「地元じゃないのに帰りたくなる場所」倶知安編
自宅から倶知安町まで往復6時間。
私はニセコ地域が大好きで、月に1度くらいのペースで倶知安町に訪れる。
私がこの町にここまで惹かれるのは何でだろう。
私が興味のある「教育」や「子ども」を入り口に倶知安町を見ると、どんな倶知安町が見えるのか。
という、新しい視点で倶知安町を見てみたくて、今回倶知安町を訪れた。
◆使える英語はここから。
"Hello. Are you Nanami?"
内心驚きながら、"Yes. Nice to meet you."
倶知安町の小学校訪問でのできごと。
倶知安町の英語教室「SMiLE Niseko」が行っている、小学校への教員派遣。その授業の様子を見に、倶知安町の小学校に伺った。
同じ大学の先輩で、SMiLE Nisekoに働いている大村さんに会うということで、まさか英語で話しかけられるとは思わなかった。
なぜ英語で話しかけられたかというと、倶知安町の小学校の英語の授業はオールイングリッシュ。
でも子どもたちは、この人は日本語を話せる人だと分かると日本語を話してくる。
だから、ここの英語の先生は英語しか話せないことになっている。
倶知安町で「SMiLE Niseko」という英語教室のオーナーをされているのはベイリー夫妻。
SMiLE Nisekoでは、
子ども向けの英語教室
倶知安町内の小学校へ、英語教員の派遣
大人向けの英語研修
などを行う。
倶知安町、日本の英語教育を変えるために活動されている。
「小学生でオールイングリッシュ……!?」
授業を見て驚いた。
全国的に、小学校でオールイングリッシュの授業をしているところは少ない。なぜ倶知安町の小学校で、オールイングリッシュの授業ができるのか。
それは、ただ外国人が多い地域だからではない。
ベイリーさんの熱い思いと、努力でそれができている。
◆一番の壁は英語。
昔、ひらふの外国人のコミュニティに、地元の人が入っていけないような状態だった。一番の壁は英語。このまま放置していたら、どんどん日本人と外国人は離れていってしまう。
「大人になってから英語の勉強をするよりも、語学を学ぶのに大事な児童期に、英語の勉強をすることが大切。」ということを、ベイリー夫妻は1年くらいかけて説得。
町長が動いてくれた。
それで、2018年に、SMiLE Nisekoからの小学校の教員派遣は始まった。
倶知安町は、外国人が多く英語が身近。だから、他の地域よりも「子どもたちに英語を使えてほしい」という大人の思いは強い。
小学校の英語教育を進めることに反発はなく、倶知安町だからこそスタートしやすかった。
でも当時、小学校の先生方からは「全部英語で授業をするなんて無理」と言われていた。
しかしトランプ遊びのように、子どもたちはやりながら学んでいく。それを見てだんだんと、先生方も英語の授業に参加し手伝ってくれるようになった。
そうやって、倶知安町の小学校の英語教育は少しずつ変わっていった。
◆良い英語教育は日本を変える。
語学学習をする際、子どもと大人では違う。
それは、脳の作りや暗記力だけの問題ではない。
子どもは間違えても気にしない。
子どもは耳で学び、知らないうちに身に付ける。
”だから、小さい頃からの英語教育は必要!”
また、英語ができると選択肢が広がる。
例えば、一見英語を使わないような産業や漁業でも、英語を使うことができればできることが増え、産業、漁業は強くなる。
このように、英語力をみんなが身に付けられたら日本は強くなる。
反対に、英語教育を変えなければ、日本は今のまま変わらない。
どんな子でも、指導者が良ければ実践的な英語を身に付けられる。
しかし、先生の教育を変えていかなければ、習う英語も古いまま。
悪循環。
だから、今の入試のための英語の授業ではダメ。
◆俱知安町は、日本の10年先を走っている。
ここの地域で起こっていることは今後、他地域でも起こる。
労働力で外国人は必要になっていく。
社長、上司が外国人かもしれない。
外国人が多く、英語が必要なこの町だからこそ、英語教育の大切さを発信できる。
「だからこの町で、小学校でも英語は身に付けられる、ということを立証したい」と、ベイリーさんのお話しには、熱い思いがたくさん詰まっていた。
◆日本人と倶知安人
ベイリーさんがお話ししてくださった英語教育の苦労と重なる部分もあるのだが、私は普段生きていて思うことがある。
新しいことをやろうとすると、無理だと言われることがあるということ。
その人は、やったことがないのに否定する。
しかし、それでも挑戦し続けると、応援してくれる人が少しずつ増えていく。
それを続けると夢が叶うこともある。
もし一番の夢が叶わなくても、頑張った過程の中で出来ることをすることも最高に楽しい。
だから結局、挑戦したもの勝ちだと私は思う。
でも、そう考えない人の方が日本には多い気がしている。
「やりたいことなんてない」
「周りの人がこうしているから」
「こうやって言われたから」
「みんながしているから」
と、誰かのせいにしたり、頑張っている人の悪口を言ったり、そんな人がたくさんいるように見える。
でもこの町は違った。
ベイリーさんとお話をしていて、この町は、その
”やったことのないことに挑戦する人”
がたくさんいることを知り、驚いた。
さらに、それを否定する人も、この町にはいない。
それは私にとって、とても魅力的だった。
なぜ、倶知安町にはそういう人が集まるのだろう。
◆「日本好き」じゃない、「俱知安好き」。
ベイリーさんが思う倶知安町の魅力の中に、答えがあった。
ベイリーさんが思う倶知安町の魅力を一言で言うと、「人の多様性」。
外国人も、日本人移住者も多い倶知安町。
だからこそ、外国人であれ日本人であれ、倶知安町の人はオープン。
違いを受け入れ、挑戦は応援してくれる環境がある。
外国人がマイノリティにならない倶知安町は、外国人にとっても住みやすい町。この町に集まる外国人は、「日本好き」というより「この町が好き」な人が集まる。
日本には、外国人労働問題がまだまだ残っている。
でもこの町では、外国人が稼げる町。むしろ外国人の方が待遇が良い。
英語も中国語もできるなど、技術や実力があれば活躍できる。
だからこそ、倶知安町には色々な人がいて、それを認めてくれる多様性がある。
きっと私が倶知安町に惹かれるのは、そこにあるのかもしれない。
でもその、「人の多様性」とは違う、倶知安町の魅力を教えてくれた方もいる。
ベイリーさんが、「昔の倶知安町も知っている方」ということで紹介して下さった、菅原さん。菅原さんが思う倶知安町の魅力を一言でまとめると、「自然の多様性」だった。
倶知安町にご在住の菅原さん。
長い間、北海道の小学校教員をされていた方だ。倶知安町で小学校教員をされていたこともある。
青年海外協力隊としてジャマイカで数学教育、タジキスタンで日本語教育もされていた経験から、今は倶知安町の西小学校で、日本語ができない子どもに日本語指導をされている。
外国人が多い倶知安町では、地域おこし協力隊の方や地元の人が協力し、外国人に日本語を教えている。
◆人を集める自然を大切に。
そんな菅原さんにとっての倶知安町の魅力は、やっぱり自然。
昔と今の倶知安町を比べると、今は色々な国からの観光客もかなり増えた。それでも倶知安町の自然はとても魅力的。
しかし、開発が進んでいるからこそ、木の伐採があったりもする。
雪があり、お金が入ってくる限り、倶知安町には多くの外国人が集まり、これからも賑わっていくだろう。
それは、ありがたいこと。
でも、だからと言って、
「木とか、どんどん切ってほしくない。」
というのが菅原さんの思い。
倶知安町には、”人を集める自然”がたくさんある。
だからこそ、自然は大切にしなければいけない、と私も思う。
SMiLE Nisekoの大村さんも、「観光資源である雪は、住む人にとっては少し大変だけど、みんな助け合って除雪をするのも倶知安町らしさ。
倶知安町の人の温かさの理由には、その助け合いの精神も1つあるのかもしれない。」とおっしゃっていた。
観光資源であり、人を温かい気持ちにさせる自然。
この町だからこそ、開発は進んでも、自然は大切にしていかなければいけないと思う。
◆かっこいい大人がいる町。
今回の倶知安町の訪問で、新しい視点から倶知安町を見ることができ、新しい倶知安町に出会うことができました。
たくさんの温かさをいただき、ますます倶知安町が大好きになりました。
ベイリーさん、大村さん、菅原さん、温かく迎えてくださり、たくさんお話をお聞きできて嬉しかったです!
ありがとうございました。