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アレックス・ロス「ワグネリズム:音楽の影にある芸術と政治」(2020年9月刊行)
原題Alex Ross :Wagnerism: Art and Politics in the Shadow of Music
独語訳版Die Welt nach Wagner: Ein deutscher Kuenstler und sein Einfluss auf die Moderne
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「20世紀を語る音楽」(みすず書房)で名高いアメリカの音楽評論家アレックスロスの新刊「ワグネリズム」が出ました。ワーグナー関連の研究書は豊富で既に沢山出回っているものの、この本の英独語圏の評判が上々なため、日本語翻訳が出るかもしれないと心待ちにしていたのですが刊行後1年経ってもその気配がなく、しびれを切らして独語版を買いました。900頁の大著です。文学や美術のお話はもちろん、第二大戦後のワーグナーの影響を盛り込んだところが現代系に強いアレックスさんらしいです。
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我流で「目次」だけ訳してみました。テーマを見るだけでもワクワクしますね。
序文:ヴェネツィアに死す
1ラインの黄金:ワーグナー、ニーチェと指環
2トリスタンコード:ボードレールと象徴主義
3白鳥の騎士:英国ヴィクトリア朝とアメリカ好況時代
4聖杯城:秘教的デカダンスと悪魔的ワーグナー
5聖なるドイツ芸術:帝国とウィーン世紀末
6ニーベルハイム:ワーグナーと人種
7ヴェーヌスベルク:ワーグナー、ジェンダーと性
8ブリュンヒルデの岩:ウィラ・キャザーと歌物語
9炎の魔法:モダニズム(1900年から1914年まで)
10ノートゥング:第一次世界大戦と若きヒトラー
11権力の指環:革命とロシア
12さまよえるオランダ人:「ユリシーズ」、「荒地」、「波」
13ジークフリートの死:トーマス・マンと国家社会主義
14ワルキューレの戦士:映画におけるワーグナー:「國民の創生」から「黙示禄」まで
15傷:1945年以後のワグネリズム
(注)ウィラ・キャザー:アメリカの女性作家(1873-1947)。「ワーグナーマチネ」という短編小説を書いているらしいです。
☆BGMはジークフリート牧歌(siegfried idyll)にしました。