西洋美術の歴史とは
美術の歴史を学ぶ上で、現代に続く美術の原点ともいえる西洋の美術史は、知識として備えておくと、絵画鑑賞の際に面白さと新しい発見を引き出してくれる重要な要素となります。
西洋美術の歴史は非常に長く複雑なものですが、以下に代表的な時代やスタイルを紹介します。
①古代ギリシャ・ローマ時代
紀元前7世紀から紀元3世紀にかけてのギリシャ美術や、紀元前753年から476年のローマ帝国時代にかけての美術があります。ギリシャ美術では、神話や歴史的事件を題材とした彫刻が発展し、理想的な人体像を表現しました。また、建築や陶芸などでも高い技術を持ち合わせていました。ローマ帝国時代には、彫刻や建築の分野で、ギリシャ美術を基盤としながら、自身の独自の表現を加えた美術が発展しました。
②中世時代
西暦4世紀からルネサンス時代の14世紀までの時代を指します。キリスト教美術が主流で、彫刻、フレスコ画、ステンドグラス、装飾写本などが発展しました。当時の芸術作品は、宗教的な信仰を表現するもので、聖人やキリスト、聖書の物語などを描いた作品が多くみられます。
③ルネサンス
14世紀から16世紀にかけて、イタリアを中心に芸術が発展しました。芸術家たちは古代ギリシャ・ローマ時代の美術に注目し、人体の理想像を研究するなど、科学的なアプローチを取り入れました。彼らは、透視法や光と影の表現などの技術を用いて、よりリアルな人物像を表現しました。代表的な芸術家には、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ・サンティなどがいます。
④バロック
16世紀後半から18世紀にかけてのスタイルです。宗教的な主題を題材とし、動きや情熱、劇的な表現を特徴としました。バロックは、ローマ・カトリック教会の対抗宗教改革の一環として、教会の神聖さと力強さを表現するために、用いられました。代表的な芸術家には、カラヴァッジョやレンブラントなどがいます。
⑤ロココ
18世紀初頭にフランスで発展したスタイルで、バロック美術の影響を受けながらも、より繊細で優美な表現を重視しました。代表的な作品として、壁面装飾や家具、宝飾品、絵画があります。
⑥新古典主義
18世紀後半から19世紀にかけてのスタイルで、古代ギリシャ・ローマ時代の美術に回帰しました。理想的な人体像を追求するなど、ルネサンス期の芸術にも影響を受けています。代表的な芸術家には、ジャック=ルイ・ダヴィッドやアントワーヌ=ジャン・グロなどがいます。
⑦ロマン主義
19世紀初頭から半ばにかけてのスタイルで、感情や個人的な経験を重視しました。自然や民俗的な要素を表現する作品も多く、風景画や肖像画などが発展しました。代表的な芸術家には、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒやウジェーヌ・ドラクロワなどがいます。
⑧印象派
19世紀後半にフランスで発展したスタイルで、光の表現や瞬間を捉えた絵画が特徴です。代表的な芸術家には、クロード・モネ、エドガー・ドガ、ピエール=オーギュスト・ルノワールなどがいます。
⑨ポスト印象派
印象派に続く19世紀後半から20世紀初頭のスタイルで、印象派よりも色彩や形態の表現を重視しました。代表的な芸術家には、ポール・セザンヌ、ヴァン・ゴッホ、ポール・ゴーギャンなどがいます。
⑩シュルレアリスム
20世紀初頭にフランスで発展したスタイルで、夢や幻想的なイメージを表現しました。代表的な芸術家には、マルセル・デュシャン、サルバドール・ダリ、ジョルジョ・デ・キリコなどがいます。
⑪抽象表現主義
20世紀半ばにアメリカで発展したスタイルで、具体的な対象物を描かず、色彩や筆致などの要素を重視しました。代表的な芸術家には、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ウィレム・デ・クーニングなどがいます。
⑫ポップアート
1950年代後半から1960年代にかけてアメリカで発展したスタイルで、大衆文化や消費社会の要素を取り入れた作品が特徴です。代表的な芸術家には、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、ジェームズ・ローゼンキストなどがいます。
⑬ミニマリズム
1960年代にアメリカで発展したスタイルで、極端な簡素さや平面性を特徴とする作品が多く見られました。代表的な芸術家には、ドナルド・ジャッド、ダン・フレイヴィン、カール・アンドレなどがいます。
⑭コンセプチュアルアート
1960年代から70年代にかけて発展したスタイルで、芸術作品の表現よりも、アイデアや概念を重視する傾向が見られました。代表的な芸術家には、ジョセフ・コシュート、マリナ・アブラモビッチ、ヨーゼフ・ボイスなどがいます。
⑮ポストモダンアート
20世紀後半に発展したスタイルで、一つの大きな傾向というよりは、多様な表現形式や様式を取り入れた総称的な概念です。代表的な芸術家には、ジェフ・クーンズ、ダミアン・ハースト、シンディ・シャーマンなどがいます。