【24/10/4】足音
コツコツコツ。
足音がずっと被ってる感覚。
夜8時。
人っ子一人いない道。
まわりに広がるは畑ばかり。
所々で街灯が怪しく白光る。
コツコツコツコツ
カツカツカツカツ
コツコツコツコツ
カツカツカツカツ
無意識にイヤホンの音を最小にする。
カツカツカツカツ
コツコツコツコツ
カツカツカツカツカツカツ
コツコツコツコツコツコツ
足とともに鼓動も早くなってくる。
あと少し。あと少し。
見慣れたマンションが見えてくる。
カツカツカツカツカツカツカツカツ
コツコツコツコツコツコツコツコツ
エントランスは目前。
あと少しで、あと少しで。
ウィーンという音とともに自動ドアが開き、
視界が明るいオレンジ味を帯びた光に包まれる。
そのままエレベーターのドアが、
閉まる前に扉のところに足をかける。
ガツン、と音がした。
締まりかけたドアは、再び開く。
彼女の血色の失せた顔が僕を向いた。
「間に合ってよかった」