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《1万円レガシー》時計式デーモンストンピィ【2024最新版】


明けましておめでとうございます。時計です

昨年はいくつかのmtgにまつわるnoteを書かせていただきましたが、有難いことにいずれも多くの人に読んでいただけました

今年もボチボチ書いていきたいですね

さて、激動の2023年が終わり、三度のモダンホライゾンが控える2024年となりました。特に去年の『指輪物語:中つ国の伝承』で加わったカード群は、レガシー環境にも目に見えて変革をもたらしました。去年の中頃以降、もはやレガシーは別物になったと言っても過言ではありません

ではそんな中で1万円レガシーは、特に最初期に名を上げたデーモンストンピィはどのような進化を遂げたのか、またどんな戦力を新たに獲得したのかを今回は解説していきたいと思います

相変わらず長い文章になるかと思いますが、よろしくお願いいたします

1.はじめに:デーモンストンピィとは?

本格的な説明に入る前に、まずデーモンストンピィというアーキタイプについてお話しします

MTG wiki にもあるように、基本はレガシー特有の《古えの墳墓/Ancient Tomb》《裏切り者の都/City of Traitors》や《金属モックス/Chrome Mox》を駆使し早期に大型クリーチャーを着地させることを旨とするデッキの一種です
ドラゴンやエルドラージの代わりに、3~5マナの飛行持ちクリーチャーをフィニッシャーにしています

このイラストかっこいい

黒におけるこれらクリーチャーの中には「コストの割に高スタッツ、その代わりデメリット持ち」というのがそこそこいるため、そいつらを素早く展開してゲームを掌握。あとは相手が動けない間にそれらデメリット持ちを始末するカードを待ちつつあわよくばフィニッシュ、という戦術を基本としています

もちろんそれ以外にも、レガシーストンピィ特有の《虚空の杯/Chalice of the Void》や《三なる宝球/Trinisphere》によるロックも可能です。特に三タマは《暗黒の儀式/Dark Ritual》から展開できるのでその辺では他の同型より柔軟に動くことが可能です

他のストンピィとの明確な違いとしては、やはりその妨害性能でしょうか。強力な特殊地形メタである《血染めの月/Blood Moon》は使えませんが、その代わりに黒のお家芸であるハンデスや除去を無理なく採用することができます
強力なインカーネーションサイクルの一角《悲嘆/Grief》や2023年の顔《オークの弓使い/Orcish Bowmasters》をデッキを歪めず採用できることは明確な強みと言えるでしょう

ホントどこでも見かける

いわゆるレガシー的なデッキとしては影が薄いものの、その強さは折り紙つき。特に昨年は黒単使いの某氏のご活躍もあって、このタイプのデッキを目にする機会も多かったのではないでしょうか

では翻って、時計式デーモンストンピィとは何なのか

特に「1万円」と銘打っているにもかかわらずモックスやら都やらの高級カードがないと成立しえないアーキタイプを何故名乗っているのでしょうか

次項では、このけったいなデッキについて解説していきます

2.時計式デーモンストンピィ

こちらが2023年で基本となった時計式デーモンストンピィです。リストだけで一目瞭然ですが、これはストンピィではありません

じゃあなんでストンピィって名乗っているのかというと、最初に私が考えた時に深く考えてなかったからですね
当初は《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》使いたくて考えたアイデアでしたが、流れ流れてこのような形になりました

インスピレーションが浮かんだ

基本的な戦術としては古のブリッツ(電撃戦)を基にしています

詳しくはリンク先を参照していただくとして、ざっくり言うとハンデスで相手の脅威を事前に捌き、当時最強格だった汎用Φ型決戦兵器こと《ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator》でゲームを踏み荒らすデッキです

逃げちゃダメだ

暗黒の儀式からの2ターン着地が基本の速攻型でありながら、コントロールも十分可能なほどのリソース干渉力を備えた剛柔一体のアーキタイプとなっています

wikiによると『デュエルファイター刃』に同様のデッキ使いがいたらしいので、古兵のプレインズウォーカーの中には馴染み深いデッキかもしれません(読んだことが無いので詳しいことはわかりませんが)

前に再刊の話出てたのにその後一切音沙汰無いのなんで?

現代ではあまり目にすることが無くなった所謂ビート・コントロールを曲がりなりにもデッキとして成立させられたのか。それはやはり深淵の迫害者の影響が大きいです

だくろうって一発変換できない

情勢複雑怪奇なレガシーといえども、意外と大型フライヤーをフィニッシャーにするデッキは多くありません。これはレガシーにおいてなお除去耐性の無い《濁浪の執政/Murktide Regent》が飛行持ちフィニッシャーの基準となっていることからも明らかです

レガシー情勢複雑怪奇なり

このマークタイドですらフィニッシャーとして成立させるためにはそれなりにターンが必要なのがレガシーにおける飛行持ちの実態。そんな中で最速2ターン目から君臨する6/6飛行トランプルが与える存在感は、往年の抹殺者以上のものでしょう

こちらは私が普段いるDiscordサーバー内でデモストを使い2022年に3-0を達成した方のレシピです。これた最初に挙げたレシピを比較すると、1年でかなり変わったのがわかると思います

ver.1.0ともいえるデッキは2022年には完成していましたが、2023年はこのデッキにとって数多くの収穫があった一年でした

次項からは、2022年から2023年の間に起きたこのデッキの変革を獲得したカードと共に解説していきます

3.2023年の変革

1.除去カードの大量追加

2022年から始まったファイレクシアストーリーの影響か、このあたりのセットでは黒のカードがかなり優遇されました。公式がハンデスを嫌っている現状、黒のお家芸といえる除去カードは《致命的な一押し/Fatal Push》以来となる革命が起きた時代でした

この一枚がターニング・ポイントだと思う

《切り崩し/Cut Down》から始まり《喉首狙い/Go for the Throat》の復活、そして何より汎用性のカタマリな令和の布告除去《シェオルドレッドの勅令/Sheoldred's Edict》は黒の繁栄の基盤となりました

特に優秀なのがシェオルドレッドの勅令。選べるモードは一つとはいえ、1枚のカードで色を問わないクリーチャー及びクリーチャー・トークンとPWをまとめて対策できるのは素晴らしく、現在ではサイドボードの常連として活躍しています

1枚3役

そしてメインボードの除去にも革命が起きました。《夜の犠牲/Victim of Night》の発掘です

よく見るとグロい

初出はなんと2011年、初代イニストラードのカードを何故今更引っ張り出してきたのか。それは、レガシー環境においてはほぼ唯一のノーデメリットの確定除去だからです

同じ黒の除去で比べてみましょう

《冥府の掌握/Infernal Grasp》は除去に際して2点のライフロスがありますし、《喉首狙い/Go for the Throat》はアーティファクトクリーチャーは除去できません。各種布告は「対象を選べない」という制約がついていますし、《英雄の破滅/Hero's Downfall》のような3マナ以上のものになると取り回しに難があります

では夜の犠牲はどうなのか
吸血鬼(Vampire)でも狼男(Werewolf)でもゾンビ(Zombie)でもないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」だけ

そう、ことレガシー環境だとデメリットがほとんど機能していないのです
より具体的に言うと、狼男はほぼ除外してOKで、吸血鬼とゾンビが若干可能性があるぐらいです。しかしこのカードを採用してからそこそこの時間が経っていますが、未だにこれら三種族をメインに据えたレガシーデッキにはお目にかかっていません

ごくわずかな「可能性」に目を瞑ることができるのならば、アーティファクトでも何色でもノーデメリットで除去できるインスタント2マナカードを扱えるのです。であれば、このくらいのリスクは飲み込むのが黒使いの覚悟ではないでしょうか

リスクは何味なんですかね

メインに優秀な除去、サイドにユーティリティな布告を手に入れた2023年は、デッキの基礎をより強固なものにしてくれました

2.《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》再録

ビート・コントロールというアーキタイプは、基本的にじりじりとリソースを削っていくデッキです。それは言い換えると、常に相手以上のリソースを抱えておかなければならないということでもあるのです

レガシーなら簡単かな?と思うのですが、低予算かつ黒で、となるとこれが中々難しい

黒のインチキリソース源というと現在MTG Arenaで暴れまわっている《ネクロポーテンス/Necropotence》がありますが、これは勿論レガシー禁止。加えてボブこと《闇の腹心/Dark Confidant》はまだそこそこ値段がしており4枚採用が難しかったのです

という感じで低予算のリソースカードの採用は急務でありながらも、中々うまくいっていませんでした

2022版に採用されている《地下世界の人脈/Underworld Connections》や《血の署名/Sign in Blood》なんかはその名残ですね。前者は1枚とはいえ実質土地が縛られることのリスクが、後者はリソース確保としては弱すぎたことがネックで次第に抜けていきました

そんな中、ファイレクシア:完全なる統一で再録されたのが《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》だったのです

構図が凝ってて好き

それまでトリム平均1,000円前後だったカードが一気に半額前後に、再録版であれば200~300円で買えるようになったことでリソース確保問題は一挙の解決を見たのでした

曲がりなりにもポスト《ネクロポーテンス/Necropotence》枠なだけはあってその強さは別格。1ターン目暗黒の儀式からの設置で次のターンからは2ドローとなり、そこからハンデスや除去を引き込めばリソースの差はすぐに埋まります

そして馬鹿にできないのが「初手からWillを切るか否か」の選択を相手に強要できるという点です

特に先行1ターン目で展開する場合、手札二枚を使わされるというのは結構なプレッシャー。加えてデモスト側が残りの4枚にハンデスや後続のカードを持っていた場合、無防備な手札にそれらの脅威が降りかかってくるということになります
かといって何もせずに通せば毎ターン2ドローでカードを引き込まれ、黒のお家芸ハンデスと除去でリソースをガンガン削られて負けに近づくという状況に陥る可能性が高まります

このような「不自由な二択」を相手に迫り思考リソースを削るというのもこのデッキの戦術の一つです

切るべきか、切らざるべきか

「兵は詭道なり」
どうせ騙し騙されるのであれば騙しを仕掛ける側にまわりましょう

3.《虚空の力線/Leyline of the Void》のおとぎ話再録

再録カードで大きかったもう一つのカード、それがエルドレインの森で再録された《虚空の力線/Leyline of the Void》です

使われる側からは夢も希望もない

トリム平均2,000円だったカードがまさかの1/4の値段に。ショーケースからストレージにやってきた最強格の墓地対策はまさに僥倖、このデッキに足りなかったパワーを大幅に底上げしてくれました

無論トップメタにおいても墓地を触らない、あまり使用しないというデッキはそこそこいます

しかしこの虚空の力線というカードに限っては、墓地を少しでも使うのであれば劇的に刺さるというその一点のみが存在意義のカードであり、その状況がある限り永遠に採用され続けると考えています

そんなカードが全盛期の1枚分の値段で4枚揃えられるようになったことで、より広範囲のデッキに対して睨みを利かせられるようになりました。黒いデッキなので、最悪素出しも可能なのがグッドですね

4.新規獲得クリーチャー

前述の通り、2023年は22年から続いたファイレクシア関連のストーリーが展開されていました。そのおかげで黒がフィーチャーされる場面が多かったせいか、黒のクリーチャーもまた豊作でした

やはりその筆頭は《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》でしょう

誰もがライフを奪われていく

4マナ4/5の優れたスタッツに、あって困らない接死持ち。そしてドローで誘発する能力はライフレースを加速させ、自身を勝利へ連れて行ってくれます

まさに完璧で究極な法務官ですが、この時計式デーモンストンピィにおいては採用できませんでした

理由は単純にその値段です。こいつ1枚でデッキが1~2個作れるカードは流石に手が出ませんでした

あとレガシーだと伝説持ちというだけで《カラカス/Karakas》の的になるというのも理由の一つではあります。いずれにせよ、このデッキでは噛み合わないカードでした

しかし、2022新人王が獲得できなかったからといって悲観する必要はありませんでした。2023年に獲得した2枚のクリーチャーがこのデッキに足りない部分を補ってくれたためです

その2枚こそ《ドロスの魔神/Archfiend of the Dross》《騎兵隊の血抜き師/Exsanguinator Cavalry》です

まずドロスの魔神、4マナ6/6飛行のポスト《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》。トランプルはありませんがそれでもフィニッシャーとしては十分なスタッツの持ち主です

黒き油の嵐を抱いて

そして目を引くのがその能力。「対戦相手のクリーチャー1体が死亡するたびに2点のライフロス」というのは一見地味に見えますが「クリーチャーを並べられて攻撃が通せず膠着する」というコントロール殺しの状況を打破することができる非常に素晴らしい能力なのです

また単純に除去に比較的優れる色を使っているため、誘発条件そのものも比較的簡単に満たすことができます。相手のフライヤーを除去して2点、ガラ空きの相手をこいつで殴って6点で計8点。Willやフェッチで削れていることを加味すればこのクリーチャーだけでライフを半分近く刈り取ってくれます

しかし、悪魔との契約は生易しいものではありません。油カウンターを4個持った状態で登場し、アップキープ毎にカウンターを減らしていくのは往年の《ブラストダーム/Blastoderm》を彷彿とさせる維持コストですが、維持できなくなった際のデメリットは“死”。カウンターが無くなれば問答無用の敗北が襲いかかってきます

死因は油切れ

デメリットにさえ気をつければ自己完結したフィニッシュ性能で勝ちをもぎ取れるまさに黒を体現したクリーチャー。このカードの登場によって、クリーチャーの採用基準が大きく変わりました

2枚目が騎兵隊の血抜き師。これは機械兵団の進軍の統率者デッキに収録されたカードなので、目にしたことがないという人も多いのではないでしょうか

子羊が第二の封印を解いた時

今まで採用していた3マナクリーチャー枠は《夜鷲のあさり屋/Nighthawk Scavenger》でした

これも悪いカードでは無いのですが、攻撃力が相手の墓地依存というのが明確に弱いポイントでした
特に先述した通りレガシーというのは墓地を使うにせよ使わないにせよ墓地対策だけは外せない、という環境です。加えて先に挙げたマークタイドなどで自分の墓地をリソースにするカードも多数あります

そのため、ただでさえ相手依存の能力なのにロングゲームや特定のデッキ相手には強くなるどころか弱くなるという事態が多発。その上、じゃあ抜こうとしても代役を務められる3マナ枠が中々いないという有様でした

弱くはないんですよね

そんな中で見つけたのがこのカード。統率者の情報をあまり追ってこなかったので発見こそ遅れましたが、その力は実に素晴らしい

3マナ2/3で威迫と絆魂持ち。黒単色としてはこれだけでも十分及第点ですが、「自分がコントロールする騎士がダメージを与えるたび」誘発する+1/+1カウンター付与と血トークン獲得が途轍もなく優秀です

特に擬似的なロード能力を持ちながら「このクリーチャー以外」という文章が無いため攻撃さえ通せば自分もパンプアップしていくというのは中〜長期戦を前提とするビート・コントロールにとても噛み合っていました。また血トークン自体もあって困るものではなく、手札で腐った除去や土地を変換できるのは痒いところに手が届くものでした

攻撃を通さなければならないというのは常に付きまとう問題ではありますが、そこのやり取りを軸に考えるのがブリッツの基本。ある意味デッキの本懐を抱いたこのクリーチャーによって、今まで弱かった「ビートダウン」が強化されました

5.クリーチャー評価の変動

上記カード群の登場によって、当然既存のクリーチャーの評価も変動しました。中でも評価を上げた3枚が《漆黒軍の騎士/Knight of the Ebon Legion》《ダウスィーの虚空歩き/Dauthi Voidwalker》そして《騒乱の落とし子/Spawn of Mayhem》です

まずはビートダウン適性の高さで名を上げた漆黒軍の騎士とダウスィーの虚空歩き。これらは運用上同じ扱いなので同時に解説します

先に虚空歩きの方を片付けますが、こいつに関してはあまり語るところはありません。2マナ 3/2で実質アンブロッカブルであるシャドー持ち。その上恒久的な墓地追放兼追放したカードの使用と至れり尽くせりなカードです

シンプルに強い

当初はサイドボードでの虚空の力線役でしたが、アンブロッカブルの3点パンチというのが単純に強くメインに昇格。こいつが2体並べばそれだけでゲームエンドも見えてきます

流石モダンホライゾン産というだけはあるカードですが、唯一のネックがその値段。Discordで話題になった時はそこまで値段しなかったのですが、ある時期から値段が跳ね上がっており現在もやや高止まりとなっています。参入しやすいを旨とした1万円レガシーでありながら、現状その壁となっているカードです

続いて漆黒軍の騎士ですが、こちらは上記の騎兵隊の血抜き師とのシナジーで話題になりました

タフネス2ってのが偉いんですよね

1マナ1/2で1ターンに4点以上ライフが削られていれば+1/+1カウンター獲得、(2)(B)を払えば+3/+3修正と接死を獲得という高いビートダウン性能も去ることながら、血抜き師と並ぶことでその性能はさらに凶悪になります

暗黒の儀式を絡めれば最速2ターン目終了時に2/3、次のターンから一緒に殴ればこのカードと血抜き師どちらの条件も達成できてカウンターが2個乗って4/5となります。ここまで来ると下手な火力では除去できず、さらにチャンプブロックやファッティでの足止めも3マナ能力で相打ち以上に持っていけるようになり、まさに一騎当千の大暴れができるようになります

また、この状況を嫌ってこいつに除去を切るのならば後に出てくる大型フィニッシャーが動きやすくなるため囮役としても最適。「不自由な二択」を体現した序盤・中盤・終盤隙がないカードと言えるでしょう

だからデモストは負けないよ

そして騒乱の落とし子。このカードが評価を高めたのは、デッキ全体のパワー向上が原因です

スタンダードの頃は1,000円ぐらいしてたような

先ほども述べたように、ドロスの魔神はその自己完結したフィニッシュ能力が最大の強みです。しかし、それを十全に活かそうとするのであればそこに至る過程をしっかりしないといけません

基本的に魔神が出るのはゲームも中盤以降なのですが、逆に言えばそこまでゲームを長引かせる必要があります。また、強制敗北のデメリットを持つ以上、相手のライフが削りきれないなどということがあってはいけないため、ある程度は詰めの段階まで踏み込んでおく必要もあります

今までの構築ではこの「中継ぎ」を担うクリーチャーが不足しており、文字通り詰めの甘さが敗北に繋がることもしばしばありました

ですが先のクリーチャーたちによってビートダウン性能が上がった結果「中継ぎ」にかかる負担が減少。詰めに入る前の段階を維持することのみに注力できるようになった結果、騒乱の落とし子に白羽の矢が立ちました

4マナ4/4飛行・トランプルという上々の性能で攻めも守りも可能。加えてキーワード能力「絢爛」によって3マナで出すことも可能。特にビートダウン性能の向上で絢爛を達成しやすくなったことは評価向上の追い風となりました

そして「自分のアップキープ時に各プレイヤーに1点ダメージ、その後自分のライフが10点いかならば+1/+1カウンター獲得」という能力によって、詰めをより容易にしてくれます。こちらが優位な状況であればそのまま立っているだけでそれを継続できますし、不利な状況ならばパンプアップした打点を飛行で叩き込んで仕切り直すことが可能です

寄り切れるのならばそのままフィニッシュ、抑えきれなくてもフィニッシャーに繋げやすい状況を作れるということで2019年登場の中堅が再びデッキに登用されました。実際かなり使いやすく、現在ではなくてはならない存在です

これら評価が上がったクリーチャーもいれば、評価が下がったクリーチャーもいます。その最たる例が《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》でしょう

空飛んでるけど

元デッキの顔が何故こうなったのか。それはこのカード自体が「詰めが甘い」からです

4マナ6/6飛行・トランプルの優秀さは確かに認めましょう。実際、上記クリーチャーたちの強さというのもこのスタッツと能力が基準となっています

しかしこのクリーチャーのデメリット「あなたはゲームに勝利することはなく、あなたの対戦相手はゲームに敗北することはない」がシンプルにこのデッキと相性が悪すぎるのです

先ほど「詰め」という言葉を使いましたが、この状況についてより詳しく考えてみましょう

ブリッツ系のデッキが有利な状況というのは、基本的に「相手のリソースを枯らしきった」ということを指します。相手の手札が0枚ならばカウンターが飛んでくる可能性はありませんし、フィールドにクリーチャーがいなければブロックは絶対にされません

しかしながらこれらのリソース、特に手札というのは恒久的に0にできるものではありません。デッキに入っているハンデスの枚数は限られていますし、相手は毎ターン必ず1枚はドローしていく、こちらはそれまでに妨害でリソースを吐ききっている都合上いつかその差は縮まっていきます

時間にも空間にもリソース差にも無限は無い

なのでこのデッキにおいて一度リソースを空にできたら、あとは素早くゲームを畳む必要性があるのです。全体除去を引かれる前に、ブロッカーを立てられる前に素早く詰めることが要求されます

ではそんな状況で迫害者を出すとどうなるでしょうか。相手にしてみればライフがマイナスになろうと関係無く、さらに色的にカウンターが無いのも分かってる訳ですから、悠々とカードを引き込むのを待てば良いのです。しかもその選択肢は大型クリーチャーでも処理手段へのカウンターでも、最悪それらを探せるドロースペルでも良い訳ですから、賭けとしては割の良いものです

一方こちらは、相手が何らかのカードを引くまでに迫害者を処理しなければなりません。こちらはドロースペルが少ない上にこちらはライフが0になれば負けですから、タイムリミットはかなり少ないです。しかもその間に上記の解決札を引かれればゲームセット。みすみす勝てるゲームを落としてしまいかねません

以前ならいざ知らず、強力なカードを多数獲得した現在にこのようなデメリットを背負う必要があるか?と問われると私はNOと判断します。このデッキでは、フィニッシャーを出せば必ずそのまま勝ち切らなければなりません。決して止まることができない中で、肝心のフィニッシャーに足を引っ張られては本末転倒でしょう

美学は確かに必要ですが、勝つことを目的としている以上時には非情な判断が求められるのです

4.時計式デーモンストンピィ in 2024

以上が、一年を通しての変遷や強化点でした。これらを踏まえた2024年版のデッキが以下の通りになります

まずは強化によって成立できたビートダウン型。ハンデスが少し弱くなりましたが、盤面への圧力が格段に高くなりました。漆黒軍の騎士+騎兵隊の血抜き師のパッケージを基本として、素早くゲームを畳める構築を目指しています

除去は勅令にしていますが、ここは環境によって入れ替えです。デルバーのような多少なりとも横に並ぶデッキが増えたら夜の犠牲に、逆に少数のクリーチャーやPWがメインのコントロールが増えたら勅令にするのが良い感じです。その際は枚数調節もしてください

こちらは従来のコントロール型。便宜上“Blitz”としています。こちらは最初の方で述べたように、ハンデスで捌きクリーチャーを定着させるタイプです

守りから攻めに転じるタイミングが少し難しいですが、「詰め」のタイミングについて解説した際の有利な状況を目指していけば自然と掴めると思います

また、こちらは逆に序盤の盤面圧力が弱いですがそれでも虚空歩きによるビートダウンは可能です。初手で暗黒の儀式含む4マナと虚空歩き2体があれば、積極的に狙いましょう

こちらでも除去の選択は上のビートダウン型と同じです

そしてこちらが、現在(2024/1)環境で暴れ回っているゴブリンへのメタを意識した時計式デーモンストンピィです

コントロール型をベースに、メインから《疫病を仕組むもの/Plague Engineer》を採用、サイドの《仕組まれた疫病/Engineered Plague》も含めて6枚体制で徹底メタ。主な目的は小粒なゴブリンを場に残さないようにすること。基本的に採用されているゴブリンが2/2であること・現状タフネスをパンプする常在型能力持ちが採用されていないことに着目し、展開そのものを防ぐデッキです

仕組むものというかばら撒くもの

また、爆発力の源にあたる《________ Goblin》はcip解決時にこいつがいないとマナが出ないためそこを防ぐことを妨害の要としています。そのために除去は夜の犠牲に、また小粒が基本のデッキなのでハンデス枠に《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》を採用。特にサーチ札にあたる女看守や盤面圧力担当の《舷側砲の砲撃手/Broadside Bombardiers》を抜きにいきましょう

能力解決時に場にいないとマナ出ない

また、ゴブリン以外には疫病を仕組むものが異物になる思われそうですが、「オーク」「人間」「マーフォークかならず者」を宣言すればデルバー系のデッキはほとんど機能不全にできます。現在(2024/1)のメタゲームから考えれば中々理に適っていると考えています

無論それ以外のデッキに対してもハンデスからのブリッツ的ムーブや虚空歩きによる速攻など、基本的な時計式デモストの動きは損なわないようにチューニングしています。ただ全体的に安定性を重視した結果、フィニッシュ力は先に挙げたパターンよりは下がっています

この対ゴブリン型に関してはまだ試作段階のため、強い弱い含めて一切不明です。このnoteを読んで実際に組んだ、闘ったという方が出てきてフィードバックが集まるのを期待しています

5.さいごに

以上が1万円レガシー:時計式デーモンストンピィの概要と変遷、そして最新型の紹介でした。ここの文章書いてる時点で1万文字超えてて自分でも驚いてます

有難いことに、このデモストでレガシーを始めたという方がちょくちょくいるみたいで私としても嬉しい限りです

原案考えた割に今までこのデッキについて書いてこなかったのと、新規や再録なんかで大分様変わりしたのに情報のアップデートが全くされていなかったので今回このような文章にしてみました

レガシーというとやっぱり参入ハードルが高いと思われがちですが、こんな闘い方もできるんだよというのが伝えられていれば幸いです

そして興味を持った方は、ぜひ一度組んでみてください。決して損はしないと思います

長文でしたが、読んでいただきありがとうございました

余談

普段はこちらのサーバーで活動しています。低予算でのデッキ作成だけでなく各々が考えたレガシー環境やデッキについての話やフリープレイなんかもやってます

レガシー以外のフォーマットの話もしているので興味がある方はぜひ一度覗いてみてください

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