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隠れ家から戦場へ、面白さの重心移動――新しいゲームの旅:Path of Exile 2(アーリーアクセス)
PoE1とPoE2、どちらかしか遊べないなら、私は1を選びます。
1より2のほうが快楽の密度が倍多いと感じるから。
それならnot for meで終わっても良くね?なんですが、Path of Exile 2(以降「本作」)は、それで終わらせるにはあまりにも勿体ない、面白さを言語化する余地のある作品だと感じています。
本作はPath of Exile(PoE1、以降「前作」)と同じ基本要素を持ちながら、前作の正統進化というより、遊びの重心を変えた別のゲームとして見事に組み上がっていると感じられます。
なので、前作はどこが面白くて、本作はそれがどこに変わったのかについて、具体的な変化を取り上げながら、お話ししてみます。前作しか知らないプレイヤーが本作に、本作しか知らないプレイヤーが前作に、興味を持ってもらえたら嬉しく思います。
自己紹介
視点に偏りのある話になるので、先に自己紹介を。
前作を2022年から遊んでいます。プレイ時間は1700時間くらい。
試行錯誤が楽しい、ビルドガイドはネタバレなので行き詰まるまで見ないぜと思ってますが、ハクスラのプレイヤーではどうやら少数派らしいですね。
The Mavenは1回倒しただけ、Uber Bossesは倒した事ありません。PoEJPのコミュニティイベントだと中級者扱いになるんだったかな。
前作とD4については感想記事を書いたことがあります。
ビルドのゲームから、プレイングのゲームへ
端的に言うと、前作はビルドに、本作はプレイングに面白さの重心が寄っています。座学からフィールドワークへ、隠れ家(クラフトやビルド構築をする場所)から戦場(敵と戦う場所)への遷移とも言えます。
まずは前作と本作の戦闘の映像を見てみましょう。
だいぶ印象が違うと思います。違う点はたくさんありますが、代表的なところを取り上げていきます。
スピード感
前作の映像は進行が速いです。慣れていないと何が起きているかわからない可能性もありますね。
前作は、速く移動して速く倒す事がどんどんできるようになっていきます。これがとても気持ちいいのです。
本作の映像は前作と比べるとかなり進行が遅く見えます。移動は前作にあった加速の薬やワープできるスキルがなくなり、敵も比較的しぶといです。
でも、本作の映像のほうが、ゲームっぽい印象を受けませんか?
本作は敵の攻撃を回避する行動をちゃんと取る事が大事に考えられてるので、速く移動できすぎて(敵を速く倒せすぎて)回避いらないじゃん!とならないように、スピード感は抑制的になっているのです。
前作も本作も死んだらペナルティがありますが、本作にだけ(ざっくりいうと)そのステージが最初からになる、というペナルティが追加されているため、慎重に進める圧が強かったりもします。
複雑さ
前作の映像ではスキルを1回使えば画面上の敵がだいたい倒せるスキルと、ボスなどのライフを高速に削るスキルの2つで攻撃しています。
前作の戦闘はバフとデバフを持った上で、しかし使うスキルは1-2個で押し通るイメージです。先述の加速の薬など、多くのものが常時起動や自動起動にできます。
極端なビルドでは攻撃スキルすら常時起動で、歩いてるだけで周囲の敵を倒していけるものすらあります。
本作の映像ではもう少しいろんな事をして戦っています:
炎の壁を立てる(手動)
そこから出てきたドクロが敵を攻撃、あるいは自爆する
壁を通して撃った電撃で敵を炎上させる(手動)
火の雨を降らせる(手動)
その脇で別の骸骨が爆弾を投げる
火に弱くする呪いをかける
死体を爆発させる
操作しているものだけでも3つ、ミニオンや自動起動を含めると倍以上、という感じです。
本作はスキルを組み合わせて戦う事が期待されたつくりになっています、例えば:
火の雨の魔法は、すでに炎上している敵に対して効果が抜群なので、先にどうやって炎上させるかが鍵
自動発動は、前作では例えば「指定したスキルのミニオンが死んだら発動」だったのが本作は「ミニオンのいずれかが死んだら発動」になっていて、組み合わせを考えやすい
使うスキルの組み合わせや順番を試行錯誤するのは、トレカやローグライトのコンボを試している時に近く、このスキルの次にそのスキルを使うとすごい敵のライフ削れんなー、とか、そういう発見の楽しみがあります。
ボス戦
前作の映像で最初に戦っているのはそのステージのボスです。これでもステージのボスとしては厄介な部類ですが、ビルドが整っているので難なく倒せています。
本作のボスはこんな感じです。
PoE2、(アーリーアクセスでは)act最後のボスとなるドリヤニ・ロボ(ハード)を倒した。 さすがに楽にはやらせてくれず。7回くらい死んだかな。 - 3秒後にこの範囲内の敵をぶっ潰すから逃げろ、まあ追いかけるがな!という広範囲攻撃 - 扇形ビームの薙ぎ払い 立ち位置が悪いと思い切り食らって死ぬが、ほぼ予兆なしで撃ってくるので常時位置取りを意識する必要がある この2つが厄介だったか。まあわかってしまえば、でかい分、動きがわかりやすく、取り巻きがいなくて凝視しやすいので、対応はできる感じだった。黒き顎に比べれば全然。
— 旅人くろっく (@clockworkstudio.bsky.social) 2025-01-02T15:39:24.526Z
本作のボスはちゃんと攻撃見て避けて反撃しないと勝てません。前作では全く意識しなかった「敵の向いている方向」を見る必要があったりもします。(逆にビルドに不備があってもプレイングでカバーできるかも?)私は下手なのと集中力がないので、長時間ノーミスを要求されると無理になります(ビルドを強くして短縮はできる)。
ただ、これって、アクションゲームの、特に昨今で言えばソウルライクのボスとしては、普通のことですよね。ちゃんと敵と向き合ってアクションバトルを楽しんでほしいという事なのだと思います。
戦闘の準備
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前作にあって本作にないビルド要素はすごくたくさんあります、いくつか挙げると:
強くはないが自分で強化内容を選んで付けられるクラフトベンチ
装備品に嵌められるようになったルーンがある程度代替
別枠の強化がつけられるインフルエンス
装備品のジェムソケット
スキルジェムはボードに嵌めるものになった
ベルトにもパッシブツリーにも嵌められるアビスジュエル
パッシブツリーの内容を書き換えられるタトゥー
パッシブツリーに接ぎ木できるクラスタージュエル
戦い方を劇的に変えうる多様なユニークアイテム
前作は1145種類、本作は276種類
多いということが大体伝われば大丈夫です。
これら全てに共通していることがあります。それは、「その存在、活用法、価値を知っていないと活用できない」ということです。
前作は座学も重要なゲームで、私は実際のプレイをせずwikiなどを読む時間だけで、プレー時間の1/3、大体500時間くらいは使ったはずです。ビルドガイドも、理屈を理解するための資料としては読んでいます。
なんか滅茶苦茶大変そうに聞こえるんですが、そうやって学んで、ゲームの中に自分の思考が通るように、手段を獲得していく課程は、それはそれで面白いものなんです。
今後アップデートが続いていくとどうなるかわかりませんが、少なくとも現状においては、本作のビルドやクラフトはコンパクトで、長時間の座学を必要としていません。なので、新しく遊び始めやすいのは間違いないとおもいます。
また、前作から本作で大きく変化したのはリロール(アイテムの効果を再抽選すること)についての考え方です。
本作は、アイテムの効果を消したり再抽選する素材の種類が減り、効果が弱まり、希少性が高まっています。
前作では、「マジックアイテムの効果を再抽選する」素材がそこら中で落ち、これを大量に使って理想のマジックアイテムを作ってからレアアイテムに強化する、という手順がクラフトの定石です。前作の映像で手に持っている斧は、マジックアイテムでの再抽選を2000回行っています。本作にはこの素材はありません。
前作は、最初から強い効果がついている事を期待してアイテムを拾う事はほとんどありません。リロールを含めた多様なクラフトから手段を選んで、自分の理想のアイテムを作る段取りを考える面白さがありますが、それには知識が必要だし、いい効果のアイテムを拾う喜びは薄いです。
本作では、リロールを抑制することで効果が強い装備の価値を担保する目的があるように見えます。素材を集めて作るよりも、敵を倒して価値ある装備を拾うという、ハクスラの原点に近い喜びに回帰したいという事です。そしてこれも、必要とする知識が少ない分新しく遊び始めやすい事に繋がっています。
ビルドの戦い方が固まったあと
先ほど見た2つの映像は、それぞれ、既に戦い方が固まって、稼ぎのための周回をずっとやっていく段階に入っているものです。つまり、あの動画のような事を、何十時間も何百時間もやるって事です。
では、あなたは、どちらのほうが何百時間も続けられそうですか?私の答えは、前作のほうです。なぜなら:
前作は進行が速く、単純な操作で敵が吹き飛ぶため、作業といっても気持ちよさが十分に伴う
本作は進行が遅く、どこまで行ってもスキルを組み合わせて戦うため、繰り返しの作業に毎回複雑さがあり、時間経過に伴って苦痛が快楽に勝ってくる
と感じるからです。これが冒頭に書いた快楽の密度の話です。しかし私が「繰り返しに飽きやすい」のを考慮するべき事で、本作のほうと答える人もいるのでしょう。
両方遊んでみてほしいんです、前作も本作も
前作PoE1と本作PoE2の違いについてお話ししました。
本作は「使うスキルの組み合わせや順番を試行錯誤」する所が面白いので、actクリアくらいまでならアーリーアクセス中に6クラス全員分やっても良いくらいなんですが、mapの最後までやるのは、年に1人くらいで良いかな…と思ってます。これからのアップデートの内容次第でもあります。
まとめると、PoE1とPoE2は面白さの重心が違うゲームなので、
PoE1のプレーが単調と感じる人にはPoE2は刺さるかも
PoE2のビルド要素が物足りないと感じる人にはPoE1は刺さるかも
どちらかしかやっていない人は、もう片方をやってみると、はまれる可能性があるのでおすすめです。
まあ、PoE2は、正式リリースでは基本無料になるので、それまではPoE1をやりながら待つという手も、あるんじゃないでしょうか…😎