〔93〕白頭狸随想 選挙に顕われたエントロピーの極大化 7/14
〔93〕白頭狸の時務随想 選挙結果に顕われたエントロピーの極大化
夏安吾で夢遊状態の白頭狸は、騒がしい蝉の声で目が覚めました。気が付けば新盆の二日目ですが、関西育ちの狸にとって盂蘭盆会は八月のいわゆる「月遅れ盆」でなければなりません。旧盆ならもっと良いのですが、要するに新盆では季節感が異なるのです。
寒暑と乾湿の調節を自動的にコントロールする最新のエアコンを入れた狸庵ですが、除湿にしたままで寝ていた狸の首筋には僅かに汗が浮かんでいます。これを拭った途端、狸の脳裏に閃いたのが「歴史進行過程の熱力学的解釈」です。
人民を政治主体とする民主主義原理が支配する現代社会では、政体の重要事項の最終的決定は人民投票で決定することが原則となりました。この故に世界各地では住民の直接投票ないし代議員による間接投票が行われ、その結果が毎日報道されていますが、ここ十年来「賛否相半ばする」ことが通例になり、「これが何を意味するのか?」との疑問が白頭狸の脳裏を占めてきました。
今朝になり突然に始まった蝉の声を聞いた時、白頭狸にその答えが出たのです。「世界じゅうのあらゆる歴史系の中でエントロピーが極大に達した」が、その答えです。
「エントロピー」はもともと熱力学の用語で「断熱条件のもとにおける不可逆性」のことです。この世界では「外からのエネルギー注入がない系の中ではエネルギーが熱の高い方から低い方に不可逆的に移動する」という法則が普遍的に成立するのです。
このエントロピー概念が統計力学で、系の「乱雑さ」を表わす物理量としての意味を持たされ、更に統計学では「情報量」を表わすものとされて情報理論に位置づけられています。
エントロピ―の次元はエネルギ―(単位はジュール)を温度(単位はケルビン)で割ったもので、熱容量と同じ概念です。
白頭狸は社会史にこの概念を適用しようと試みておりますが、物理学の精緻さにはいまだ至っておりません。
さて、ここからは例によって有料領域です。
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