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『普通』を疑え

 私は『普通』という言葉が嫌いです。
 この言葉には散々、今まで苦しめられてきましたから。

 子どもの時分、母にはいつも『普通じゃない』『普通より遅れている』と言われ続けてきたわけで(どうやらそれは私が3月生まれ、つまり早生まれで私を産んでしまったことへの後悔からもきているらしいけど、いい気はしない……)

 友だちは片親だったり、養子だったりといった複雑な家庭環境の子が多かった。
 そのことについて母から『両親が揃った普通の友達がいないのは何でなの?』と突っ込まれたことがあって、それは今でも忘れられない。
 今なら『ああ、お父さんがギャンブル依存だからだよね、当然』と応えるね。

 実際、私の父親はパチンコ依存症で家が一軒立つほど借金を繰り返した。景気の良い時代だったから何とかなったけど。
 つまり、家庭にこの『父親』という男はほぼ不在だったのだ。だってパチンコに行ってるんだもの。

 稀に在宅しているときは、パチンコの収支の話を聞かされる。何万円負けた、あそこは出ない。
 笑えないことに、その時点では私は小学校低学年だった。小学生相手に、んなこと話したって分かるわきゃねーだろ、バカ野郎。
 つまり、不在の上に在宅のときも役割すら果たしちゃいないよってこと。
 これでも『両親が揃ってる』って……笑える。

 『普通』に纏わるクレーム、まだあるよ。
 こういう人間なんでね(前の記事でセクシャリティについての考察を書いています。それを見ると分かってもらえるかも)

 ちょっとスピリチュアル的な内容も入ってくるので、受け入れられる方、られない方、両方いらっしゃると思うのですが。
 ずっと『帰りたい、ここではない何処かへ行きたい』と思っていた。それこそ物心ついた頃から。
 実際、魂を半分何処かへ置いたまま生まれてきたような ── いつもふらふらと『ここではない何処か』のことばかり考えているような子どもで、それが母にはよけいに「普通より遅れている」と思えたのだろうね。

 小学校高学年辺りから占いに傾倒し(おまじないなんかも随分ハマったなぁ)
 今でもスピリチュアルや都市伝説、怪談や心霊スポット系の動画は大好き。それで趣味は西洋占星術の独学。

 まあ、確かに量産型ではないかもね?

 だけど、夫である人に「君って本当に変わってるよね(苦々しげに)変だよ。ちょっと普通じゃない」って言われたのは、今でも赦す気はない。
 というか、それで見限った。


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 『普通』とはなんだろうか。

普通(ふつう)とは、広く通用する状態のこと。普通の『普』は、「あまねく」「広く」を意味する字である。

wikipedia『普通』より

 私の母が私に求めた『普通』とはなんだったろう。
 母はその当時にしてはなかなか恵まれた環境にあった女性で、現在81歳にして四年制の国立大学まで卒業している。
 両親はもちろん揃っていて、ギャンブルなどの依存はなし。豪農にして地元の名士だ。
 兄弟たちもみんな仲良く(6人兄弟だ)本人もずっと成績優秀、大学を卒業するまでずっとモテ続けたらしい。

 これがこの人の『普通』なら、なかなかハードルは高い。っていうか、跳べる高さではない。

 私が多感な時期だったのは、まだ元号が『平成』だったときだけど、私が通った中学校の、そのクラスは荒れに荒れて学級崩壊を起こしていた。
 モテ?え、なにそれ。私、いじめに遭ってましたけど?

 つまり、この人が言う『普通』は、スクールカーストの上の方に位置する女子グループに入っていて、好きな男の子がいたりして、成績はクラス上位で人気のある女の子……ってとこなんだろう。

 私はそれを再現できなかった。

 今でも女性同士の人間関係は苦手だ。
 職場の人間関係は良好だけど、子どもの学校関係の人間関係が苦手。
 みんな、すごい勢いで自分の考えや話を捲し立てるように話してくる。お互いにお互いの話なんか何ひとつ聴いちゃいない。
 夫の愚痴、子どもの愚痴、同じ学校関係の誰かの愚痴。
 ほらほら、ウチだってこんなひどいのよ?(で、マウントがとれると安心するってところまで合わせて一組だ)

 何かを吐き出す、それだけが目的なのかな。
 それとも、ちゃんと後で考えているのかな?
 私はいつもただ笑顔で相槌を打つのみだ。結果、帰宅すると表情筋がガチガチに強張ってる。
 役員の任期が終わってからは顔を出してない。
 だってダルいんだもん、あの人たち。

 そーゆー人たちとママ友になってギャアギャア言い合うのが『普通』なら、疲れるからもういいや。『普通』もういらない。

 夫よ、お前もだ。
 その『普通』は何かと問われれば「同僚の奥さんが」「会社の女の子がそうだって言ってる」
 悲しい。
 この男は私が語る私の考えより、会社の女の子や同僚の奥さまのお言葉の方が大事らしい。
 ほう、そうか。じゃあ、もういいよ。
 彼女たちと再婚しなよ。だらだら私となんか一緒にいないでさ。ね?

 私にとっての『普通』の印象はそれ。
 つまり、私には実現できないこと。


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 人間って何のために生きてるんだろうか。
 その『普通』とやらの基準に到達するためだけに生きているのだとしたら、こんな馬鹿馬鹿しい話はない。
 だけど実際に世のなかはそうなりつつあった。

 みんなが好きなものを好きであること。みんなと同じ交友関係をもち、みんなと同じ服を着ること、同じテレビ番組を観ること。
 みんなと同じように同年代の男性とお付き合いして、みんなと同じ時期に就職して、同じ時期に退職して結婚すること。で、同じような『奥さま』になること。

 文字にしてみると恐ろしいけれど、これがいわゆる『地の時代』に私が強いられた『女性』のあるべき姿だった。
 あれからいろいろあって、学校教育は瀕死だし、終身雇用制度も崩壊した。『腰掛け』なんて今の若い人たちは知ってるのかな(専業主婦になるために結婚するまで「とりあえず」勤めること)
 結婚率、出生率は右肩下がりだし、離婚率だけが絶好調。
 『みんなと同じ』を提案していた女性誌は軒並み廃刊だし、テレビ局もタレントもこのザマだ。

 時代は2024年から『風の時代』に入った(もっと正確にいうならば2020年からだけど)

 生きるのは、そこまでずっと辛かった。
 自分ではない『普遍的な女性』の仮面を着けたまま生きていた。
 いろいろな偶然と奇跡的な巡り合わせがかさなって、その仮面は剥ぎ取ることになるのだけれど、それを後悔はしていない。

 いつかの私は『普通』になろうとしていた。
 それが幸せなんだって信じようとしていた。
 お菓子を作るのが好きで、本と流行りものが大好きなキラキラ女の子ママ。
 それが私の選んだ仮面だった。

 その実態はこんな感じなんですけどね。

 だから、本当はずっと苦しかった。


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 今、こうして本来の自分に返って、こんな文章を書いてupする日々が続いているけれど。

 世のなかには『普通』になれずにいる誰かが意外と多いこと、或いはいつかの私のように『普通』の仮面を着けて生きている人も意外と多いこと。
 そのことにちょっと驚いている。

 私も当然、そのなかのひとりで。
 だから『普通』って何だよ、って思ってる。

 『普通の人』って特に特徴のない無個性な人。毒にも薬にもならない人。
 『普通の○○買ってきて』それじゃ特定できねえよ。
 『普通サイズだよ』それじゃ分からない。M?それともL?
 『普通』ほど役に立たない言葉はない。はっきり言って。

 それに、誰かの在り方に求める『普通』という言葉は、もはや言葉の暴力だ。
 焦点を曖昧にしたままその人の在り方を否定した挙句に、言った方は「親切心で言ってやった」な空気を醸し出して自分の立場は正当化できる。

 だから『普通』は疑え。
 『普通』なんか捨ててしまえ。

 人間の在り方も生き方も、1,000人いれば1,000通り存在するのが当たり前なんだ。

 この場合の『普通』とは『世間様が求めるもの』ということになるのだけれど、世間様はあなたの幸せなんか保証してくれはしない。
 『普通』を強要してくる人は、さも『普通であれば間違いなく幸せになれる』ように言ってくるけれど、それはとんでもないダウトだ。

 実際、私は一度『普通』を求めて早めの結婚をして一度失敗し、そのときは子どもはいなかったから良かったようなものの、懲りずに『普通のこの年齢なら再婚して親を安心させなくちゃだよな』など考えて再婚して娘を出産した結果、夫はなかなかのモラハラすれすれ男だ。
 つまり『普通』を求めた結果がこのザマということ。
 それならば、自分の在り方に忠実に、正直に生きた方がずっと幸せだ。

 国なんか勝手に少子高齢化で滅びればいい。
 国民は家畜ではないのだ。パンとサーカスではもはや騙せない。
 パンがなくなったところで、サーカスが来なくなったところで、これを読むあなたと私は不幸せを感じるだろうか?

 『普通』の仮面を着けたまま、その外し方すら分からなくなって、本来の自分自身を見失った結果、亡霊のように生きることの方が余程、私は恐ろしいよ。


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 宇宙は人々がみな目醒めを迎え、それぞれが使命に向かうことを求めているという。
 それが冥王星水瓶座時代、風の時代の生き方なのだと。

 私はこの世界を西洋占星術のチャートを通して見つめている。
 占いをする者ならばそういった視点の持ち方をする者は多いだろう。

 私自身はどうやらこうして自分の考えを書いて(9Hカイロンと7H水星のセクスタイル、3Hに入る冥王星。そして3H支配星は9H在室)自信をもって誰かと共有すること(MC牡牛座9°、5Hサインの支配星が10H)が目的であるらしい。

 この不自然で窮屈な世界に、私は一体なにができるだろうか。

 いつかの私と同じように『普通』の仮面を外せずにいる誰かの灯りになること。
 そんなものが書けたらいいなとそう思う。

 いつかの私をここまで連れてきた人がいる(御本人にその自覚はないだろうけれど……)
 ひとりでは辿り着けない場所があるのだ。

 私がこうして書き続けることで、誰かを明るいところへ ── 日の当たる場所へ連れていけたらいいな。

 プロの作家にならなくてもいい。
 バズらなくてもいい。

 ── この文章が必要な誰かに届きますように。

 願いをこめて。


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