独自の予約管理システムで待ち時間“ほぼ0”を実現。クリニックTENの開発チームが考えていること
2021年の5月に渋谷に開業した次世代型かかりつけクリニック・クリニックTEN渋谷。「スムーズな体験で医療をもっと身近に」をコンセプトに掲げ、スマートクリニックとして完全WEB予約・キャッシュレスを実現しています。それが実現できる理由は、独自で予約管理システムを開発しているから。
クリニックには、珍しい開発チームのいるクリニックTENですが、一体どうやってシステムを作っているのでしょうか?クリニックTENの開発チーム、丹さんと中島さんにお話を聞きました。
患者体験を優先し、待ち時間“ほぼゼロ”を実現するために。0-1で開発したクリニックTENの予約管理システム
ーー丹さんと中島さんはいつからTENに携わっているのですか?
丹:構想当初から関わっています。技術的な側面からクリニックの体験の設計や電子カルテをどう導入するのか、クリニックを設計するにあたっての物理的なUX設計などに関わってきました。最近ではクリニックTENで開発したプロダクトを外部のクリニックに提供することを目指した開発を行っています。
中島:僕は昨年の3月ごろ、クリニックTENの予約管理システムのリニューアルタイミングにジョインしました。プロジェクトマネージャーの立ち位置で携わっています。丹さんと同じく直近はプロダクトを外販するための製品設計やプロジェクト管理をを行なっています。
ーー開発チームには何人くらいのメンバーがいるのですか?
丹:実は2021年の11月までは僕一人だったんです。それが1年以上経ってだいぶ増え、現在はインターンや業務委託も含めて13名になりました。それぞれに役割分担があり、患者のUXの改善を主に行っているチームと、リニューアルや新規機能を作っているチーム、全体のPMを行うチームなどに分かれています。
ーークリニックTENが開発しているシステムとはずばりどういったものなのでしょうか?
丹:主に予約管理システムですね。クリニックTENは予約枠が15分刻みになっていて、完全WEBで予約・待ち時間なしが魅力ですが、そうしたWEB予約〜診察までをスムーズに行うための管理システムを開発しています。
患者さん向けの予約画面と医師用の画面がそれぞれあり、同じスキームで健康診断用のシステムが企業健診の労務担当者向けと医師用にあります。予約を行うと問診〜キャッシュレス決済の登録まで一気にできます。
患者さんの体験向上のために日々現場から情報を吸い上げ、プロダクトに落としていくのがクリニックTENの開発チームです。
ーー毎日現場からフィードバックがきて改善を行っているのですか?
丹:開院したての頃はそうでしたね。TEN運営チームと開発チームが一丸となって患者体験の向上を目標に日々フィードバックと改善を繰り返していました。最近はシステムのリニューアルも終え、クリニックTENの内部での開発は落ち着いていますが、システムをパッケージにして外部のクリニックにも使ってもらえるよう準備を行なっているところです。
カスタマージャーニーを作り、患者目線でシステムを開発
ーークリニックが1店舗目から独自のシステムを開発して導入するのはハードルが高そうですが、どうやって開発を行なって行ったのですか?
丹:既存のクリニック向けのサービスだとシステム自体が医師に向けたものが多いですが、利用者である患者視点で設計をすることを一番意識していました。
——独自に開発したシステムだからこその強みは?
丹:開発をはじめた当時はコロナ禍に突入する少し前で、完全WEB予約制のクリニックはほぼありませんでした。患者体験としては待ち時間がほぼなく、クレジットや問診を事前に登録できるのですぐに診察を受けることができることや、特にフォローが必要な症状であれば、事後的に医師からフィードバックを受け取れ、処方の受け取りもスムーズに行えることも独自で開発したからこそ実現したユーザー体験ですね。
中島:クリニックTENのシステムの強みは、プロダクトを提供しているだけでなく実際にクリニックがあることですね。
日々現場からフィードバックがあるので、すぐに改善してまた現場からの声を聞く、というPDCAをスピード感を持って回すことができます。
例えば予約日前日や直前のリマインド機能や、クレジットカードや問診回答依頼といった機能は現場からのフィードバックにより強化してきました。
また、診療科によっては医師からのフィードバックや予後の確認を行うといった機能を入れているのは、単に医療現場をラクにするだけではなくて、患者体験を考えた上での機能です。サービスを提供しているだけだと現場からの声はタイムラグが生じて改善にも時間がかかりがちですが、クリニックTENはシステムと現場が一心同体なのでそこは強みだと思います。
開発チームと運営チームが一心同体。同じビジョンを見据えて箱とシステムを作ってきた
ーーなるほど。現場の肌感と開発チームの感覚が共有されながらシステム開発ができるのはとても良い環境に思えます。これまでシステム開発を行ってきたなかで現状の医療業界の課題感などは感じましたか?
丹:日本は国民皆保険で全員が保険証を持っていて安く医療が受けられる。それは嬉しいことですが、逆にいえば医療者側がどれだけサービスを提供してもしなくても同じ価格、というのが日本の医療システムです。
そうなるとビジネスとしてのクリニック運営は、単価は上げられないから客数を増やすしかない、となってしまいます。そうなるととにかく待たせてでも患者さんをたくさんとって回転させる……という仕組みにしかならず、いつでも相談できるかかりつけ医という存在ができにくいと感じています。また、患者側も病院は待つものだからそうそう簡単に行けず、対処療法として病気になったら行けばいい、という意識が一般的になってしまう。構造的な課題があると感じます。
中島:国の構造としてサービスの価格が定義されているのは他の業種だとなかなかないことですよね。運営者の想いに沿ったサービスを価格を決めて提供、ということができない業界で、そうなってくると院としてのフィロソフィーやビジョンが生まれにくいのかなとも感じます。だからこそ新しいやり方もすぐには浸透しづらいのも感じます。
ーークリニックTENはビジネスパーソンに医療のハードルを下げてかかりつけ医を増やしていこうというビジョナリーなクリニックですが、システムを開発していく上でそうしたクリニックのビジョンをどうやって共有していったのでしょうか?
丹:開発当初、運営チームにエンジニアの私も一緒に入って伴走してきたのでクリニックTENのビジョンは感覚で共有できていましたね。同じ方向を向きながら開発を進めていました。そこからステージも代わり、メンバーが増えてきたのでこれまでは抽象的だったビジョンをより解像度を高め組織として共有できるように意識して動いています。
中島:僕は今年の4月にジョインしているのですが、クリニックTENの箱としてのビジョンとシステムのビジョンが合致しているのはとても感じています。箱としての方向性や軸があって、それをさらに強化して実現するためにシステムがある、といった役割で。5年10年後のビジョンから逆算して箱やシステムを作っている環境だからこそ運営と開発の想いがブレずに進めているのかな、と思います。
丹:クリニックTEN渋谷は0号店だ、というのはよく運営も当初話していました。今後、支店が増えていく中で、クリニックTENとしての在り方を定義した上で、ビジョンはブラさずにその土地に合わせた展開をできればと思っています。
ーー今後のビジョンを教えてください。
丹:まずは大都市圏の若年層に利用者を広げていく。そうすると10年後には今の若年層も高齢化していき、そうなっていくと病院にかかるのにWEBで予約は当たり前になっていく世界になるな、と思っています。そうなって欲しいですね、やはり便利ですし。
中島:今後様々な地区で新規開業を行なっていくにあたって、その座組みとして患者の体験を改善していきたいという意識を持ったドクターや開業医と一緒に新しい医療体験を作っていきたいですね。クリニックという存在に新しい価値観を投入していくのはチャレンジングなことで、クリニックTENも四苦八苦してやってきたし、リスクも大きい。なのでそうした苦労も含めて共感して一緒にやっていこうぜ、と思ってくれる仲間を全国に増やしていきたいです。
丹:時間軸の視座も大事にしているところですね。現状はいまのままで良いとしても、どこかの未来でいまの医療体制だと取り残されるかもしれない。そうした意識を持ちつつ、一緒にクリニックの未来を変えていける人たちを増やし、システム面から医療の在り方をアップデートできればと思っています
ーーありがとうございました!