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なの日記「雨男との距離」

僕は高校で雨男と知り合った。
彼はいつも面白い場所へと導いてくれる人だった。
見た事ないものや行った事ないところ、やった事ない事など静かに案内をしてくれた。
ただそれぞれがそれぞれの大学へと進学して以降、気がついたら会えなくなっていた。
連絡先も分からない。
ただ久しぶりに顔が見たい。
また話をしたい。
そう思っても、会えない人は居るんだな。

SNSが普及し、大半の人が携帯を所有して常に連絡を取り合っている。
そんな世の中で、文通を楽しんでいた僕らが懐かしく愛おしい記憶として残っている。
でも今はもう連絡手段が残っていない。

なんだか不思議な感覚で、それもまた彼に連れてこられた場所のように思える。

彼は太く短く人生を歩んでいるようで憧れる生き方をしている。だからこそ僕の事を忘れてしまったかもしれない。
ただまたどこかのバーでふらっと鉢合わせたいだなんて思いながら夜の街を歩いた。教室でたまたま隣の席になったようにまたフラッと巡り会いたい。



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