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天文のこと雰囲気しかわからんやつがウズベキスタンの巨大六分儀を見に行った話

やぁ、これはmisskeyのサーバーの一つであるバーチャル火星「かせいすきー」のAdvent Calendar 2023、13日目用の記事だよ。
このバーボンはサービスだからまずは飲んで落ちつきますね。

※書いてる人:トッ氏(@clockGecko@kasei.ski)
たまに恐竜2頭を連れて地球旅行しているバーチャル火星人(かせんちゅ)。
最近はカスタム絵文字をねりねりするのが楽しい。

せっかくバーチャル火星人をやっているので天文に関する話題をやっていきます、よろしくどうぞ。


みんなたちは六分儀という道具をご存じですか?


六分儀:視認可能な2点間の角距離を測る計器の一種だそうです。Amazonでも買えます。
あとグラブルのアイテムとしても検索結果に紛れ込んでくる。(そうなんだ)
これらは航海用に小型化されて以降のもので、元々は天体観測用の設置型のものが主流だったそうな。
自分は星座のあの絵でしか知らなかったかもしれん。ろくぶんぎ座とちょうこくしつ座って異彩を放っているよな。あとコップ座。

さて遡ること6年(6!?)、2017年の暮れから2018年アタマの冬休み。
なんか思い立って1人でウズベキスタンに行ってまして。
でサマルカンドでライトニングケーブルを無くしてヌァァンオンオンってなってたところをニホンゴワカルのお兄さん(なんと渋谷で働いてた元システム屋)に助けてもらい、なんやかやで車出してもらってガイドお願いすることになり、えっじゃああそこ連れてってもらおっかな という流れで行ったのがこちら。

『ウルグ・ベク天文台』


トッ氏は天文が分からぬ。
けれどもキッズの頃、進研ゼミのシールを集めて手に入れた天体望遠鏡で月を眺めるのは大好きであった。

まず敷地入ってすぐ視界に入るでっかい像がまじでかっこいい。

巨大イケおじがおれを見た!!!!!

つま先だけみんなが触れる位置にあるからそこだけピカピカになってるの大変かわちい。

こちらの盛れてるイケおじこそ15世紀のティムール朝サマルカンドの統治者であり、同時にゴリゴリの天文学者でもあったインテリ★ロードことミルゾ・ウルグ・ベク
ここは彼が造った天文台の跡地というわけです。15世紀やぞ。すごくすごい。

これだけだと仰々しい地下道入口に見える


この四角い門のような部分から少し中に入ると目の前に広がる……


ウワーーーッ!

おそろしい精度で子午線に沿って造られた
巨大六分儀遺構


元々は更に円弧部分が長い「四分儀」だったってほんとですか???

夢とカスタム絵文字と天体の観測設備は
デカければデカい方が良いとされている

この天文台のメイン設備となっていたのがこちらの巨大な六分儀(四分儀)

ここまでくると手元で扱うタイプの六分儀とはもうだいぶ性質が異なる。

天井の開口部から差した光がこの溝の内側に至ると太陽の南中の高度が記録できる。でそれを続けていくと……。
続けていくとどうなる?
知らんのか? 日々の「正午」の正確な時刻がわかるようになる。

現存しているのは地面に埋まっていたこの部分だけで、いまオモテに見えているトンネル状のものはこの遺構を保護する屋根でしかない。
本来はn階建てになるほどの巨大建築物として地上側にも張り出していたこれを覆っていたとか。見てェ〜〜それ…!

ウルグ・ベクのすごいのはこの設備だけではない。
当時のムスリム天文学者たちを各地から招きまくって最強天文学者集団をアッセンブルした点。強すぎる。
で、この天文台と学者集団を率いて成した仕事の代表が以下の三点。

・1年の長さをドン引きの精度で弾き出したぞ!
・1000近い恒星の観測データを独自の観測結果を元に更新してまとめたぞ!
・地球の地軸の傾斜角度も正確に叩き出したぞ!

かっこよ〜〜〜〜〜〜〜
これ、ガリレオとかティコ・ブラーエとかおれたちのケプラーが台頭してくる何年も前の話なのに計算の精度がそれらより精密っていうのヤバないですか????
恒星年に至っては現代の機器を使った計測との誤差約2秒だって。こわ。

この大量のデータの積み重ねによるデータベースの整備、というまさに偉業の達人。
なんかもうキャスターあたりでカルデア来て欲しい。ん、アーチャーか?ルーラー? あ、宝具はズィージ・スルターニーで。
15世紀つったらまだ脳筋たちが各地でバトル繰り広げてるころじゃんね。……いやこれはずっとだし今もだな。

なおこのような自然科学探究への姿勢とイスラームの価値観はやはり相性悪かったようで、この巨大六分儀(四分儀)もウルグ・ベクの死後まもなく強火イスラム勢に破壊され、埋もれ、その後ロシアの考古学者に発見されるまで450年もの間埋まりっぱなしだったそうな。
定命の者ってそういうとこあるよね〜。

併設の博物館の方には破壊される前の様子がわかる模型やら天球儀やらアプデされた恒星カタログの複製など(オリジナルはオックスフォードにあるらしい)が展示されており、盛れてない方(モンゴル文脈の方)の貴重な肖像画なども含め大変ニコニコできます。

写真が少ないのには実はワケが…


みんなたちもウズベキスタン行ったらウルグ・ベク天文台寄ってくれよな!


そんな宇宙級の偉業を成したウルグ・ベクなので何年か前にウズベキスタンの紙幣で当時最も高額な10万スム紙幣のデザインに採用されており、まじかよもうこれ目当てで再訪しますよ?!ってなってたのに、コロナ禍を挟んで数年経った今すでに別のデザインになってるっぽいと聞き涙。
現地銀行でウズベク語早口オタクやったらくださるかもしれないけどハードル……。

と、
そんなこんなでウルグ・ベクのことなにも知らないふわっとした状態で行ったにもかかわらず調べれば調べるほど大好きになってしまい、
天文のこと雰囲気しかわからんのにすっかり推し天文学者のような存在になってしまいましたとさ。
こういうことってあるんだな……。
やっぱわからんながらも惹かれるジャンルってあるよね…。

「しゅき」はどこに転がってるかわからないからみんなもあちこち歩いて棒に当たろうな!たのしいぞ!


それではみなさん、良いお年を!!!



蛇足1
余談なんですが首都タシケントでn番目くらいにでかい本屋で『Kitob Olami(キトーブ オラミ)』ってとこがあるんすけど直訳すると「本の宇宙」なのすごく好きなんだよな。universe的な語なので「世界」の方が適切なのかな。
このあたりって露語由来の語もちょいちょいあるけどこういうのはペルシャ語からなのすごくいい。

蛇足2
なんかの間違いでFGOに実装されたら誰か教えてください、プトレマイオスとかボイジャーとかとの絡み読みたすぎるので…。

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