〔125〕張作霖爆殺の謀主は誰か?
〔125〕張作霖爆殺の謀主は誰か?
〔124〕は「ワンワールド國體と大東亜戦争」と題しましたが、結局は「張作霖爆殺事件」に辿り着いたところで紙数が尽きました。〔125〕は、その続きで、大東亜戦争の本質についての考察がいよいよ佳境に入ります。
これまでの読者の中には「落合は自説を小出しにして紆余曲折を設け、読者を翻弄しておる」との感想を抱かれた向きもあろうかと存じます。落合自身もその感に苛まれておりますが、このnoteの実情は、落合がこれまでに獲得したあらゆる知見を、脳中で撹拌しながら纏めておる過程を、そのまま述べるものですから、紆余曲折もやむを得ない、とご賢察ください。
さて「周蔵手記」には「張作霖爆殺」に関する記載が断片的に現れますが、ひとまずそれを下記に紹介しますので、諸兄姉はそれにより「張作霖爆殺」の真相を洞察して頂きたいと存じます。
「周蔵手記」昭和三年六月中条
張作霖死亡のこと聞く。
一躰 どうなっているのであろうか。誰かに聞きたいが、甘粕さんおらず、話せる人はなし。
閣下(上原勇作元帥)に会いに行こうと思った。行ってみたが腰巾着の宇都宮(宇都宮直賢中尉・士候32期)しかおらず、だめ。
思うにこれで困るのは誰か。
宇都宮の話しでは「関東軍の河本(関東軍参謀河本大作大佐・士候15期)という人物だ」とのこと。「無論田中(田中義一)は知っていた」と宇都宮は云う。「閣下は?」と問うと、「バカを云うな。閣下が知っていれば張作霖は死ぬわけはないだろう」と云わる。
表向きはそうだ。宇都宮はそう云わされているのだろう。この男は表帳簿のような男だ。閣下が一声怒って見せれば、それで良いのだ。
張作霖事件の真相を知りたい周蔵は、いつもなら頼りにする甘粕正彦がいないので、上原元帥に直接会おうとして自宅を訪れます。
上原元帥は留守で玄関番の宇都宮中尉がいました。当時は陸大生徒の宇都宮は個人的に上原に仕えていたのですが、その役割は「表帳簿」すなわちアリバイ作りで、上原が一言怒鳴って見せれば、それに合わせて発信するのが仕事です。
「張作霖をヤッタのは河本という関東軍の参謀だ」という宇都宮が「無論田中義一も知っていたことだ」と付け加えたので、すかさず「上原閣下は?」と切り込んだ周蔵に、宇都宮は「バカいうなよ。閣下が事前に知っておれば張作霖をむざむざヤラセるわけはないだろ」と答えます。
たしかに表向きは”上原が関与しなかった事件”として扱われているが、宇都宮はそう云わされているのだ、と周蔵は感じました。
「周蔵手記」の続きを下記します。
現に「それで閣下はどうされた?」と聞くと、「お前が何を気にするか」と云いながらも、勿論前以ての鼻薬十分であるから、一通りは云った。
「田中を許せない」と怒っていた。「何だったら陛下に言上するもやぶさかではない」と怒った、とのこと。非常に怒っており、然しガッカリもされておるとのこと。(中略)
「心配するな。閣下はそのくらいではへたばらない。大丈夫だ」と云う。
△勿論、そのくらいではへたばらんだろう、と思う。
結局、一番困るのは田中義一ではあるまいか。
張作霖殺害を知った上原は、「爆殺の黒幕田中義一を許せない」と、怒るとともにガッカリしていると聞いた周蔵は、ほぼ真相を覚り、「これで一番困るのは田中義一」との結論を出します。
実は周蔵は前年(昭和二年)のうちに、張作霖始末のことを中野正剛の妾から聞いていたのです。
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