ただヘイトをばら撒くにとどまらない絶対的なキャラクター
上記の漫画について、私は特段面白いとは思っていない。Twitterでなにかの宣伝で流れてきて、1巻買って読んだ。それだけ。2巻目を買おうとは思わないし、これから一生その機会はないはずだ。
しかし私はこの漫画のとある登場人物に強烈に感銘を受けたので、その話をしたい。
この漫画には西野くんという悪いやつが登場する。彼はすごく悪い。いじめを働き、気に入らないやつはボコり、刺し、油をかけて燃やす。
彼は「俺の人生爆笑かブチギレしかねぇ」と豪語する。主人公の優馬くんのアナルに色んなものを突っ込んでせせら笑いながら、取り巻きの二人にピースをさせて写真を取る。
なんてことはない、よくいるぶっちぎれたチンピラの様に思える。しかし彼の本当にぶっちぎれたところは彼が展開的に「成敗」されてから本当に発揮される。
彼は主人公の友だちのアメリくんに拉致され、地下の拷問部屋で椅子に縛り付けられてボコられる。
さしもの西野くんと言えど、こんな目に遭えば泣いて許しを請う。なんてことは全くない。指を詰められても、何日も放置されてズボンの中が汚物まみれになって膨れても、「殺す」「殺す」「ぶっ殺す」と呟きその炎を絶やさない。
ついには彼はその戒めを自力で解いてしまう。そして待ち伏せをし、話し合いをしようと現れた優馬くんをすかさずボコる。自分のズボンに溜まった汚物を優馬くんの顔になすりつける。
しかし、すんでの処であらわれたアメリくんに西野くんはまたボコられる。さらに、あろうことかアメリくんは西野くんの顔に酸をぶっかける。ヒィィィ!とけつをまくるかと思いきや、彼はそうならない。その場では痛みに叫び声を上げようとも、アメリくんのきざったらしいセリフに対して即答で「どうもこうも終わりはお前らがのたうち回って死ぬってオチしかねぇぞ」と笑って言い放つ。私は「こ、こいつただもんじゃねぇ!」と思う。
彼はその一貫したキャラクターによって危ない魅力を手に入れたのだ。対して西野くんの取り巻きの二人というのは、これはもう絵に書いたような完全なるゴミだ。中途半端なゴミというのは、散々ヘイトを貯めた挙げ句、やっとそれを精算する段になったとしても、こちらとしては雑魚がみっともなくやられている処を見させられ「それはそれでなんかかわいそうで後味悪いな」となるだけの、なんともスッキリしない、捨てる間際の水彩絵の具バケツの水のようなやつらだ。実際、作中でも描写すら無く事後ボコられという形で退場している。価値がないのだ。
この漫画には他にも「マジで本当にゴミなんだけど、突っ切りすぎてて逆にキャラクターとして魅力的になっている」というパターンの子がいる。牛島くんという子は、中学三年間ターゲットの女の子を動画で脅して寄ってたかってアレしまくっていたという絵に書いたようなアレなのだが、その考え方が妙に達観していてなんだか読んでて不思議なことに、あんまり不快感がない。
しかし彼の取り巻きはやっぱり凡百のクズであり、その辺にいるただの「みにくい人間」でしかない。その対比がまた彼らのキャラクター性を際立たせているのかも知れないが。私はどうも、この漫画から「素晴らしい悪役の描き方」を見出せるような気がしてならない。