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クラウン*ベスのアメリカ体験記 vol.31

米国で”地上最大のショウ” リングリングサーカスのブルーユニットに入団したエリザベス! 今回はサーカスにおける動物の権利と保護をサーカスでの経験から考えます。


サーカスにおける動物の権利と保護

今日では「アニマル・ライツ」(Animal Rights)、すなわち動物保護に基づく動物の権利を守るために、昔は定番の猛獣ショーや象のショーなどがサーカスからどんどん廃止されています。アニマル・ライツの非営利団体がサーカスの動物達のための抗議活動を少しずつ世界のあちこちで始めてからそれにサーカスでの動物芸に反対する人々が徐々に増え始めていきます。それに不安を感じたヨーロッパのサーカスは、正しく動物達を保護しケアをしていることを公衆にオープンに見せ理解してもらうため、動物達が自由に歩き回れるような動物用の囲いを設置し興行を続けました。それでも後には徐々に動物芸は姿を消し始め、現在はアメリカのメジャーなサーカスではエキゾチックな動物のショーを見ることはほとんど無いでしょう。

私がリングリングサーカスに在籍していたとき各都市の公演の初日にアニマル・ライツの非営利団体による抗議活動をよく目にしました。私は彼らのサーカスに対する抗議、すなわち「サーカスは動物を虐待している」と言う訴えにいつも疑問を持っていました。なぜならリングリングサーカス内で一度もハンドラーや動物の世話をするスタッフが動物達を酷使したり虐待したりしているのは一度も見たことがなかったからです。毎日24時間動物達を世話するために何十人もの動物世話スタッフが雇われていました。スタッフは朝から夕方までと夕方から翌朝までの交代制のシフトで休みなし。動物達に食事を与え、体を洗い、毛並みを整え、寝床を掃除し、体調に異常があればヴェット・テック(Vet Tech) すなわち獣医の看護師さんがいつでも動物を見てあげられるように常時勤務しています。Vet Techはサーカスメンバーとしてツアー中も興行に同行しています。仮に動物がVet Techの手に負えないような切羽詰まった治療や手術が必要な場合は、興行する各都市の獣医のリストがあり24時間態勢で対応してもらえます。また世話担当のスタッフは、仕事のスケジュールはキツいけど動物が好きだから続けていけるんだと言うほど皆動物好き。「サーカスでは動物達は人間より待遇がいいんだ」なんて言われていたくらい動物達は至れり尽くせりだったのでアニマル・ライツの抗議活動はふに落ちなかったんです。

後にサーカスを退団してから色々検索して、彼らが言う「動物の虐待」は、人間が直接体罰を加えると言う事ではなく、自然界では群れで1日に何十マイルも動き回る野生の動物達がショーのためにあまり動くこともなく1箇所にステイさせざるを得ないことも動物虐待だと言うことを知りました。それぞれの動物の体の特徴や生態などによりその行動や生活パターンなどが違って当たり前。それをショーのために無理やり全く別な環境で生きさせなければならないのが動物虐待なんだと言うことはよく理解できました。
私は動物が好きだからこそ野生動物がサーカスから消えていくことは嬉しいことだと今では自信を持って言えます。

メキシコのサーカスで屋外に設置された動物用の囲い
リングリングサーカス、119thエディション「Gunther Gable-Williams Farewell Tour」(ガンサー・ゲイブル・ウイリアムスの最後のショー)のパンフレットのガンサー

世界でも名が知れたリングリングサーカスの猛獣使い、ガンサーは、私が入団した128thエディションの「サイドショーツアー」の時、動物保護担当の副社長で、人の上に立つ役職であるにもかかわらず毎日作業着を着て朝早く、そして夜は誰よりも一番遅くまで働いていました。動物達を含め誰にでも優しく気さくでいつも笑顔を欠かさない人でした。動物達がガンサーを好きになる理由がわかるなーと思える忘れられない素敵な人柄でした。

ナビスコの「バーナムのアニマルクラッカー」

上の箱はビンテージスタイルのイラストで、動物はそれぞれ昔ながらのオリのあるサーカスワゴンに乗っています。下の箱はアニマルライツの努力の結果ナビスコが動物達をサーカスワゴンのオリから開放するイラストに同意後の箱。動物達はフリーになり自然の中を自由に歩き回っています。小さなお菓子の箱からも時代の変化が伺えます。


続く。。。


書いたのは、

エリザベス

1990年クラウンカレッジジャパン2期卒業生。7年間日本でクラウンとして活躍後、渡米。アメリカとカナダのサーカスで10年間クラウニングを続行。その後10年間マクドナルドのクラウン、ロナルドのアシスタントを務める。現在アメリカ在住。

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