浸り,舞がNPO法人の活動の傍ら,SMクラブのお嬢様として収入を得ているという情報を掴む岡本(濱田岳),オーバードーズによりまごころ病院に搬送されるも,ヨウコ先生の人を助ける姿に感銘を受けて看護師を目指すトー横キッズのマユ(伊東蒼)など…さまざまな背景を持った登場人物たちがこの物語を幾重にも味わい深いものにしています。それぞれの登場人物がメインとなる回があり,そこでそれぞれのバックボーンなどが明かされていき,最後には各々にほぼ平等に感情移入出来る構成となっていたのもこのドラマの特徴といっていいと思います。今のドラマは登場人物が多い分,ひとりひとりにスポットを当てる演出が少ないですが,そうしたひとりひとりを丁寧に描くところもクドカン脚本の素晴らしさかなとも思います。
 そしてこのドラマを語る上で外せないのが主題歌。サザンオールスターズの「恋のブギウギナイト」という曲なんですが,これがまたドラマの雰囲気と絶妙にマッチしています!次回へとつながる事件が起き,締めの舞によるナレーションが入るとエンディングのタイトルバックが流れるのですが,そこでエンドロールと共に新宿の街の歴史と登場人物それぞれのソロカットがブラウン管風の映像に映し出される形で流れるのですが,そこにこの曲がバチッとはまって,「ああ今週も終わるんだな」というなんともいえない悲壮感が漂うと同時に,今週も面白かったという満足感も味わうことになります。バブル期を思わせるディスコサウンドがなんとも歌舞伎町という街の雰囲気を象徴しているような気がします。曲は各種音楽配信サービスで聞くことが出来るので是非聞いてみてください!
 ということで,今回は「新宿野戦病院」についての話題でした。小池栄子・仲野太賀ダブル主演,主題歌はサザンオールスターズ,脚本は宮藤官九郎…僕はこの3点がきっかけで見始めたのですが,見始めたらあらゆるところにコメディ要素が散りばめられている一方,しっかりとシリアスなシーンや感動的なシーンもあって,まさにひとつのエンターテインメントとして完成されているなと感じました。最終回の終わり方が続編を作れそうな終わり方だったので,是非続編に期待したいです。評価は二分していましたが,僕は大好きな作品でした!それではまた次回の記事もお楽しみに!最後まで読んでくださり,でぇれぇありがてぇ!(ヨウコ先生風)


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