記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「花束みたいな恋をした」感想・恋が終わるとき

Amazon primeで本映画を鑑賞した。煌めくような恋愛の盛り上がりと終結を最後まで飽きずに見届けることができた。ネタバレをしているので、未見の方はご注意ください。

私は今どきの若者ではないのでポップカルチャーの描写が半分以上もわからなかった。好きな本や音楽や映画が一緒で、おそろいシューズをたまたま履いていてまるで運命かのように二人の男女が出会う。

そして、煌めくようなラブラブの月日が流れるが、お互いの就職や、先輩の死により少しずつ二人の心は離れていき、やがて別れることになる。

一言でいえばそんな映画である。結婚という選択肢を選ばなかったカップルの行く先は確かに別れになるし、そんなカップルがいっぱいいるのだろうと思う。

それが現実だ。しかし、フィクションの中くらい永遠の愛が表現されてもいいんじゃないかと思う。

この映画で二人は結ばれました。めでたしめでたしというストーリーじゃない。出会いから幸せの絶頂に、そして日常になり、冷めていき別れに行きつく。

二人の恋愛がなぜ結婚にまで行き着かなかったのか、私なりに考えてみると女性側の選択肢が増えたからかなと思う。

主人公の麦くんはけっしてクズ男ではない。自分の好きなこと、イラストレーターの道をやめ、就職して献身的に働き、絹ちゃんとの生活を支えるため生きている。現実的である。結婚相手には最適な相手といえる。

しかし、絹ちゃんの方は麦くんの先輩の死を一緒に悲しめなかったり、かつて二人が好きだった本を共有しようとしたら、彼氏の方はビジネス書を読んでいたりと自分と好きなことが同じだった麦くんと心の距離が開いていく。

決定的なのが事務の仕事を麦くんに相談しないで勝手にやめてしまったこと。事務の仕事は向いていないし、自分が好きなことを仕事にしたいと言ってイベント会社に転職してしまう。

絹ちゃんは自分の気持ちに正直に生きたいのだ。
それは甘い考えだと麦くんは思ってしまうし、ケンカになってしまう。麦くんは好きなことで食べていくことの難しさを知っているからでもある。

女性側が結婚という選択肢を選ばなくてもなんとか生きていける社会が自由恋愛を促進し、結婚というゴールに結びつかなくなっているのでは?と思う。

友人の結婚式帰りにファミレスに寄り、麦くんは結婚しよう、別れたくないと言う。かつて、二人が意気投合したように若い学生のカップルが好きなものの話をしながらファミレスの席につく。それを聞いていた麦くんと絹ちゃんは溜まらず、ファミレスを抜け出し、お互いに抱き合う。そして、別れることを選択する。

煌めくようなかつての日々にはもう戻れないからだろうと思う。

似たもの同士の二人だったが、月日は流れ、お互いに違うパートナーを見つけている。喫茶店でたまたま出会うがお互いそっとバイバイと手を振るだけで言葉は交わそうとしなかった。

この物語が連続ドラマやCMを挟みつつ放送される2時間ドラマじゃなくてよかったと思う。2時間、ぶっ通しの映画だから、恋愛の熱情と冷めるまでを夢のように見せてくれていたと思う。映画だからできた物語じゃないかなと思う。
このストーリーは少女漫画にもならないと思う。恋に恋し続けることがテーマの少女漫画では成立しないストーリーだと思う。

花束が美しさを誇り、そして枯れるまでを描き切ったこのストーリーは花火のように儚げに散る幻想の恋愛と、映画を観ることで日常を離れ、幻想を観て、観終わったあと現実に戻る体験は似ていると思う。
映画でしか表現しようがないストーリーだったと思う。

二人の物語は終わりを迎えてしまったが、その煌めくような日々は決してなくなるものではなく、思い出の中で輝き続けるだろう。恋愛の痛みとともに存在する映画だったのかもしれない。


↓こちらでも記事を書いています。興味のある方は読んでみてください。


いいなと思ったら応援しよう!