HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』クリア後感想
はじめに
少し遅くなりましたが、ドラクエ3リメイクをクリアしました。攻略状況は、あと「すべての呪文・特技を習得した」のトロフィーを取れば、トロコンできるというところまでです。追記:2024/12/5トロコンしました。
さて、賛否両論の本作ですが、先に書いておくと、私は楽しめました。
不満を感じたところも多く、実に惜しい作品です。
それでも、総合的に見れば、良作だと思っています。
良かった点
原作がドラクエ3なので、ベース部分は変わらずおもしろいです。
今となっては、RPGの基礎部分だけで構成された味気ない作風のようにも感じられますが、逆に言えば、RPGの楽しさとなるエッセンスが凝縮された作品でもあるのです。
個人的な嗜好に偏った感想にはなりますが、私はミニゲームやサブクエストの類が好きではないので、それらの追加が最小限に留められている点もとても良かったです。
(自分的には)その辺、FF7リメイクとリバースは楽しめませんでした。本筋に絡まない要素は全スルーしたので、図らずも、縛りプレイのようになってしまったくらいです。まあ、FF7は元々ミニゲームが多い作品なので、ここに文句を言うのは筋違いです。ゲームではなく、私が悪いのだと自覚しています。
では、ここからは良かったと思った点をひとつずつ挙げてみます。
グラフィック・音楽
現代的に作り直されたグラフィックや音楽は本作の魅力のひとつです。
ドット絵については後述しますが、背景は非常に美しく、音楽のアレンジも好きです。世界観というか、雰囲気が最高です。
本作の素材は、本当に素晴らしいと思っています。
難易度設定
ゲーム難易度は三段階から選択可能で、戦闘中以外はいつでも切り替えることができます。
標準の難易度を選んでも序盤はかなり簡単で、サクサク進めるようになっています。レベルは上がりやすく、装備品もそこら辺で拾えます。
つまり、コツコツと経験値やお金を稼いでいく必要がないのです。
これは、ドラクエ3を懐かしがってプレイする年齢層に優しい仕様と言えるでしょう。正直、今更アリアハン周辺でモンスター狩りしてる時間ないですしね。これは初めて遊ぶ方々にとっても、とっつきやすい設計なのではないでしょうか。
私は、勇者・盗賊・まもの使い・魔法使いでパーティを組んだので簡単すぎて拍子抜けしましたが、これは強い職業を選んでしまった結果だったようです。勇者・武闘家・僧侶・魔法使いで始めた妻のプレイを見ていると、本来はやや簡単寄りくらいの調整になっているのかなと感じました。
ステータス値の役割変更
従来のドラクエ3では「すばやさ」の値の半分が守備力となっていましたが、本作では新たに「みのまもり」というステータスが追加され、守備力はこの値を参照するようになりました。
また、以前はあまり意味を見出せなかった「うんのよさ」が重要ステータスとして昇華されました。状態異常の成功率と回避率、物理攻撃のダメージ、会心の一撃の発生率に影響しているようです。
というか、「うんのよさ」を上げると、これらの違いを如実に感じることができます。体感とか、そういう話ではないです。プレイ感がもう全然違ってきます。
本作は敵味方ともに状態異常が強いので、「うんのよさ」は非常に重要です。
今までどうでもいいという扱いだったステータスに光が当てられたのは良い変更だと思いました。
各種親切設計
フィールドやダンジョンの詳細マップがあること、ルーラの行き先が増えたこと、アイテムのソートができるようになったことなど、各所に遊びやすくなる工夫が施されています。また、一部ではありますが、不要であれば設定からオフにすることができるので、従来の遊び方を楽しむこともできます。
いまいちだった点
原作がドラクエ3なので、ベース部分は変わらずおもしろいです。
ですが、遊んでて楽しく感じる部分のほとんどが原作の楽しさなんですよね。上記のように良い変更点もありますが、追加された要素は必要性が感じづらいものが多かったです。
ドット絵
これはもう時代的に仕方ないことなのだと思うのですが、SFC版と比べると、雑さを感じます。また、オクトパストラベラーやトライアングルストラテジーのようなHD-2Dではなく、ただ3Dマップにドット絵のキャラを乗せてるだけに見えるので、どうしても違和感があります。
これなら、わざわざドット絵にしなくても、アナザーエデンのように微2D風の3Dにすれば良かったのではないでしょうか。
参考画像
アイテムの配置
本作はフィールドが広くなったので、従来より移動時間が長くなっています。その時間を飽きさせないためなのか、あちらこちらにキラキラ光るアイテムが落ちています。最近のゲームによくあるやつです。
さらに、フィールドには「ひみつの場所」と呼ばれる隠しエリアが点在しています。それぞれの場所から、アイテムや小さなメダル、後述する「はぐれモンスター」などを回収することができます。
これらのアイテムの配置については、かなり疑問を感じます。
まずキラキラですが、序盤〜中盤はかなり強力な装備品を拾うことができるので、お店で買い物をする必要がなくなります。これ自体はお金稼ぎの必要性が低くなるので個人的には歓迎なのですが、中には小さなメダルの景品となっているアイテムもあり、それらが小さなメダルの回収よりも早い段階で手に入ってしまうので、相対的にメダルの価値が低下してしまっています。
また、終盤は役に立たないキラキラが増えます。例えば、リムルダール周辺のキラキラからは、どうのつるぎを拾うことができます。実に微妙です。
確かに原作でも、終盤の町のタンスやツボの中からたびびとの服みたいなのが入手できることはあったと思います。しかし、それは民家にあるアイテムだから説得力があるというか、生活感の演出として機能しているわけです。
新規追加された落ちている理由すら謎のキラキラアイテムで、わざわざそれを踏襲する意味がわかりません。時間をかけて回収しても、何ひとつ楽しくない要素となってしまっています。
ひみつの場所にも同様の問題がありますが、こちらはもっとひどいです。
上記に加えて、ひみつの場所の場合はフィールド上からアイテムやモンスターがすべて回収済みとなっているか確認する術がないので、確認がものすごく面倒です。さらに、なぜかミニマップがないので、レミラーマを使用してもどこにアイテムが隠されているのか、地面を見て回る必要があります。しかし、雪のマップはその白さから光が目立ちづらく、元々キラキラ光ってるので、レミラーマが逆カモフラージュされてしまいます。
こういった手間をかけてアイテムを探し出すことは、ゲームとしての楽しさには何も直結しておらず、ただただ作り込みが甘いゲームの穴をカバーするだけの作業に過ぎないので、楽しくはありません。
はぐれモンスターも、まもの使いをパーティに入れるか、特定のアイテム・特技を使わないと保護することができないパターンがあります。
加えて(orではなく、and/orです)、昼・夕方・夜のいずれかでしか姿を表さない個体もいます。
これもただの手間です。
それまでできなかったことが、何かをしたことによって、できるようになる。これはゲームの本来的な醍醐味だと思うのですが、上記のような「毎回パターンごとに決まったアイテムか特技を使います」とか、「時間経過を待ってから再入場します」といった解決手段って、別に楽しくないですよね?
せっかくの要素に不便さしか感じられないのはとても残念です。
UI関連
おそらくこれは誰もが思うことでしょうが、なぜメニューの第一階層から「つよさ」を外して、「おもいで」を入れてしまったのか。
「つよさ」は最も頻繁に開く画面のひとつです。本作には転職があり、ステータス値が変更される機会が多いからです。
逆に、「おもいで」はほぼ使いません。なぜなら、本作にはガイド機能があり、町の人々から情報収集しなくてはならない場面が少ないからです。わざわざ当機能を前面に持ってくるのだから、何かそれを活かせる追加要素とかあるのかなと思ったのですが、SFC版からほとんど何も増えていません。
フィールド上で「とくぎ」と「じゅもん」が分かれているのも、手間が増えて操作性がよろしくないです。画面を統一してしまうと、ページ数が増えて確認や選択がしづらくなるというのは理解できるのですが、そこへの解決策が十分ではないように思います。
それだったら、L・Rボタンに任意の呪文や特技を割り当てられる、ショートカット機能を実装してほしかったです。マップの回転ができないのだから、L・Rボタン使う機会ないですし。
頻繁に使用するのは、「とうぞくのはな」「レミラーマ」「やせいのかん」「しのびあし」「くちぶえ」「あなほり」くらいなので、これらを適宜入れ替えて割り当てられればだいぶ快適になると思うんです。回復はまんたん/ほぼまんたんで済みますしね。
職業間の格差
新職業が強いのはSFC版の盗賊のときも同じだったので、まあこんなもんかとは思います。
しかし、僧侶には何か強みを与えて上げてほしかったです。
上述のとおり、序盤は簡単なので回復魔法の出番は少なく、簡単に賢者になれるのでダーマまで行けば僧侶の出番は完全になります。
魔法使いと違ってステータス値の優位性もなく、賢者と比べて装備品が良いわけでもありません。
勇者はトヘロスとベホマズンを使えるのでまだ出番ありますが、しんりゅうが叶えてくれる願いは、「勇者もおしゃれがしたい」ではなく、「勇者も転職がしたい」にしてほしかったです。ルックスA・Bになったくらいなんだから、クリア後に転職が容認されるような多様性を求めることは至って自然なことでしょう。
追加シナリオ
オルテガやオーブ収集関連で少し追加があります。これもひどい。
何がひどいって、追加された台詞や演出が全然ドラクエ3の世界観に合っていないことです。特にオーブ関連で追加された中ボスの台詞は違和感があります。
堀井雄二氏の独特な台詞回しを完全に模倣するのは至難の業かと思いますが、このリメイク作はご本人が監修されているのだから、もう少しどうにかならなかったのでしょうか。というか、追加自体しなくてよかったのではないでしょうか。ただでさえ浮いてる台詞に声が付くので、尚のこと悪目立ちします。
オルテガもオルテガで、これまで曖昧であった部分に説明が加わることで、彼自身のあり方がすごく微妙に思えてしまうのはなんだかなといった感じです。自分の名前が魔物界隈で知れ渡ったからって、なぜありふれたオルテガという名を捨てて、ポカパマズというめずらしい名を選んだのかも、よくわかりませんでした。
その他
難易度は低いと書きましたが、試練の神殿の難易度だけはどうかしてます。敵の強さや縛りが明らかにおかしいのですが、これはまあ一応、本作のエンドコンテンツ的なものだと思うので、しょうがないかという気がうっすらとしないでもないです。ただ、やはりこれも面倒なだけでゲーム的な楽しさは皆無でした。
トロコンに関しては、「魔性の消えたモンスターをすべて保護した」と「メダルおじさんから景品をすべて貰った」には辟易しました。
前者はまだマシなのですが、後者は上述した「ひみつの場所」の不出来さと、小さなメダルを集める意味の乏しさが目立ち、何を思ってこんな仕様にしたのか疑問に思えてしょうがなかったです。
まあ、これもただのやりこみ要素なので、気に入らないならやらなければいいだけの話ではあります。そういう意味では、他の不満点と比べると、軽度かなと思っています。
さいごに
細かいところを無視すれば、遊びやすく、現代の環境でドラクエ3を楽しむことができる良作です。ゾーマまでは十分におもしろく、しんりゅうまでは適度に楽しめます。
自分的には、不満よりも楽しさが勝りました。
人生初のトロコンしたくらいですからね!
名作のリメイクってどう考えても難しいし、新規獲得までをも目標としている場合は、誰もが満足するゲームを作るのは至難でしょう。しかし、「面倒」と「やりごたえ」を履き違えていそうなところだけは、本当にどうにかしてほしいです。
昭和や平成のゲームにあった不便さって、技術的にそのようにしかできないから受け入れていたというだけで、別に好きで不便なことしてたわけじゃないですからね。旧作をリメイクすることの価値のひとつとして、不便だった問題点を現代の技術で解決するというのがあると思うのです。
これからは、今後のドラクエの基準になれるくらい質の高いゲームを出していただけたらとても嬉しいです。
追記
書き忘れていましたが、敵が大ぼうぎょとかしてくる意味もわかりません。戦闘終了までのターン数が伸びるだけで、敵の理不尽な連続行動みたいに、戦闘に勝てなくなるような要素でもないですし、これをしてきたからって敵に個性を感じるわけでもないですし。これもいらなかったんじゃないかな。