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便利屋ファイル_1

2011年3月福岡市早良区にて_

「それで先方は何と?」

「2時間以内に済ませてくれるのであれば頼みたいだってさ」

「金の事は?」

「いや、特に。値切り交渉は一切なかったよ」

「よし。そしたら受けると連絡を入れといてくれ。俺は今の現場が終わったら準備に取り掛かるから。何か必要な物は?」

「新品のフレコンとロープがあればいいね。それで速攻で解決する」

「なるほど・・・なぁその依頼人、フィリピン人なんだろ?1Kの部屋に何人住んでんだ?」

「聞いた限りじゃ4人だと」

「4人!?マジかそれ」

「うん。俺が伺った時は3人いたよ。一人が目がクリッとしてて俺好みだった。あととにかく匂いがきつかったな。香水とかコロンの香りが凝縮されていた感じ」

「お前の好みはいいから。1Kのアパートに4人も住んでればそうなるわな。4人分の荷物か・・・フレコンで何杯くらい?」

「それが荷物は意外と少なくて、おそらく1人フレコン1杯で事足りると思う。だから4往復ロープで上げ下げすれば終わるぜ」

「若い女が4人もいてそんなに荷物が少ないのか。訳ありそうだね」

「まぁねぇ。俺たちにはどんな理由があろうと関係ないよ。アパートの1室から必要な荷物を回収してその日のうちに運ぶ簡単なお仕事。清掃もナッシング」

「okok 明日の現場が終わったらお前のところに合流するから。じゃあの」

「うい」

_夢だけが俺の原動力だった。

22歳の頃、故郷にお別れした。

よくある話。

夢を追いかけた青年が、いつの間にか夢じゃなく金を追いかけていた。

そんな話。

けれども、

そこから先の未来はよくある話ではなかった。


               便利屋ファイル_2に続く


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