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2024年公認会計士試験に合格された方々へ

合格おめでとうございます!人生で1番勉強された時間だった方も多いのではないでしょうか。あの並大抵ではない勉強量をこなされて素晴らしいの一言です。本当にお疲れ様でした。

この記事はてりたまさんの「X会計士界隈から論文式試験合格者の皆さんへのリレーメッセージ」の企画に寄せて投稿させていただいたものになります。

色々とお伝えしたいことを考えてはみましたが、この合格お祝いNote企画に参加されている方々も、1つ前のララさんもこの後のよねさんも素晴らしい文章を書かれる方ですので、自分はマイルドな文章の方針にしておきます。極限まで文章量を圧縮して、いっそ五七五に収めようかとも画策しましたが、てりたまさんに怒られてしまいそうですのでもう少し筆を取らせて頂きます。

自分は普段は独立して、上場又は上場準備中の会社様の決算のご支援や中小企業の再生支援、税理士業などをお仕事にしています。奇跡的な運と縁に恵まれて何とかやっていけています。自分が何者かもう少し知りたい方はこちらの昨年のお祝いをご覧くださいませ。
https://note.com/clsade/n/n9407a5aa6ac6

皆さまの多くの方が監査法人に入られるかと思いますので、昔の自分が知っていたらもう少し円滑に監査法人になじめたかもしれない趣旨でテーマを選んでみました。


コミュニケーション、大事かも

優秀な皆さまであればこの先も何が起きても乗り越えていけるかと思いますが、もしかしたら自分のように不器用な方もいらっしゃるかもしれません。「コミュニケーション、大事かも」というテーマで執筆させていただきます。当たり前すぎるテーマですが理由は後述します。

コミュ力さえあれば何とでもなるのでは、と錯覚させるほどにコミュニケーション能力は重要です。一口にコミュニケーションといっても、仲良くなるためのコミュニケーションや理論立てて伝えるためのビジネスコミュニケーションのように色々とあります。語りだすと長くなるので、ひとまずここでは「監査法人においては誰とどういうコミュニケーションが必要なのか」の一例をお示しします。コミュニケーション自体についてはいずれ別途記事を書くやもしれません。

公認会計士としての監査業務では、対クライアントや監査チーム内での良好なコミュニケーションが極めて重要です。会計や監査に関する専門知識がばっちりでも、円滑なコミュニケーションができないと業務遂行や信頼関係の構築に支障をきたすことがありえます。

むしろ専門知識が優れているがゆえに、コミュニケーションが疎かになる場合もあり得ます。クライアントとの関係を構築し、監査チームと効率的に連携し、社内外で信頼を得るためのコミュニケーション力は、監査業務における成功の鍵ともいえます。

対クライアント向けのコミュニケーション

まず、クライアントとのコミュニケーションについて考えてみましょう。ご存じの方も多いかと思いますが、「監査」を英訳したAuditはラテン語のauditus「聞くこと、耳を傾けること」の過去分詞から来ているそうです。これは実務の実感と照らしても違和感なく、とにもかくにもまず聴かないことには始まりません(ちゃんと調べてから聴かないとダメですが)。そのためのベースとなるのがコミュニケーションになります。

ヒアリング力が乏しいと、スタッフの主要な成果物である監査調書の完成に時間がかかるばかりか、「何を聞きたいのか分からない」とお叱りを受けることすらあり得ます。逆にヒアリングやコミュニケーションがうまいと、クライアントとの間に信頼関係を構築することができます。

クライアントが安心して相談や依頼をできるような雰囲気を作ることは、監査業務において不可欠です。クライアントに信頼されると、会計に関する複雑な問題でも積極的に相談を受けやすくなり、リスクの早期発見につながります。逆に、虚偽表示を発見したとしても、指摘の際のコミュニケーションがいまいちだと、仮に内容が正しくともクライアントとの関係が悪化し、場合によっては対立が生じてしまう可能性もあります。

信頼関係をうまく作れて「困った時にはあの人に相談しよう」と思わせることができればとても良い流れができているのではないかと思います。

ただし、相談を受けた際は先輩や上司に回答の内容や方針はしっかりと共有と相談をしておくようにしましょう。(状況にもよりますが)相談に行く際には自分の意見は持っておくのが好ましく、逆に意見無しで伝書鳩をしてしまうと釘を刺されてしまう可能性があるので注意しましょう。

相談をする際の基本は、①事実②会社(クライアント)の主張③あるべき会計処理、を整理して話せるとGoodです。おまけですが、事実と解釈を分けて話す(考える)ことも超大事なので覚えておくととても役立つかと思います。これは監査や仕事に限らずですね。

監査に馴染めないという方の一定数には「クライアントに質問することに抵抗がある」方も見受けられたように思います。帳簿や基準などの情報だけから監査手続を実施して調書作成することもあり得るのですが、やはり「事前に調べることは調べたうえで聴く」ことは基本動作ともいえ、しっかり身に付けておくとみんなハッピーです。

このようにコミュニケーションがしっかりできてクライアントと関係構築を行う動作が身につくと、将来的にも非常に価値があります。仮に監査法人からアドバイザリーに転職する場合や独立する場合など、お客さんと円滑にコミュニケーションが取れることはそれだけで大きな武器になりますし、そこに課題があると大きなハンディキャップになります。

監査チームメンバーとのコミュニケーション

上記で若干触れてしまいましたが、監査チーム内でのコミュニケーションもまた、非常に重要です。監査実務は一般的には勘定科目ごとに担当が割り振られ、監査手続を実施して調書を作成します。しかし、聡明な皆さまに言うまでもないことですが、1つの取引は複数の勘定科目にまたがることから、科目担当者を跨いで残高に影響しますし、勘定残高に影響しない事象でも監査実務に重要な影響を与える事象も無数にあります(会社の組織体制が変わったとか、担当者が退職したとか)。

もしチーム内でのコミュニケーションが不足していると、単純に一言質問すれば解決する問題を、自分で調べているうちに時間がかかり、作業が非効率になることがあります。また、チーム内で必要な情報が共有されていないと、業務が進行する中で重要な情報を見逃してしまう恐れもあります。

このことは業務の非効率化につながるだけでなく、監査リスクを高める要因にもなりかねません。チーム内での良好なコミュニケーションは、仕事の質に加え、メンバー間の信頼関係を構築し、業務全体の円滑な進行に寄与します。コミュニケーションが取りやすい人と思ってもらえれば、それだけで他の監査チームからも呼んでもらえることもありえます。

監査チーム外のメンバーとのコミュニケーション

監査法人内の、監査チーム以外のメンバーともコミュニケーションが取れていると、これまた色々と役立つ場面が多いです。監査は広範な知識が必要であり、会計だけでも得意な分野は人それぞれ違います。得意分野ごとに相談できる人がいると、色々と身を助けてくれること間違いなしです。ただし、教えてくんになってしまうのはまずいので、普段から何かお相手の役に立つことをしておきましょう。

秘書の方やアシスタントの方、ITサポートの方とも円滑にコミュニケーションが取れると、専門業務以外の部分(俗にいうロジ周り)も滞りなく進むこともあるかもしれません。

ちなみに自分は業務中にアイスを食べていたらアシスタントさんに「何でアイス食べてるんですか?大丈夫ですか?」とお声がけ頂いたことがあります。これが円滑なコミュニケーションの成果で本音で話して貰えた結果なのか、コミュニケーション不足によるものなのかは未だによく分かっていません。

話は変わってAI時代に活躍する人

さて、明日は理論としての専門知識を実践知に変換して発信する達人のよねさんが投稿されます。

たまたまですが先日よねさんとお食事に行ってまいりました。そこではAI時代にどんな人が活躍する?という最近流行りの話題になりまして、飲み会トークではありますが「人に会いに行ける人が活躍するのでは」「無駄になるかもしれないけどとりあえずやってみるか、ができる人が強いはず」といった話で盛り上がりました。

今更言うまでもないことですが、生成AIの進化のスピードは凄まじいです。少し試しただけで、ASBJの基準やBIG4のサイトを参照して新リース会計基準の質問に対応するチャットボットがものの30分程度で作れてしまいました。

AIの進化は凄まじいですが、その特性や使ってみた感想から、AIが処理してくれるのは以下の2つの間に位置する領域からじわじわ広がっていくのではないかという仮説を持っています。
✔ 個別具体的な課題に対応する高度な専門知識(ハードスキル)
✔ 広範な課題に対応可能な柔軟な能力(ソフトスキル)

AIに取って代わられない高度な専門知識を身に付ける方を一般的な解決策として良く耳にしますが、ソフトスキルの領域にもまたAIに取って代わられない部分があるのではないかと思います(ファシリテーションや関係構築、相手の本音を引き出すスキルなどなど)。

コミュニケーションが重要なんて当たり前すぎるほどに当たり前かもしれません。しかし監査業務のように高度な専門知識が求められるような仕事では、得てしてコミュニケーションのようなソフトスキルが忘れ去られてしまいがちな側面も多少なりともあるように感じています。ハードスキルもまた、ソフトスキルあってこそ輝くものともいえます。

また、今回の企画を立ち上げて下さったてりたまさんの著書では、監査現場におけるソフトスキルについても多くのことが学べます。もし興味がある方はぜひ。

実益の観点を中心にお話させて頂きましたが、仕事にしてもプライベートにしても、コミュニケーションは色々な物事の根幹をなすもので、身に付けられると色々な場面で身を助けてくれます。自分のコミュ力が悲しいほどに低かったゆえに、その重要性を改めて実感しているのでお伝えさせて頂きました。

皆さまのこれからが少しでも円滑になればとの思いでテーマを選びましたが、よくよく考えてみると自分は人生も会計士キャリアも全く円滑ではなかったので、そもそも円滑である必要はなく、いっそ荒波を楽しむぐらいで丁度良いのかもしれません。皆さまであれば多少の困難に見舞われても乗り越えていけるに違いありません。

最後までお読みくださりありがとうございます。最後に改めて、合格おめでとうございます!!

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