2023.7.1(昼) 劇団チョコレートケーキ『ブラウン管より愛をこめてー宇宙人と異邦人ー』/ シアタートラム
シアタートラムにて劇団チョコレートケーキの新作『ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人―』を観てきました。
今作は1990年代という比較的現代な舞台なだけあって、いつもより当日パンフの用語集が薄い(笑)。
舞台の雰囲気もいつもより堅苦しくない。
とはいえ、やはり劇団チョコレートケーキ。
直接的差別だけでなく、偏見・無関心さ・マジョリティ側の無自覚さも【差別】の種になるという根深さ、そして当事者以外が語ることへの偽善(欺瞞?)性も問題提起されていて、非常にあれこれ考えたくなり、そして偏りがちになる考えを俯瞰することのできる作品なのは変わらずでした。
中学生の頃にイジメにあっていたり、現在も見た目で少しばかり差別的な視線や言葉(すれ違いざま「デブ」とか言ってくる人は5年くらい前よりは減ったけれど、今でもいる)を投げかけられたりする自分だけれど、それでも他者に対して差別的な思いを抱くことはあるわけで……。
実際、同じマンションに住んでいる外国の方と共有スペースの考え方の違いや騒音の問題などでどうしても相容れないことがあって(共有部についての認識が違うのか、“自分の持ち物を置いたり騒いではいけない”というルールが伝わらない)、そういう事でつい「だから〇〇の人は」などと言いたくなったりもして。
言い訳のようになりましたが、同じ日本人でもルールを守らない人はいるのについフィルターをかけて見がちになってるのは事実。
でも、自分がそういう要素を持った人間だという自覚は大切だと思うのです。
上手く言葉にできないけれど、これって危険な見方だよなという気付きが自分の抑止力になる。
あと、区別と差別の境界線は簡単に超えられ、さらに曖昧であることも。
話が逸れたので、もどします。
相変わらずといえば、私は劇チョコの舞台の照明と音楽と美術が好きなのですが、今作もやっぱり良かったです。
中央に置かれた特撮セットのジオラマと空の幕は特撮好きとしては見てるだけでワクワクしてしまうし、照明が作り出すジオラマの影で劇中劇の特撮技術を表したのもアナログな時代の特撮の雰囲気を醸し出していて「わぁっ!」と(とはいえ、かなり緻密な照明のあて方をしないと、あんなに綺麗な影は出ないはず)。劇中劇で一般市民が暴徒化する場面。役者の演技の豹変だけでも凄まじい迫力ではあったけけれど、あの、フィルム映像のようなセピア色への一瞬の切り替わりの照明がなければ、あれほどのインパクトを感じなかったと思う。
音楽もどれも絶妙な昔の特撮オマージュのような“それっぽさ“で思わずニリとしてしまった。たまらない。
去年の戦争六篇の当日パンフでこのあらすじを読んだとき、そしてタイトルを知ったとき、その「異色のエピソード」はてっきり『ウルトラセブン』の欠番回「遊星より愛をこめて」だろうなぁと思ったのだけれど、予想は外れて『かえってきたウルトラマン』の「怪獣使いと少年」(作中ではユーパーマンシリーズの「老人と少年」とタイトルを変えてはいた)がモチーフでした。
社会風刺を取り入れた特撮といえば円谷プロの作品が真っ先に浮かぶけれど、自分はウルトラマンシリーズは世代ではないので(一応異色な作品に関しては知識として知っている)、観ながら別の特撮作品を思い浮かべたり。
ウルトラマンや仮面ライダーよりも低年齢向けと思われてる戦隊ものだけど、自分が見ていた80~90年頃って『超新星フラッシュマン』とかは中国残留孤児をモチーフにしていたり、私の最も好きな特撮作品である『超獣戦隊ライブマン 』は学歴社会に対するアンチテーゼだったりと、結構社会情勢に対する問題提起してたりしてるのよね。
めちゃ暗くて重い回も結構あるし。ライブマン版“怪獣使いと少年」な「恐竜VSライブロボ」とか、ヒーローが市民から迫害されて何故こんな奴らを救わねばならないんだと吐露する「ナベ男勇介の叫び」とか、男性であるグリーンが怪獣を妊娠する「ママ! 寄生怪物の叫び」とか。だいたい敵役の組織がヒーローの同級生で(略)
と、また脱線してしまった。
これ以上語ると劇中の特撮監督と助監督のようになってしまうので、話を芝居に戻して😅
今回のキャストについて
脚本家・井川役/伊藤白馬さん。
不器用で真っすぐ、ちょっとオドオドした気の弱いキャラクターを好演😊 2回目の劇チョコ参加(昨年の『帰還不能点』時は照井健仁さんというお名前)にもかかわらず、なんだかとてもシックリ馴染んでいました。
メイン監督・松本役の岡本篤さん。
クリエーターの矜持と随所随所で見せる松本の持つ複雑な心の機微。クールだけれど熱さがある演技は流石です。ラスト間際で「ああ、そういう事だったのか!」と。
特撮監督・古田役の青木柳葉魚さんと、助監督・藤原役の清水緑さん。
特撮愛を熱く語るシーンでの早口さが好きなことを語るときのオタ(自分含む)で思わず苦笑。お二人とも『ガマ』の役と違いすぎ(*゚ロ゚)。特に清水緑さんはお名前なかったら絶対気が付かないレベル。
そんなお二人の、劇中劇のエキストラでの豹変。演出の妙と演技の妙がガッツリ噛み合って、ゾッとを通り越して恐怖すら覚えました。
テレビ局プロデューサー・桐谷役の緒方晋さんと、制作会社である東特プロのプロデューサー・岸本役の林竜三さん。
喋りや佇まいは緒方さんと林さんなんだけど、やっぱりいつもと雰囲気違うなぁと。
クリエーターや役者など表現者が中心の作中に大人の事情や世界を持ち込む役のお二人。
この二人とメイン監督の微妙なバランスの上下関係さが作品の土台となりリアリティを与えたと思います。
若手役者・下野役の足立英さん。
劇チョコではお久しぶりの足立さん。若手役者の素の無邪気さと劇中劇の迫害される宇宙人の演技の幅が素晴らしかったです👏 「差別はいけないことはわかるけど、自分の周りに差別なんてないから実感ない」からの下野君の心の成長と純真さ、眩しい。
ワンダーマンの役者・佐藤役の浅井伸治さん。
毎回毎回カメレオンな変化を見せてくださる浅井さんは「筋肉は全てを解決する」的な脳筋系役者役。熱いを通り越して暑苦しい圧が全身からほとばしっていて🤣🤣🤣 その振り切れっぷりに脱帽ですw
そして女優・森田杏奈を演じたのは、橋本マナミさん。
今回の出演がご本人からの逆オファーだったと知り驚き。女優役という事を抜きにしても立ち姿に華があって素敵だなぁと。
作中でなぜ彼女が【差別】の問題にこだわりを持っていたのかは明かされていないので、その話が聞けるかもしれない6日のアフタートーク回行きたかったなぁ。
劇団チョコレートケーキの作品でありつつも、ちょっと異色でもあった今作。
Twitterの感想で「新しい名刺代わりのような作品」と評してる方がいらして、まさにその通りだなと。
自分の言いたいことばかりで普段以上に感想らしい感想になっていない文章ですが、万が一これを読んで興味を持った方がいらっしゃったら、
東京でのシアタートラム公演(2023年6月29日~7月16日)のほかに
7月29日(土)・30日(日)愛知県メニコンシアターAoi
8月5日(土)長野県まつもと市民芸術館 小ホール
と公演ありますので是非。
ちなみに今回も配信ありますので、そちらもよろしければ。