【24/10/9】行方不明の母の手記

20××年10月1日(金)


親とは、子どもを愛さねばならないのでしょうか。
子どもの性(さが)は、親の責任なのでしょうか。

性格の約5割は遺伝子だと聞きました。
つまり、あの子がこうなったのは私のせいだということでしょうか。
そんな育て方はしていないつもりでおりました。
人並みに、月並みに、育ててまいりました。

性格を形成する残りの約5割には、共有環境が挙げられると聞きました。
つまり私と過ごす時間よりも、学校の影響が強いということですよね。
それでも、私のせいだということなのでしょうか。

あの子はいつも人に囲まれ、笑顔の絶えない娘でございました。
学級委員など仲間をまとめるような役割も任せていただくような、
人から信頼を得、頼られ、チームをいい方向へ導けるような能力のある子だったはずです。
先生もそう感じているからこそ、学級委員を任せてくださったのだと思っています。

なのに、たった一度の、それも相手が原因の過ちを犯しただけで、こんなにも糾弾されなければならないものでしょうか。
毎日あんなにもクラスに貢献していた息子でございます。なぜ、たった一度きりの過ちで、人生を終わらせるという最低な選択肢を選ばざるを得ないほど追い込まれなければならなかったのでしょうか。

息子が不憫でなりません。
娘を、娘を返してください。

あの子は寂しがりで、友だちと呼べるような子は一人もおりませんでした。
だから、私が毎日のように側にいてやったのでございます。
心を許せないような表面的な友人なぞといるよりも、心から信頼できる母との時間を大事にすべきと判断し、外に出ることよりも、私と会話をすることを優先させておりました。
すべては我が子のためでございます。
引っ込み思案でいじめられっ子気質で、友だちなんて呼べるような子が一人もいない惨めで哀れな我が子のためでございます。

あの子はどこに行ったのでしょうか。
ある日から、その姿を消してしまった我が子を探してくださいませんでしょうか。
どなたか、どなたでも構いません。

我が子はどこにいるのでしょうか?
娘を返してください。

(子は、当時母親に監禁されていたところを小学校の担任の先生からの通報により無事保護された。)
(そのときの子どもは生気のない顔をしていたが、一方で「笑っていた」という声も上がっている。)
(母親は獄中にて書いた本手記を残し、執行猶予中に失踪した。)



獄中といえば、今は「りりちゃん」が一躍時の人ですね。
数年前にコレコレさんが動画で取り上げていたので、ニュースでその名を聞いたときはやや背筋がソワッとしました。ソワッ。

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