酪農を使った社会課題解決
(編集中)
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牧場の成長ではなく地域の成長
clover farmの事業取り組みを考える際、いつも意識することは地域のことです。地域の課題解決やより魅力的な地域の創造、そして農業者として地域の方々により豊かな食文化を提供するための生産活動や基盤づくりを意識しています。それらをモチベーションとして、自身の牧場の経営改善に日々取り組んでいます。
酪農での社会課題の解決に資する
地域や社会には様々な課題があると思います。その全てに向き合い取り組む事は困難です。なにより、地域にはたくさんの方がいて、様々な立場や視点から取り組まれています。
なので、私は酪農家として社会課題に向き合い、乳牛を用いて地域課題の解決に取り組みます。
乳牛が地域に存在することのメリット
地域に対して生乳を生産していく一次産業としての機能
牛に与える飼料生産としての土地活用
牛から出る糞尿を肥料として活用する農業間での連携
社会や農村で出る未利用資源の活用によるゴミ削減
放牧による土地活用と景観の創出
酪農業に関わる業種の発展 など
牛がそこに実際にいるから生み出せる資源循環や土地利用の形を私は知っています。それら酪農の持つ特質を社会に向け発信し、その技術を駆使することが酪農家として、乳牛の社会的価値を上げるために必要なことで、乳牛を飼う事業者として、あるいは技術者として社会から求められる役割だと考えています。
酪農業が地域からなくなることは、社会課題の解決に不要なコストを支払い続けることになりますし、農地の利活用の幅を狭めることになります。加えて優秀なコンポスターとしての機能、植物性資源を動物性の食料に変換するライブストックとしての機能も失います。
日本においてこれだけの畜産の発達を達成できたことは、社会的資源として有効活用していくべきで、その産業を最前線で管理している私においては、その技術を今後も社会的課題解決に向けていく事が重要だと考えています。
HAPPY DAIRY COWSを考え抜いた
私が代表を務めるclover farmの理念がHAPPY DAIRY COWSです。
乳牛の幸せとは何か、幸せな乳牛はどういった牛なのかを考え抜くことを意図しています。
HAPPY DAIRY COWを考えると、アニマルウェルフェアやカウコンフォートといった牛の飼養環境や管理体制に意識が向きます。私は、これらの向上を目指すことはもちろん重要だと思いますが、真に乳牛の幸せを叶えるために最も重要視していることが「乳牛が人間に必要とされ続けること」を最大の目的にしています。
日本において野生の牛は存在しません。家畜として人間と共に生きてきた牛は野生に戻すことはできないからです。なので、人の都合で「牛乳はいらない。」「牛肉は食べない。」となれば、私たちが飼っている牛たちは不要となり数を減らさないといけません。それは牛の幸せではないと思います。
そのため、私は酪農家として乳牛の持つ生物としての能力と向き合い、それを活かせる技術者として人間社会と牧場をつなぐ役割を果たしたいと思い、行動するようになりました。
品質のい「牛乳」は今や潤沢に消費者の手に届くようになり、国産100%以上で供給される時代になっています。しかし、乳製品まで目を向けると、生乳換算ではおよそ6割程度しか供給できていないことになります。真に国産のもので消費者の食卓を彩ることは、食糧安保の観点からも重要です。そして、日本の農業、畜産の大きな課題は、自国の資源循環の中で食料生産が行われていない事だと思います。肥料にしても、飼料にしても輸入資材の利用が大半を占める状況では、自国の農産物がたとえ100%でも、海外情勢如何によっては生産コストや生産量に大きな影響を及ぼしてしまいます。
高度経済成長期と共に飛躍的に技術を育て、生産量を伸ばしてきた日本の農業も、今や高齢化社会であり人口減少が進みます。これは国内の労働力の減少と食料消費の減少を意味し、公的施設の維持管理のための増税あるいはインフラの衰退を意味します。今こそ生物としての人類が食い生きるために農業、農地を活用し、町社会で発生する食品残渣や有機的な産業廃棄物といった自国の資源を循環させる場とするだけでなく、人間の福祉などが抱える課題解決の場として活用していく事で、資源循環の中心となり、人間の営みが本来あるべき姿に近づき、よりサプライチェーンの短鎖化によって社会全体の食料供給のコストを下げ、人口減少下においても、今より安定した食料生産の形を実現するチャンスととらえます。
こうした牛乳、牛肉の生産だけではない本質的な食料生産体質の改善と、町社会の課題解決の場として多様な価値を創造していく事こそ酪農業のみならず農業全体の存在意義を高め、それはすなわちclover farmの掲げるHAPPY DAIRY COWS 乳牛の尊厳を守る人間社会での永続的な生存価値につながると考えています。
酪農業に何ができるか、酪農業が何をできるか
国吉地区だけで水田250haしかも減反指示50%以上
米どころとして米を作り続けてきた。広大な農地を省力化して管理できるものとして米の生産を推し進めてきたが、その代償として米からの転換を難しくしている実態がある。より低労力で地域に求められる生産を考えたとき、畜産業で利用する飼料生産が活路になるのではないか。水路が荒廃し再投資が難しい現実もある。中山間で獣害の被害もあるのであれば、米を諦め畑地化し、より粗野で被害も少ない牧草の生産を行うことは、畜産からも耕種側からも不足しているものを補い合う選択となるはず。
基盤整備事業から50年・条件不利地から耕作放棄地へ
再度土地改良事業を行うために準備が進む国吉地域。これにより生産性の高い、集約化される農地の改善には大きな投資がされます。しかし、今後生産性の低い地域は土地改良から外され放棄地へとなっていく。農業者が限られる中で畑地化も考えていかなくてはならない。ますます畜産の存在意義は大きくなる。
進む高齢化と過疎化・限界を迎える集落営農
兼業農家が多く、米以外の農業が難しかった。その兼業農家も高齢化が進み、自身での耕作が困難となったことから集落営農による農地の維持管理が続いてきた。それも問題の先延ばしであった。農家は育たず農村の過疎化は進み、結果的に農業従事者の更なる高齢化を進めることとなり、農業の多様化はもとより集落営農の維持自体が困難になってきている。
人口爆発に対応すべく輸入飼料で増産を続けた酪農からの転換
畜産に限らず農業も国外からの資源を流入活用し、それを栄養源として畜産物や穀物、果菜類の生産が行われてきました。爆発的に人口が増えた高度経済成長期において見かけの食料自給率を上げることは意味がありました。しかし、それは本質的な食料安全保障とは程遠いという事を、新型コロナウイルスによる社会の混乱をはじめ、ロシアウクライナの戦争をきっかけに思い知らされました。今後、食料の適正価格を語る際にも、その食料が自国の資源で生産されていなくては、常に海外情勢に振り回され適正価格は乱れ続けます。農業者としても、生活者としても、食料の適正価格を探るためには、互いに理解し生産の仕組み自体を正していく事から始めなくては、日本における食料の適正価格は定まりません。
人口が減少している今こそ、食料生産が落ちることの負担は少ないと思います。今ある日本の国土と資源、これまで培ってきた生産技術と向き合い、正しい適正価格を見つけるために、まずは生産者は自国の資源で食料を生産する技術者としての能力を発揮するべきだと考えています。