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敵わないひと ── 小惑星Hebe・Vesta・Lovingを考察する

 珍しく、好きなひとの夢をみた。

 何しろ私のみる夢ときたら、悲惨なものばかり。
 会社や職場に辿り着けない。
 自宅に帰ろうとしたら、階段が途切れていて帰ることができない。
 ひとりで何処かに旅をしている(これは悲惨ではない)など。

 それに、夢自体をみることも珍しい。

 浴衣?を着た私が縁側から庭へ足を出して座っている。
 その後ろでテーブル(ちゃぶ台のような)に向かい、○○を作れねえかなぁ(食べ物だったと思うが忘れた)などと話す私の好きなひとに、私が「それは○○(これも忘れた)でなければ作れないんですよ」と言って笑いながら振り返る。
 ただ、それだけの夢だけれど。


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 小惑星Hebeという星がある。
 ヘベはギリシャ神話の女神でゼウスとヘラの娘。大層美しく、神さまたちの集まりのときには飲み物をお酌する役割を担っていたとのこと。

 ネイタルチャート上でこのHebeが個人天体やアセンダントとコンジャンクトしていたりすると、そのネイタルチャートの主はとても若々しく、美しいのだそうだ。
 ふうん、と思いながら自分のチャートを見てみたけれど、MCには近い……近いけど……うーん、よく分からない。
 残念ながら個人天体との絡みはなかった。

 このHebeはシナストリーチャート、つまり相性図においては「虜になる」という意味をもつ。
 相手の個人天体にコンジャンクトしていると、その相手の、文字通りに虜になる、と読める。

 胸騒ぎがしたのでシナストリーチャートを作成してみると、このHebeは見事に私の好きなひとの金星にきっちりとコンジャンクトしていたのだった。

Hebe(6)ネイタルチャートでは若さと美しさ。
シナストリーチャートでは相手の虜になる。言いなりになってしまう。抵抗できない状態になってしまいやすい。

 ああ、そういえば今朝の夢のなかでも、私は「全く仕方のないひとだなぁ」という気分で笑っていたんだっけ。
 まったく、あなたには敵わない。
 そういうニュアンスの。

 夢のなかまでもこの有り様なのか、私は。


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 私がうっかり好きになってしまったのは140歳以上も歳上の昔のひとだ。
 馬鹿げているのは重々承知で、けれどここまで4年近くも経ってしまった。

 もう私はさして若くもないし、少し大きくなった娘もいる身だから、多分もう誰かと恋愛をすることもない。
 だから別にいいのだけれど。

 そんな時間のエアポケットに落ちてしまったような、そういう気持ちをずっと持ち続けている。

 『推し』と定義するにはやや重いし、『運命の人』と定義するにはやや心許ない(それだけのインパクトも波及効果も充分にあったけど)
 ただそのひとを鑑賞するのではなく、「光」として心のなかに在り続けている。
 どう名前を付けていいのか分からないその気持ちを、とりあえず「メンター」と思っているけれど……

 これでいいのかどうかは、私にも分からない。


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 このHebeとよく似た小惑星に、小惑星Vestaという星がある。

 このVestaはギリシャ神話における竈の神、ヘスティア。炉や家族、家庭を司る処女の女神なのだという。
  神話では宇宙の中心にある聖なる火を決して絶やさないように見守ること、これがヘスティアの仕事であったといわれている。
 結果、この女神が権力闘争やら色恋沙汰に関わることはなかった。

 このことからVestaの象意はストイックさ、隷属すること、献身、心の奥で大事に守る灯、などといわれている。

 Hebeとヘスティアが違うのは、能動的であるか否か。
 ただ諾々と従うへべに対して、ヘスティアは望んでその仕事に就いたという。
 だからこその「虜になる」ではなく「献身」であって、「隷属する」には「隷属させる」の意味も加わる。
 流されていくのではなく、巻き込んでいく。


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 このVestaは、私のネイタルチャートのなかの、重要な場所に位置している。

 太陽とは正確なトライン、月星座とはコンジャンクトしていて ── ああ、私がクソ真面目にしか生きられないのはこのせいか。
 職場や社会のなかに必ずいる、狡賢く抜け目のない誰か。そういう誰かをも何故か粗末に扱えないのは、この星回りのせいかも。
 貧乏籤を引いてしまうのもこれか。

 シナストリーチャートでは、件のひとのVestaはそう遠くない位置にあった。
 うーん?でもこの辺りになにかあったような。

 そう考えて、しばらくして思い出した。
 小惑星Loving。
 象意はそのまま「愛すべきひと」

Vesta(4)使命、献身、ストイックさ。隷属する(隷属させる)バランスのとれた女性性。
Loving(432971)愛すべき人。また、純粋で忠誠的な愛情。

 ああ、そうか。

 そういえば、私は「どんなひとが好きなの?」と酒の席で気の合わない、飲み方の汚い男に問われるたびに「ストイックな方です」と返してきたんだっけ。
 件のひとは私が求めるストイックさをもっているんだろうか。

 それに、またここでも虜にされてしまっている。 だって、私のLovingが件のひとのVestaにコンジャンクトしてしまってるし。

 やっぱりあなたには敵わない。

 だけど、私のVestaもまた、件のひとのLovingとぴったり隣り合って並んでいるのよね。

 この私のVestaは、果たしてただただあなたに隷属しているのみなのか。
 それともいつか、この生ではないほど遠い未来であなたと何処かで出逢ったとして ──

 私があなたを……



 ── 虜にできたら、いいのにね。
 
 
 
 最後になにか短い、気の利いた俳句や短歌のようなものを付け足したかったのだけれど、全く、何ひとつとして私には思いつかなかった。

 ── やっぱり私は、あなたには敵わない。 




 





 


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