批判レビューあるあるから、ゲームの品質をチェックしよう
こんにちは、個人ゲーム開発者のhako 生活です。今回の記事では、ゲームの批判レビューでのあるあるをまとめてみました。批判レビューを上手に読み解けば、ゲームの品質を上げるためのヒントになるかもしれません。長めの記事ですが、ぜひ読んでいただければと思います。
なお、今回はゲームの面白さとは別軸のお話となりますのでご注意ください。品質がいいゲーム=面白いゲームではありませんが、面白いゲームかどうか判断してもらうには最低限の品質が保証されていることが多いはず、とhakoは思います。
今回の記事は、
まず、「そもそもゲームは人に触ってもらうものだよね~」という話から、なぜレビューを読むべきか、そしてどうレビューを読むと良いか、具体的にどんなレビューあるあるがあるかという順番で話を進めていきます。
少し長めですので、ご容赦ください。
◆そもそもゲームは人が触るもの。
一口にゲームの品質をチェックすると言っても、どのように考えればいいのでしょうか。ゲームはエンターテイメント、娯楽であり、遊ぶものですね。ではだれが遊ぶのか。ゲーム開発者から見たら、ゲームを遊ぶのは、ほとんどが自分以外の人です。(図A)
では、他人の気持ちなんて一体どう考えればよいのでしょうか?道徳の時間のようで煩わしいですが、今回は少しシンプルに考えてみます。僕自身は「他人と自分は同じかつ違う」と考えています。(図B)
では、自分が作っているゲームについて、自分が見つけられない要素をどう洗いだせばよいのでしょう?いくつか方法がありますが、ここでは二つ紹介します。(図C)
一番重要なのは①のイベントやテストプレイだと、僕は思います。※🐣
初見の人を見つけて毎回テストプレイをしてもらうのは難しいですよね。大きなイベントに頻繁に出たりするのも体力・時間・お金を使います。もし、自分の作ったゲームをすぐに遊んでくれる友達がいたら重宝すべきだと僕は思います。この記事を読んでいる2022年以降、人間の記憶を簡単に消すことができるようになったのであれば、上記を読んだ記憶は消してください。
可能なら、遊ぶ前からできるだけゲームを良い方向に寄せてから、それを確めるようにテストプレイをしてもらうのが効率的だと思います。では、そもそもどのように考えて、どのように品質を見直しせばよいのでしょう。ということで、②既存のゲームのレビューから学ぶということを説明していきます。
◆批判はつらいよ
批判レビューの中から、よくある内容を整理しておいて、あらかじめ対策できれば、ゲームの品質を向上させることができるのではないかと考えました。実際、レビューでの思わぬ批判も回避できるかもしれません。
では、どのようにレビューを読んでいけばいいのでしょうか。ここではざっくりとレビューの解体方法をご紹介します。そもそもレビューは文章です。文章は、基本的には事実と意見、それらを装飾する感情で構成されることが多いはずです。
以下はイメージですが、このような式でとらえてみると良いかもしれません。(図D)
では、実際にレビューを解体してみましょう。僕のゲームに寄せられたアンチレビューはこちら。(図E)感情的な批判を読むのはなかなかつかれることですので、精神的に余裕がある時に読みましょう。
以上のレビューを、分解するとこうなります。
ここまで分解できたところで、より一つ一つの要素に対して取り入れるか、取り入れないか、判断できるようになるはずです。それでは、実際にはどん批判があるのかをまとめてみましたので、見ていきましょう。
◆批判あるあるを見てみよう
Steamで人気のゲームからマイナーゲームまで、さまざまな批判レビューを照らし合わせて、以下に大まかな分類をまとめてみました。それぞれの詳細は後程説明します。
▼ソフトウェア品質によるもの
バグ
実行品質
▼UI品質によるもの
アクセシビリティ
ユーザビリティ
▼恣意性によるもの
冗長性
未回収・一貫性
▼ゲームバランスによるもの
ボリューム
難易度
作業化
▼ユーザー損失によるもの
ミスマッチ
説明不一致
倫理観
価格設定
プラットフォームによる損失
競合
▼おまけ:作家イメージによるもの
ヘイト
上の項目になるほど実装段階に関係し、どんなゲームにも当てはまる内容になります。逆に、下の項目になるほど企画段階に関係し、根本的なお話や思想との兼ね合いになるような分け方をしました。 ちなみに、先に結論から申し上げますと、これらのほぼすべては第三者のテストプレイによって対策することが可能です。 一通りチェックしたら、最後は必ずテストプレイをしてもらいましょう。それでは、それぞれの項目を具体的に説明していきます。とても前置きが長くなりましたが、気になるところだけでも読んでみていただけると嬉しいです。
批判から学ぼう
それぞれの内容について、順番に説明していきます。今回、Steamよりレビューの画像を集めて張ろうと思ったのですが、皆さん語気が強くてとげとげしい記事になりそうだったので、画像は貼らないことにしました。気になった方は実際のSteamページの「おすすめしない」レビューと照らし合わせてみてください。
▼ソフトウェア品質によるもの
どんなゲームにも当てはまり、そして、ゲーム企画内容によらず、修正が可能な内容です。一般的なデジタルゲームは、ソフトウェアです。ソフトウェアがうまく動いていなくれなければ、そもそもゲームができなかったり、ゲーム体験に大きなストレスを与えます。
バグ
ソフトウェアの最も基本的な不具合として、バグは常に付きまといます。大規模なゲームで、いきなり全部のバグを取り除くことはほとんど不可能です。特に進行不能バグ、データ消滅等の、ユーザー体験が大きく損なわれてしまうバグには気を付けましょう。昨今では、どのプラットフォームでもアップデートの機能が充実しているため、発売後に修正することが可能になりました。
対策:バグが入り込みにくい基盤の作成、十分な第三者テスト、デバッグ
実行品質
処理落ちやロード時間、画質など、ゲームを実行する際のソフトウェア品質が低いと、体験全体にストレスを与える原因となります。快適に動作するための工夫は意識しておきましょう。ジャンルによって、快適とされる水準は異なります。 また、基本的にはスマホのようにハードウェアの性能が低いものを基準にシステムを組んでいくことになると思います。面倒ですが、端末ごとに設定を用意するなど、プラットフォームに合った体験があるとベターです。
対策:最適化、実機テスト、コンフィグの実装
▼UI品質によるもの
ゲームを触るうえで、ゲームとユーザーとの境界面となる部分をUI(ユーザーインターフェース)と言います。UIはゲーム体験の最初から最後までユーザーが触れ続ける部分であるため、十分な配慮が必要です。
アクセシビリティ
激しいフラッシュやエフェクトによる視覚刺激、ラウドネス(音の大きさ)、3D画面酔い、色彩等、プレイヤーによっては身体の構造上プレイに耐えられない場合があります。アクセシビリティへの知識があると、事前に回避ができます。
対策:コンフィグ画面による調整機能の設置、事前の注意喚起等、多人数の第三者テスト
ユーザビリティ
低評価レビューのうち、かなりの割合を占め、かなり細かいところまでつっこまれるのはこのユーザビリティ、いわゆる操作性です。端末によっても操作方法は異なりますし、ゲームによってはどうしても複雑化してしまいがちです。個人的なポイントは"ユーザーがやりたいと思ったときに、その操作を思った通りに実現できるか"かなと思います。
チュートリアルやデザインで解決することもあります。また、あとで記述する"説明不足"や"冗長性"とも大きく関わっていきます。
対策:ボタン配置の見直し、キャラコントロールの見直し、コンフィグによるカスタマイズの実装(大変ですが…)
▼恣意性によるもの
さてさて、ようやくゲームの中身について入っていこうと思います。自分で気づきにくいのがこの恣意性、つまり恣意的な(≒自分勝手な、思いつくままの考えの)度合いです。インディーゲームだからという理由で片づけることはできますが、あくまでユーザーに体験を提供するために、恣意と表現の線引きは重要かと思います。
説明不足
ユーザーはゲームを購入してすぐ、初めてその世界を体験します。下手をすれば、スティックを倒したら右に行くとか、ボタンを押したら調べられるとかすらわからない状況です。なぜか死んでしまったとか、カバンがあるのに説明がないとか、それが十分に伝わらないまま投げ出されてしまっては、目玉となるゲーム体験の前に投げ出してしまうかもしれません。十分に遊べるようになるまで、どんな学習が存在しているかを確認しましょう。**「自分がわかるからみんなもわかるだろう。」という油断は禁物です。**ゲームを手に取るユーザーが何千、何万人にもなればベテランプレイヤーから、初めてゲームをやる人まで、本当に様々なステータスを持つ人たちに遊ばれることになります。自分以外の人間に触ってもらったとき、全く説明しなくてもゲームを遊んでもらえる必要がありますから、丁寧に作りすぎるぐらいがちょうど良いかもしれませんね。
対策:チュートリアルの作りこみ、画面への操作表示、第三者による初見テストプレイ
🐣 説明というのは必ずしも言葉でなく、画面のデザインやレベルデザインで解決することもできます。
🐣 そもそも操作をシンプルにする引き算方式と、徐々に学習をさせていく足し算方式などがあります。例えば、アンリアルライフでは後者を採用しています。
冗長性
ここでの冗長性とは"除かれるべき無駄"の度合いのことです。
例えば、
・あまり差分のない周回要素を強いられる
・聞いても聞かなくてもよい会話をスキップできない
・何度も死ぬ前提のゲームなのに、やられ演出が長い
・セーブポイントが無駄に少なく、かなり前から戻される
・ボス戦前の演出をスキップできず、やられる同じやり取りを何度も聞かされる
・おつかい化しているイベントを本編として強制させられる
・不必要に移動が遅い
などです。
基本的に、冗長性は発見が難しいです。自分ではなんとなく「これはあって当然だろう」と思っていても、ユーザーにとっては不要なこともあります。「これは当に必要か?」という観点は、常に持ち合わせておく必要があります。
ストレスフルな人間になりきってプレイしてみるのも良いでしょうし、自分では認識できないところを第三者チェックしてもらうのが特に重要です。
対策:第三者による見直し、同ジャンルゲームの分析
未回収・一貫性
特にストーリーを見せるタイプのゲームで多い批判です。物語の回収を放棄されたり、一貫性が損なわれると、腑に落ちないユーザーは多く存在します。例えば、「俺たちの戦いはこれからだ!」的なエンドや、夢オチなどです。ユーザーを驚かせようとするばかり、ゲームの展開を急変更しすぎて、プレイヤーに「**今までやってきたことは何だったのか…」**と未消化の気分にさせるものは不満がたまりやすい印象です。
対策:シナリオ等や通しテストプレイの感想を聞く
▼ゲームバランスによるもの
ゲームバランスも、ユーザーから特に突っ込まれがちな部分です。厄介なのは、バランスというだけあり、単純な0-1では語れない点です。これには開発者自身のゲームへの価値観・ポリシーが伴う部分ですので、自分が貫き通したい部分がある場合はそちらを優先しましょう。
ボリューム
インディーゲームの場合、現実的に必ず直面する問題ですね。特に品質が良い作品でも、ボリュームの少なさについて言及される作品は多く存在します。ゲームは、絵や音楽や映画よりも、コンテンツに求められる体験時間が非常に長いというのが事実です。しかしながら、必ずしも長ければいいというものではなく、体験の密度が大事になるのかなと思います。ボリューム対策として、単純なかさ増しでボリューム増すこともやってしまいがちですが、量が増えてたとしても、密度は薄くなるケースも多いため、よく検討が必要です。
対策:やりこみ要素の導入検討、ゲームループの見直し、事前の規模説明
難易度
アクションゲーム等で特に多いのが、難易度についての批判です。そして、ゲーム開発者にとっては客観視が難しい部分でもあります。万人にちょうどいい難易度のゲームを作るのは難しいです。どんな層のユーザーがターゲットなのか、苦手な人をどう救済するのか、上手な人にとってつまらなくならないか、というような多様なプレイヤーの観点が求められます。
対策:第三者によるテストプレイ
作業化
ゲームの中盤~後半部分につっこまれがちな批判内容です。同じようなことの繰り返しを淡々とさせられるようなところは飽きたり、つまらなさを感じるユーザーも多いようです。クラフトゲームのように、作業自体が楽しいゲームもありますが、そうでないゲームはちょっとした味変えだけではなく、大胆に体験の鮮度をリフレッシュする工夫があると良いかもしれません。
対策:ゲーム全体の見直し、言語化、第三者意見
▼ユーザー損失によるもの
以下は、そもそもの作品の在り方のお話や、ゲームの内容よりもう少し外側のお話になります。ゲームはお金を払う商品であるため、ユーザーが損したと思うタイミングで簡単に批判が来ます。ゲームが良質にできていた場合でも、思わぬ落とし穴にはまることもあるため、品質に自信がある方も注意が必要です。
ミスマッチ
そもそもユーザー側とのミスマッチによる批判はどうしようもないので、気にする必要はほとんどありません。さながらカレーや唐揚げも全員が好きなわけではない、といった理屈です。ただし、あまりにミスマッチというレビューが多い場合は自身のプロモーション内容やターゲティングを見直す必要がありそうです。
対策:ターゲットにあったプロモーションや記述
説明不一致
プロモーションやストア、SNS周りで起こりやすいトラブルです。説明の内容やイメージが実際にやってみたら悪い意味で違ったときによく発生します。 ボリュームや難易度、説明のない過度なホラー表現など。プロモーションによる過度な期待に応えられない場合も同様です。
倫理観
表現の自由はありますが、ユーザーが不快に思う表現は様々です。基本的にはレーティングによってふるいをかけることができますが、不必要に不快な表現になっていないかは確認が必要かと思います。 対策:テストユーザーやパブリッシャーからの意見収集
価格設定
ボリュームによって決まりますが、値段設定が体験では納得できない際に発生します。 特に前項のバグ、実行品質、ボリュームはユーザの値段基準に影響を与えやすい印象です。
対策:テストユーザーやパブリッシャーやリリース済みの開発者との相談
プラットフォームによる損失
近年では、同じゲームをプラットフォーム別にリリースすることが多くなってきました。実際、開発者としてはプラットフォーム別に個性を出したい部分もあると思いますし、コンシューマーによっては、そのコンシューマー独自の要素追加を要求されることもあります。その際、ユーザーに「すでに持っているゲームの上位互換が別のプラットフォームで出る…」という損失的な印象が与えられると、アンチレビューがつくことがあります。
競合
競合するゲームがあり、さらに劣化版だというレッテルを張られてしまうと「こっちを買った方がよくない?」という内容のアンチレビューがつきます。〇〇フォロワー系のゲームや、パクリゲームに多いです。
対策:ゲームの事前リサーチ、詳しい人への聞き込み等
▼おまけ:作家イメージによるもの
最後に、完全に作品外の話になります。作家と作品は切り離すべきか、という議論の是非はあると思いますが、作家性と作品を紐づけて見る人がいるというのは事実です。
ヘイト
作家にヘイトを込めたレビューはそもそもレビューとして論外かもしれませんが、それでもヘイトによってレビュー全体の平均点数を落とすことになるのは厄介です。だれにも恨みを買わないようにするというのは無理な話ですが、SNS運用等によって無駄に足元をすくわれないようにしたいですね。
対策:SNS運用の見直し
💡おしまい
とても長くなりましたが、批判あるあるから一通りのパターンを洗い出してみました。もちろんこの限りではないですし、詳細はジャンルごとに、もっと深堀りできそうですね。皆さんもぜひ考えてみていただければと思います。
今回はこのような観点でながながと書きちらかしましたが、もちろん批判がすべてではありません。みなさんのやりたいことを尊重したり、良さを見失わないようにするのが最優先だと僕は思っています…!不本意な批判を減らせるように、今回の記事が少しでも制作のヒントになれば幸いです。それではまた~。
(2021/07/04 hako 生活からの抜粋でした)