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2022.8.26 劇団チョコレートケーキ『追憶のアリラン』/シアターウエスト

夜はお隣のシアターウエストにて『追憶のアリラン』を。
2020年の配信とハヤカワ演劇文庫で発売されている戯曲を読んで以来、再演を熱望していた作品だったので今回とても嬉しかったです。

この『追憶のアリラン』は、いまだ火種どころか燃え続けている日本の朝鮮半島統治問題を真正面から題材にした作品。
朝鮮総督府に在籍していた一人の日本人官僚を軸に、戦中戦後の朝鮮半島で起こった出来事や歴史が描かれています。

【戯曲について】
センシティブな題材を取り上げたことだけでも凄いのに、この作品の特筆するところは、どこまでも平等な視点を保っていること。
(これは劇チョコ、古川健さん作品に共通していることではあります)
・大日本帝国による支配の実像と残虐な行為
・朝鮮半島統治問題の評価点
(現代からみると他国に口出しして統治しようとした時点で間違っていると思いますが……)
・そして終戦後の引き揚げ時の不幸
・ソ連(とアメリカ)と朝鮮のパワーバランス etc.
ちょっと書き出しただけでも、偏ったり堅苦しかったりする政治劇になりそうな要素ばかりなのに、絶妙な匙加減で紡がれています。

そして、日本人と朝鮮人(作中ままの表現を使わせていただいてます)の友情というドラマティックな要素を組み込み、政治劇とはなっていないこと。

これにより、私のような歴史に精通していない+韓国や北朝鮮の国としての政治にあまり良い印象がない(個人や文化は別)自分にも分かりやすく、スッと頭と心に入ってくるという良い意味でのエンタメ感が生まれていると思いました。

【演出等について】
18日~21日は『追憶のアリラン』、24日~25日は『無畏』、そして26日はまた『追憶―』と、同じ劇場で交互にどうやって公演するの? と思っていたら同じセットで驚き。まぁ、冷静に考えたらそうですよね💦
3列段々の八百屋状で2列目が溝のようになっている舞台。
『無畏』もこの2列目の溝部分が効果的に使用されていましたが、『追憶―』のほうが合っているなぁと個人的には。
これは最初とラストの演出のせいかもしれません。
(あと無畏の初演時の水が流れ落ちる演出が好きだったからというのもあります)
浅井さん演じる朴さんが渡った1列目と3列目をつなぐ橋。
それが次の暗転ですぐにテーブルや椅子となり、1列目から3列目への移動は一度舞台からハケなければいけない状態になり、ラストシーンでは豊川夫婦がアリランを歌う中全員が登場し、協力して朴の道を作る。
演出も照明も浅井さんの表情もとても美しく、再び涙腺崩壊しました。
なんとなくですが、『帰還不能点』『無畏』の2作と比較すると映画のような雰囲気を持っていたと感じました。

【役者さんについて】

『追憶のアリラン』当日パンフレットより

今回の再演、
豊川検事役の佐藤誓さん/豊川の妻・咲子役の月影瞳さん/豊川の同僚である川崎役の渡邊りょうさん/憲兵隊長・荒木役の佐瀬弘幸さん/人民裁判委員・金公欽役の大内厚雄さん/人民裁判にて朝鮮側の証人となる崔承化役の辻親八さん/豊川検事付きの事務官・朴忠男役・浅井伸治さんは前回と同じ役で、
菊池豪さんは役が変更。
それ以外の方は再演からの参加とのことですが、中垣役の原口さんも緒方役の谷仲さんもチョコ劇ではおなじみですし、林明寛さんと小口ふみかさんも役にバチっとはまっていて、まるで初演時メンバーが再演しているかのような一体感がありました。
また、この座組のメンバーさんたちは声がめちゃくちゃ良いのですよねぇ。もちろんほかの作品の皆さんも美声なのですが、バラエティに富んだ美声が揃っていて好みでした。

佐藤誓さんの真面目さと誠実さと芯の強さある演技。
月影瞳さんの優しくも強いしなやかな美しさを持つ演技。
渡邊りょうさんの大型犬のような癒しを感じさせる演技。
佐瀬弘幸さんのイメージとは真逆の、人間として卑しい権力を持った人物(残念ながら当時だけでなく現在にもこういう人が沢山いるのが…。この間暴言を吐いていた某政治家とか)を怪演する姿。 
大内厚雄さんの冷静沈着な金が心の内を晒した際の表情の絶妙さ。
辻親八さんの苦労を重ねた人間らしく力強くハリのある力強い声の説得力。
菊池豪さんの日朝板挟みで心揺れ動く、ある意味とても自分に違い感情をもって行動する様が愛おしい。
原口健太郎さんの典型的上の顔色をうかがう上司でありながらもどこか人間味ある姿。 
谷仲恵輔さん演じる緒方の飄々さと言いたい事をズパッと述べたときの、あのギャップの格好良さ。
林明寛さんの暴力的な怖さだけでなく若者故の真摯さと正義感あふれる演技。
小口ふみかさんの見た目の美しさと内面の激しさが共存する姿。
そして、浅井伸治さんのまさに名を表しているような朴訥さが残る青年をなんのケレン味もなく真っすぐに演じている姿。

毎回言ってるので己の表現力のなさに頭を抱えそうになりますが、本当に素晴らしかったとしか言いようありません。
私が観劇したのは千秋楽だったのでダブルカーテンコールのあと「ありがとうございました!」とお辞儀する浅井さんに、終演後なのにウルっときてしまいました。 

また長くなってしまった💦
もし、ここまで読んでくださった方がいらっしゃったらありがとうございます。
そしてこちらも配信がありますので、興味あったけれど見逃したのであればぜひ。
■映像配信日程2022年9月17日(土)10:00~10月16日(日)22:00


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