【日記】『空が灰色だから』1巻のお気に入りエピソード
阿部共実先生の『空が灰色だから』1巻を読み終えたので、お気に入りのエピソードについて感想を書いていく。
直接的なネタバレは避けるけど、読了前提の感想記事なので注意。
空が灰色だから手をつなごう
オチが胸糞悪い〜、と葉月は思ったのだが、Xで感想を見てみると、素直にハッピーエンドと捉える向きが多くて、解釈の違いが興味深いと感じた次第。
確かにどちらとも受け取れるし、リドルストーリー的な構造になっていて面白い。
第1話から第3話は一貫して、「無関心の悪」を描いている印象で、連作短編という枠組みの中で綺麗な構成を作っているところが好き。
今日も私はこうしていつもつまらなそうな顔してるあいつとつまらない話をして日を過ごしていくのだ
第4話〜第6話は「様々な形の執着」を描いていて、1話〜3話と対になっているように感じる。
その中でも、第6話であるこちらは「執着の恐ろしさ」を、構成と絡めて端的に表現していて、特に面白い。
真実らしきものは示されているものの、こちらも厳密には「どちらの認識が正しいのか分からない」構図になっていて、リドルストーリー風味。
作品全体を通して、この「曖昧性」は重要な要素だと思う。
星畑珠姫高校2年生17歳 華村奈々美高校2年生17歳 鬼ヶ原樹里子高校2年生16歳物語
第7話〜第9話は「曖昧性」が突き詰められていて、第8話であるこちらは非常に美しい恐ろしさがある。
内容は『潮舞い』に通じるコメディだし、恐るべきことは何一つ起こっていないのに、全12話の中で最も怖いと感じた。
コメディの中にこれだけ「不穏の種」を蒔いておきながら、あえて不発に終わらせる手腕は実に素晴らしい。
ガガスバンダス
第10話〜第12話は「曖昧性」のテーマを引き継ぎつつ、「多重性」が加えられている。
1巻の最終話を飾る『ガガスバンダス』は、「曖昧性」と「多重性」の集大成として秀逸。
葉月は常軌を逸した考察好きだから、つい考察してみたくなってしまうけれど、この作品の真価は「理解できないこと」なのだろうな、とも思う。