そそわSSレビュー2
「いいな」と思ったSSのみレビューします。
☆★★:よく楽しめた
☆☆★:非常に楽しめた、あるいは好きだった
☆☆☆:非常に楽しめ、好きだった
※作者名敬称略
作:あった
著:ギョウヘルインニ
星:☆☆☆
https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1604575065
ピーへの道は善意で舗装されている(https://coolier.net/sosowa/ssw_l/230/1595855383)を
読んだ時にも同じことを感じたが、この方の書く作品の素晴らしい処はその「徹しぶり」にある。
「このSSはしょうもない会話劇ですよ」
「肩の力を抜いて楽しむんですよ」
「この子たちはかわいいですよ」
と、作品の冒頭時点から全力で主張してくることだ。
そしてその認識を植え付られた読者が求めているもの
(要は、単にかわいいキャラクターが十全にかわいいということである)をある程度きちんと提供して終わらせている。
職人芸に近い仕事だと感じられる。安心して読める。
「ただかわいいだけのSS」としては理想形に近いのではないだろうか。
作:誤受信
著:転箸 笑
星:☆★★
https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1604484042
掌編を書く上で重要なのは引き算である。
それでいうと、このSSはいくらか失敗している部類には入ると思われる。
にとりは自らに送信されたメールの送り主について考える。
それ自体はごく自然な流れであるが、それがオチに生かされているとはどうにも考えづらい。
作劇的に「唐突」の扱いは非常に難しいが、少なくともこれが「クリティカルな使用法でない」ことは感じられる。
しかしそれでも、自然な故に目の滑ることなく軽く楽しめるものへまとまっているとは思う。
私は最初この著者の作品が本当に苦手で、よく陰口を言ったりこき下ろしたりしていた。
しかし成長率が凄まじいのかここ最近は読めるものが増えてきており、私の掌がドリルになった。
1年後には2000点取れていそうな気がする人であり今後の作品にも注目していきたい。
作:波止場の兎
著:岩檜葉
星:☆☆★
https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1603728352
文章としてはレベルが高く読みやすい部類に入る。
しかしこれが好みの分かれる作品であることに疑問の余地はない。
これはSF的であり、ほぼ幻想郷を語るものではない。
登場人物がいっぱい死ぬ。
それであっても、これを一度読み始めたならば途中で投げ出すべきではない。
陰鬱さの果てに手に入るのはほんの一握りの清涼感でしかない。
私は「これを読み始めてしまったことは或いは不幸かもしれないが、最後まで読んでよかった」と思えた。
少なくとも、真摯に向き合って書かれたものではあるのだろうと感じた。
言い回しの回収の仕方が心地よいので新作が出たらそれも読みたい。
その時はできれば明るい話だったらいいなとは思う。
読むのは明るい話が好きなので。