この世をば…藤原道長の歌の真意は
この夜をばわが夜とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば
よく知られている藤原道長の歌は、この世をばわが世と思う…と広まり、道長の権勢への自身を示す歌として知られてきた。でもあらためて読んでみると、この世、ではなく上のように「この夜」だったのではと思えてきた。このほうが情景がしっくりくる気がする。
この歌は、道長自身の記録、御堂関白記にはなく、藤原実資の小右記にのみ記されている。道長自身は宴の席でさらっと詠ったのだが、実資は道長の権勢欲を感じこの世、ととらえ記したのでは、と考えることもできると思う。
現代のわたしたちが、たとえば月明かりの夜道を一人で歩いている時など、この歌のようにこの瞬間を自分ひとりのもの、と思ってみるのもいいかもしれない。