そこに山があるから
一度言ってみたかったセリフだ。
実は私がフォローさせていただいている『フシミ千寿の備忘録』さんの記事『初 富士登山ガールになりました』を読み、いてもたってもいられない気持ちになったのだ。
山登りがしたい❗️
登山靴やピッケルは無いがある装備で登ろう。
私はザックに軽く羽織る物と万が一遭難しても一日凌げる飲料水、スキレットに入れたウィスキー、そしてお弁当を作り荷造りした。
そして荷物を車に放り込みハンドルを握った。
心の中で後悔の思いがあった。それはこれから登る山のリサーチ、そして雲の動向。全て出来ていなかった。
だが鉄砲玉の私は映画『岳』のサントラを口ずさみながら先を急いだ。
さあ、着いたぞ。
流行る気持ちを抑え運動不足だった体の柔軟体操、ストレッチで怪我に備える。
ザックを背負い登山口を目指す。
と、その時だった。下山してきた初老の男性とすれ違う。カラーシャツにスラックス、しかも革靴である。
おいおい、嘘だろ。完全に山を舐めきってる。ああいう輩がいるから山の事故が絶えないんだ。
全く何考えてるんだ。
とは言え私も充分な装備とは言えない。何かあったらいい笑いもんだな。とかぬかして歩き始めると、一瞬浜風に混ざってあの臭いが鼻をついだ。間違いない獣臭だ。
悪い予感が当たってしまった。
目の前には熊注意の看板が。
最悪な事態を想像してしまう。
明日の朝刊に『年齢、性別不明の遺体見つかる! 登山中に熊に襲われたか!』の見出しが。
だが熊も私の加齢臭に恐れ慄いたのか気配は消え去った。
日々鍛錬している空手チョップが空を切ることは無かった
命拾いしたな森の熊さんよ。
更なる試練は落石注意の看板。
一つ一つの石は小さいがこの石がまとまって襲ってきたらと考えると背筋が凍る。
ところがここで異変に気がついた。ここさっきも通ったんだが!どうやら道に迷ったようだ。
だが落ち着け!GPSがあるではないか、グーグルナビで自分の位置を確認。登山道に戻る事が出来た、スー、ハー。。
どれくらい登ったろう。気がつくともう山頂ではないか。低酸素症かもしれない、気をたしかに持って山頂制覇の喜びを一人噛み締める。
あのエベレストには回収不能のご遺体が眠っていると言う。幸いここにはそれらしきものはないようで安心する。
天候が急変する前に下山しよう。
その時だった、私としたことが右足から出そうかそれとも左足から出そうか考えがまとまらないうちに前へ進もうとしてしまい、見事にバランスを崩し前のめりになってしまった。
登山は上りより下りが危険とはよく言ったものだ。危うく滑落するところだった。下手をすると命は無かったろう。
そして下山。事故も無く帰ってくれた事を山の神、柏原竜二様に感謝するのであった。
この満足感はどこから来るのか?達成感は?
やりきった感満載の私の腹はエネルギーを欲していた。
急いで作ってきたウィンナー弁当をいただこうじゃないか。
今登山した日和山を見下ろし食べる弁当は複雑な味だった。
東北、仙台に日本一低い山があることはご存知でしょうか?その名も「日和山」。誰でも一瞬で登頂可能という、知る人ぞ知る人気スポット!一度は日本一の座を明け渡していたものの東日本大震災がきっかけとなり、再び日本一低い山に返り咲いたという日和山。