仮面ライダーBLACK SUN感想(ネタバレあり)
ミクさんはしばらくあれこれ思案中なので、今日はタイトル通り、Amazon primeで絶賛配信中の「仮面ライダーBLACK SUN」の感想などをつらつらと書きます。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8TCNR2B/ref=atv_dp_share_cu_r
めちゃくちゃネタバレありです。
最後まで見てない人は回れ右です。
良いですか、最後まで見てない人はブラウザバックですよ。
良いですね?(しつこい)
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と言うわけで、「仮面ライダーBLACK SUN」を最終話まで観たんだけど。
正直、良かったとこと悪かったとこが7:3くらいな感じだった。
点数がつけづらい。
何というか、もちろん昭和最後の仮面ライダーのリメイク作ではあるのだけど、全体的に雰囲気が昭和の特撮ドラマを彷彿とさせる感じで、今の平成・令和仮面ライダーシリーズとは一線を画す作りをしている。
同じくAmazon primeで配信したアマゾンズとも違うんよね。あっちも全体に暗いトーンで退廃的なにおいが昭和特撮っぽさがあったのだけど、もっとこう、なんというか、くすぶるような後ろ暗さというか。
取り敢えず色々と列挙すると……
△良かったところ
・ライダーの造形。
・個々のキャラクターの個性豊かさ、はまり役具合。
・怪人差別問題を現代の縮図に置き換えた風刺。
・時代を超えた愛憎劇で進むドラマ。
・ちりばめられたテレビ原作のオマージュ。
▲悪かったところ
・1972年と2022年を行き来する故の進行の分かりづらさ。
・一部キャラの掘り下げの低さから来る展開の分かりづらさ。
・類似シーンの多さ(これはある意味仕方ないが)。
・救いの乏しいラスト。
・過剰に見えるテレビ原作のオマージュ(良かったとこと別で)。
まずライダーの造形は文句なくかっこいい。ブラックサンもシャドームーンも、怪人体と変身体の二段構えになってるのも素晴らしい。テレビ原作でも一瞬だけブラックが怪人体になるので、それのオマージュともいえる。
変身体の時だけなんで「変身ポーズ」が必要なのか説明されないのでがアレだけど、この辺に昭和特撮ぽさがある。ノリと勢い的な。
ブラックサンもシャドームーンも、最初の変身は「怒り」が原動力になってるのは、もしかしたらRXのオマージュもちょっと入ってるのかも?(考えすぎ?)
戦闘シーンは地味って言う感想も見たけど、基本体術メインで、三神官とか一部キャラのみ特殊能力が使える感じだからかもしれない。爆発もしないし。
ただ、特撮的ではあれど最後のライダーキックにはしびれた。場には微妙にそぐわないんだけど、アレは伝統芸としてまさに完成されていた。
個々のキャラクターの完成度はなかなか良かった。
主役二人はもちろん、準主役……というかある意味主人公の葵はめちゃくちゃ演技も上手いし、ちょっと年齢より大人びてるけど感情豊かで良い役。
ビックリしたのは、総理大臣役のルー大柴。全然トゥギャザーしてくれなさそうな凄みのある悪役。最後はあっけない退場だったけど、そこまでの表では飄々とした、裏では自由業顔負けの悪意を放つ素晴らしい悪役だった。
そしてビルゲニア。あの原作オマージュの顔だけ出てる怪人体はギャグかと思ったんだけど、最後の死闘を見たら、アレじゃないと駄目だと思える。表情が見えるからこその壮絶な死に様は震えるほどかっこよかった。
三神官それぞれもキャラが立ちまくってたし、クジラ怪人、コウモリ怪人、ノミ怪人のトリオも何処となくコミカルで良い。
怪人差別のある世界は、現実のあらゆる差別を煮込んだ形として描かれてる。これが苛烈なデフォルメ具合で、賛否が分かれるかもしれない。さらっと流されるけど、ゴルゴムは「生産性のない人間」も蔑視対象として扱ってるので、掘り出すと闇だらけだ。
怪人自体は人為的に作られた存在で、その秘密が暴かれると社会的な大混乱になるかと思いきや、少し矛先をそらされただけでなんとなくあやふやにされ、怪人差別自体もなくならないという地獄のようなラストも、ある意味現実通りで頭が痛い。そして今度は外国人労働者に同じ矛先が向けられるという、これも本当に救われない(こっちはこの作品の悪いところでもある)。
創世王の正体が人体改造実験でたまたま出来た特別な一個体をそう呼んだだけだった、というのは、原作でも若干あやふやな創世王の落とし所としては良かった。ブラックサンに心臓を摘出されても、心臓だけで生きていたのも原作のオマージュとして最高に良い。
ゴルゴムのマークが元々は「永遠に戦い続ける」を意味して「∞」だったのを、葵がブラックサンの蘇生に際して「戦いに終止符を打つ」という意味を込めて胸元にあのおなじみのマーク(原作ブラックの胸元のマーク)を描くのも「こう来るか!」と歓喜の声を上げた。
その反面で、ドラマ自体は終止符を打つどころか、状況はほとんど何も変わらず、ブラックサンを失ったことで希望も失われ、結局シャドームーンがやっていたのと変わらない力による変革を目指そうとするところで終わるラストは、もう少しなんとかならなかったのか……
そして、最終話開幕の原作準拠のオープニング。アレも正直に言ってやりすぎというか、何も歌やテロップまで当時のにする必要はなかったのでは……。
オマージュとして自然に溶け込んでる、解釈として素晴らしいモノと、単純にはめ込んだだけの不自然なモノが混在している。この辺がすごくもったいなく感じた。
他にも、ビルゲニアやビシュヌの心変わりというか、感情の動きに若干説明が乏しく、なぜそういう行動をとったのかが分かりづらいところがあったり、キングストーンの出自が曖昧なままだったり(なぜ光太郎と信彦が石なしで怪人体に変身できたのかも謎)、割と重要なところが端折られてるのも気になった。
世界観などはちゃんと作り込んであるのに、急にザルになったように見える箇所がいくつかある。このあたりもとてももったいない。
細かいとこだと、葵の変身が光太郎準拠なのにベルトは平成っぽいギミックだったりとか、サタンサーベルが原作とは真逆の使い道のために作られたモノだったりとか、クジラ怪人の伝統の隠し部屋および謎の水とか、本当に良いところはたくさんあった。
ただ、全体を通じて惜しいところもたくさんあり、平均すると70点くらいというすごく、本当にすごく「もったいない」って感じの作品だった。
せめてラストにもう少し救いがあれば……フィクションだし、もう少し手心というか……。
とりとめのない感想だけど、こんなところで。
もう少し時間がたったら、二周目したいと思う。
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追記:
総理のモデルが白石監督から見た安部元総理ではないかという話が出てて「あー」ってなってる。総理の孫って設定だしねぇ……実際どうか分からないのでなんともいえないけど、政治的なとこでザルっぽい部分が多いのは、そういう目の曇り方もあるのかもしれないなと思ったり。
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